作家・評論家の保阪正康氏講演に350人
2007.6.4

「日本とは?日本人とは?」を総合テーマにした平成19年度の麗澤オープンカレッジ特別講演会が5月19日、麗澤大学で開かれました。1回目は昭和史研 究で第一人者といわれている作家・評論家の保阪正康氏が「日本人にとっての昭和」と題して熱く語られました。聴講者の大半が昭和年代ということもあり関心 も高く、会場は約350人でいっぱい。熱心にメモを取る姿が見られました。
保阪氏は、20世紀の3分の2近くを占めている「昭和」 (1926~1989年)がどんな時代なのか。前期(戦前・戦中)、中期(占領下)、後期(独立後)に区分。それぞれの時期を代表する首相として東條英 機、吉田茂、田中角栄の3人を挙げ、相違点や共通点を紹介しながら、外はアメリカ、内では天皇との関係から「昭和」を見ていく二つの視点を挙げられまし た。
保阪氏が特に重要な視点として挙げられたのが、歴史的事象としての「太平洋戦争」でした。この時代は、軍事主導体制国家であり、軍人が前 面に出て差配した時代でしたが、保阪氏は「日本人の発想、思考方法を含めて文化そのものが反映している」と述べました。この軍事行為の中に近代日本が集約 されているというわけです。
戦争最高指導者が唱えた「負けと思ったときが負けだ」という精神論、ガダルカナルやニューギニアで亡くなった兵士 らはどこへ行くのかも知らされていなかった出兵、大本営の嘘・捏造の発表、天皇制国家なのに戦況が天皇にも知らされていなかった事実。保阪氏は、①(明確 でなかった)日本の戦争目的②その内実③国民の側で問われること、などを徹底的に分析しなければ、「昭和」は見えてこないと強調されました。
天皇問題についても「結果を問う前に、そのプロセスをしっかり調べておくことが必要だ」と話されました。例えば、天皇がこれまで詠まれた御製一万首のうち 発表された800首の中に戦争を止められなかったことについて厳しい反省を示唆しているものもあると話されるなど、天皇の御製、記者会見内容、側近のメモ などから「天皇の心情を理解することへ近づくことができる」と述べました。
保阪氏はこの30年近くに戦争の関係者ら延べ4000人以上に面 接・証言された内容や、戦後60年を経て、徐々に公表されている種々の外交文書などをひも解き、著書で発表されています。保阪氏は「私たちは、次代の人々 に『歴史』を語り継ぐための資料を残さなければなりません。それが昭和に生きる者の責務です。『私はこう生きた』というメモを残してください。50年、 100年後に児孫(じそん)に必ず検証されます。児孫と私たちが、そこに生き返る楽しみが生まれるでしょう」と結ばれました。

 

講演する保阪氏

熱心に聴講する参加者

メモを取る参加者

いっぱいの会場