イラク研究の第一人者、酒井東外大大学院教授が講演
2007.7.19

治安の悪化が続くイラクを熱く語る

講演する酒井教授

酒井教授

聴講者でいっぱいの会場

麗澤オープンカレッジの第3回特別講演会が7月14日開かれ、イラク研究の第一人者で東京外国語大学大学院教授、酒井啓子氏が「日本とアラブ社会の今後~ イラク戦争から見えてくるもの~」と題して講演。ブッシュ米政権がイラク情勢に関する評価報告書(中間報告)を発表した矢先で、雨天にもかかわらず286 人の人たちが熱心に聴講しました。
イラク戦争が起きてから4年。フセイン政権が崩壊し、新政権が誕生してからも、イラクでは治安の悪化が続いています。2006年だけで、イラク民間人の死者は3万人以上、開戦から現在までの米軍死者は3600人を超えました。
酒井教授は、この治安悪化の理由に、一つは「宗派対立」、二つには「資源の配分問題」をあげました。イラクは、人種別ではアラブ人79% (イスラーム教シーア派、スンナ=スンニ=派)、クルド人16%(シーア派)、トルコマン人2%(シーア派ないしスンナ派)などで構成され、現在シーア派 が、政権を握っています。その与党「イラク統一同盟」は、フセイン時代にイランに亡命していたシーア派の人たち。イスラームの教えに基づいた国家建設を目 的としており、これまでイラクで生活してきた同派の人たちとの間に確執が起きている。また同派イスラーム政党(SCIRI=サイリ)は、イランで訓練され た民兵組織で、治安機関を独占して反政府派つぶしを行い、スンナ派などと対立しています。いずれもその背景にイランが大きく投影しているということです。
石油を巡る「資源の配分問題」では、イラク北部のクルド人地域、南部のシーア派地域には油田があるものの、油田を持たないスンナ派やクルド地 域の少数民族トルコマン人に不満がくすぶっていること。また一部政党は、クルド地域の油田をてこにクルドの自治・独立機運を強める動きをしており、最近自 爆テロで150人死亡する、民族間の紛争の火種となるような事件が発生していることにも触れました。一方でクルド人の独立に反対するトルコの動きも活発 化。イランを含めた、レバノン、トルコなど中東各地での「イスラーム勢力」の台頭も目立ってきています。
こうした現状の中で、米国はどう対応 しようとしているのか。酒井教授は「鍵を握るのは、イラクに一番強い影響力を持っているイラン。しかしイランは、核開発などで米国が最も危険視する国でも あり、簡単にバトンタッチすることはできない。米国のジレンマはしばらく続きそうだ」と締めくくりました。