武藤敏郎氏「金融危機からの脱却」と題し講演
2009.1.21

1月16日金曜日の午前10時30分から12時まで,本学の生涯教育プラザにおいて、経済社会総合研究センター主催の公開講演会が開催されました。今回 の講師は、現在、株式会社大和総研の理事長であり、元日本銀行の副総裁である武藤 敏郎 氏で「金融危機からの脱却」という今話題のテーマでの講演でした。

武藤氏はまず、サブプライムローン問題の本質から話を始め、この問 題は3つの大きな変化、「金融工学を駆使した金融革新による証券化」、「世界の資金市場の急速な拡大」、「格付け機関の優良な格付け」というお墨付きなど が、グローバルな形で投資銀行のビジネスモデルを急拡大させたことが背景にあったと述べられました。
とりわけCDSという一種の「地震保険」 のような性格の保険商品が普及し、世界最大の保険会社であったAIGなどは、このCDSビジネスで大きな痛手をこうむった。日本のバブル崩壊とその後の対 応と比較して、不良債権の買い取りが米国では進んでいない。それは、不良債権を特定化できないという今回の金融危機の特質による。金融危機の克服の必要条 件は、住宅価格の下げ止まりである。2010年半ばには底を打つと予測されるが、それまでは証券化した商品の価値が低下し続ける。どこかの段階で、世界的 な過剰な流動性がこうした商品を買い取る状況が生まれるかが、カギである。と述べられました。
日本においては、日本は直接的な金融損失は大き くない(世界全体の損失が約1兆ドル程度、日本の損失は176億ドル程度)とみられるが、米国の実体経済、とくに個人消費の落ち込みが対米国輸出を急落さ せている。さらに株価の下落、円高が収益の悪化、設備投資の大幅な減少をもたらすと見られる。雇用の悪化も2010年にかけて、250万人程度の雇用が失 われるおそれもある。
悲観的な経済展望を持たざるを得ないが、日本は資源価格の下落、日本自体の問題で不況に陥ってはいないことなどを有利な条件とし、米国の新政権の政策などに注目しつつ、政策の立案を図っていかなければならない。と話されました。

今回の講演会には、一般の聴講を含め約70名ほどが参加しました。講演の後には、時間の限られた中、現在のこの経済状況についての的をついた質疑応答が交わされ、充実した講演会となりました。

講演する武藤敏郎氏

司会の成相センター長

熱心に聞き入る聴講者