【周年記念行事】 「国際人口学シンポジウム」の開催
2009.5.27

麗澤大学開学50周年を記念して、公開シンポジウム「私たちは歴史から学べるだろうか:気候・飢饉・疫病」を学術行事第1弾として5月23日に開催し、研究者、一般、学生を含む245名が熱心に聴講されました。

国際人口学会セミナー

このシンポジウムに先立ち、本学で開催した国際人口学会(IUSSP)セ ミナー(5月21-23日)で、予期せぬ経済や環境の変化が、個人や家族の人口行動にどのような影響を与えるのかという問題について、7ヵ国20名の人口 学・経済学・社会学研究者が集まり、最新の研究成果をもとに議論しました。(テーマ:「経済および環境の激変に対する人口学的対応」、組織者:黒須里美・ 麗澤大学 教授)

 

セミナー中の様子

セミナー中 緑に囲まれ

休憩中 こちらも緑に囲まれて

 

 

国際人口学シンポジウム

公開シンポジウムでは、その成果報告とともに、我々の祖先が体験した「飢饉」と「パンデミック」に焦点をあて、長期的・比較的視野からの最新の研究成果が報告されました。4月末に発生した新型インフルエンザの拡大、世界を揺るがす経済クライシス、と私たちが直面する課題につながるまさにタイムリーなシンポジウムとなりました。

シンポジウムの開催にあたって、中山学長から「“持続可能な社会”の構築を目指す上で、知とモラルではなく、知のモラルとは何かを現代社会に問いかけてみたい」と記念行事の統一テーマ「知のモラルの再構築―地球と人類の平和をめざして―」の意味についての紹介に続き、Bengtsson氏(スウェーデン ルント大学・IUSSP歴史人口学パネル委員長)から「経済および環境の激変に対する人口学的対応」と題し、3日間のIUSSPセミナーの成果を紹介する基調講演がありました。

開催のあいさつをする中山学長

基調講演するBengtsson委員長

1報告者の斎藤修氏(一橋大学名誉教授)より「飢饉と気候---長期的視点から」からと題し、律令時代から19世紀まで通して考察するという、従来の研究にはない長期的視野でのご報告がありました。飢饉が減少したのは江戸時代と思われがちであるが、実は16世紀前半から後半に激減したこと、また飢饉数が減少した中で、天明・天保の大飢饉が起こったことに着目されました。飢饉数の減少は、気候変動でも、農業史上の進歩でも説明できず、戦国大名による領国支配の効果なのではないかという大胆な仮説を提示されました。また世界的な異常気象であった天明(1780年代)、その後の天保(1830年代)について、旱魃は農業進歩で乗り越えられても冷夏の脅威がまだ大きかったことを示すとされながらも、なぜあれほどの大飢饉になったのかという疑問が投げかけられました。

報告する斎藤氏

第2報告の速水融氏(本学名誉教授)からは、大正時代に起きた、人類最初のインフルエンザ・パンデミックを取り上げ、「帝国日本のスペイン・インフルエンザ-死亡の推計を中心に」の報告がありました。速水氏からは、「今回の新型インフルエンザは、メキシコ(旧スペイン領)で発症したのだから“新スペイン・インフルエンザ”と名付けていいですねと、ユーモアある言葉からはじまりました。1918(大正7)年より広がったスペイン・インフルエンザを、超過死亡数(流行時の死亡者から平年の死亡者を引いて算出)を求めることによって、政府が出した死者38万5千人は、実際は45万余人であったことを指摘されました。速水氏作成の「スペイン・インフルエンザ関係新聞記事年表」からは大正7年3月から10年1月までの全国26社および外地(当時の植民地)の新聞に出たスペイン・インフルエンザ関係記事が細かく整理され、大流行の波の脅威を感じることができました。

報告する速水氏

報告に続いて、Campbell氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校・教授)、劉 翠溶氏(台湾中央学院・副院長)からの示唆に富むコメントがあり、さらに聴講者からも専門的な質問が飛び交い、学際的議論が展開しました。私たちは歴史から大いに学べることを実感させられるシンポジウムとなりました。

Campbell氏

劉 翠溶氏

なお、IUSSPセミナーと本シンポジウムの内容は、プロシーディングス(英文)として麗澤大学から秋に刊行予定です。

次回の学術行事のご案内

次回の学術行事は、7月18日に企業倫理シンポジウム「変わる企業と経営者の哲学」を開催します。