大学コンソーシアム柏「地域学リレー講座」で櫻井良樹教授が講演
2009.9.11

「大学コンソーシアム柏」主催の「地域学リレー講座・地域の歴史を学ぼうコース」第3回目が9月5日、麗澤大学生涯教育プラザで開かれ、本学の櫻井良樹教授が「東葛地域唯一の首相 鈴木貫太郎の戦後」と題して講演し、大勢の市民が熱心に聴講しました。

「大学コンソーシアム柏」は、柏市を中心に我孫子市・流山市・野田市・松戸市と柏市内および近隣にある13の大学で構成され、まちづくりの諸分野における連携交流を通して、地域社会の発展をめざすもの。4つある分科会の一つ「学びと実践分科会」では本学が幹事校を務め、昨年度に引き続き、「地域で学ぶ 地域を学ぶ 地域に活かす」をテーマに「地域学リレー講座」(主催:柏市)を開催しています。今年度は、「地域の歴史を学ぼう」と「健康づくりにチャンレンジ」の2コースに分けて、それぞれ4回にわたり開催しています。

開会に先立ち、本学の佐藤政則副学長から開会挨拶がなされ、櫻井教授による講演が始まりました。はじめに鈴木貫太郎は、生まれは大阪だが、父の由哲が関宿藩の役人であり幼少期を関宿(現、野田市)に過ごしたという「東葛地域と鈴木貫太郎のかかわり」について話され、ついで経歴について、海軍の軍人のあこがれである連合艦隊司令長官を経て、引退後は侍従長、終戦間際には枢密院議長となり、昭和20年には終戦時の首相に就任したことを確認し、昭和天皇の哺育係を務めていた妻の孝子の存在も昭和天皇との関係を密接にした要因であったことについて触れました。

続いて、本題である「終戦後の鈴木貫太郎」では、敗戦後首相を辞職した後の11月から父の郷里である関宿に隠棲生活を始め、地域とは牧畜や農業振興に力を注いだことなどの関わりが日記から窺えることを指摘。ところが、関宿での長閑な暮らしは長く続かず、吉田茂の説得により、昭和20年12月に枢密院議長に再任されると、東京と関宿を1週間に一度くらい往復する生活になり、この頃の日本の大きな政治課題の一つである日本国憲法の制定にあたって、枢密院議長としてそれを枢密院で通過させることが鈴木貫太郎に託された役割であったことを話されました。そして6月8日に憲法改正案を枢密院本会議で無事に通過させると、即刻辞任を表明したところに鈴木の潔い性格が表れていると指摘されました。

また吉田茂と鈴木との親密な関係についても触れ、戦後に吉田が外務大臣となった時に大臣就任のアドバイスとして、「戦争は、勝ちっぷりもよくなくてはいけないが、負けっぷりもよくないといけない」ということを忠告し、吉田もこれを教訓として受け止め、GHQに対応したと述べていることを指摘されました。

さらに講演は、鈴木の終戦後の活動として、「終戦史の形成」に果たした役割について述べられました。まず鈴木は、首相辞任後、さまざまな所で講演活動をしていること、また終戦1年目の8月15日前後には新聞などの取材を数多く受けており、その際に終戦決定間際のことを語っていることを指摘され、ついで東京裁判の開廷もあり、この頃それまで語られなかった戦前の真相が語られるようになっており、鈴木もそのような中で以上のような発言していたことを説明されました。

特に鈴木の発言で注目されたのは、終戦決定に至る政府・大本営などの状況と昭和天皇とのかかわりについての発言でした。昭和天皇が東京裁判の被告となることは、この時点では既になかったのですが、裁判進行の過程で戦争とのかかわりは注目されていました。鈴木は、終戦に至る過程で戦争を終わらせたいという自分の考えと天皇の考えが一致していたこと、ポツダム宣言受諾をめぐって、あるいは「国体護持」の条件をめぐっての反対意見を抑えるために御前会議を開いて「聖断」を仰いだということを語っており、これが今日では通説になっていることを説明されました。そして鈴木の日記や記念館に残されている書類などを見ると、たとえば「最後の御前会議」での昭和天皇の発言が、複数の原稿として残されていること、最初に昭和天皇の発言を公表した下村宏との検討が行われていることがうかがわれることにより、戦後の昭和天皇像の形成には鈴木をはじめとする周到な配慮があったことを指摘されました。

そして最後に、鈴木貫太郎の回顧をうまく利用して、吉田茂首相がマッカーサーを懐柔しているエピソードに触れられました。それは、鈴木は終戦時の気持ちとして、敗れた以上は男らしくすべてを相手方に委ねる、それも敵将を信頼して委ねる、武士道は日本の独占物ではないと考えていたこと、昭和天皇はマッカーサー司令官の占領政策を「公明正大で今の進行状態は極めて満足である」と述べられており、敵将を信じるという自分の信念は正しかったと毎日新聞に対して語っている。それを吉田茂首相がマッカーサーに伝えているのだが、その時にこのような昭和天皇や鈴木の気持ちは、自分や国民全体の気持ちと同様であると書き加えているという、極めて巧妙なやり方であったというものでした。

多くの貴重な資料をもとに進められた講演で、参加者は皆、最後まで熱心に聴講されていました。

会場の生涯教育プラザ正門

開会挨拶をする佐藤副学長

講演する櫻井教授

スライドを投影して説明

講演する櫻井教授

熱心に聞き入る受講者