【開催報告】第三回 日・韓訓読シンポジウムを開催しました
2011.11.16

言語研究センター主催で第3回 日・韓訓読シンポジウムを開催

 麗澤大学言語研究センター主催(日本私立学校振興・共済事業団の学術振興資金の助成事業)の「第3回日・韓訓読シンポジウム」が10月29日(土)13-18時、本学廣池千九郎記念講堂で開かれ、約50名の方々が熱心に聴講されました。

 近年、東アジアの訓読問題が注目され、それに関する書籍も多数出版されています。1973年には韓国の傍点返読記号による訓読、2000年には韓国において小林芳規教授や韓国研究者達によって「大蔵経」から、角筆によるオコト点方式の11世紀訓読の発見があり、東アジアの訓読の在り方に関心が深まってきました。それまでは記号を用いる訓読は、奈良時代末日本における考案と考えられてきましたが、古代朝鮮における訓読が確認されたことにより、朝鮮訓読の日本への影響も視野に入れざるを得なくなってきました。

梅田博之名誉教授より開会挨拶

今回開催された第3回目のシンポジウムでは、千葉庄寿准教授の司会の下に、まず麗澤大学前学長梅田博之教授の開会の辞から始まり、2000年小林博士の角筆訓読発見の現場に同席された檀国大学名誉教授南豊鉉教授の、「韓国の借字表記法の発達と日本の訓点の起源について」なる基調講演がありました。南教授は古代朝鮮の借字表記は、吏読・郷札・口訣及び語彙表記に分かれるとし、先ずその具体的使用法について解説され、その後小林教授が新羅写経と認定された、東大寺図書館所蔵『大方広仏華厳経』に角筆で記入された「良」字の略字体について、郷歌に見える表記法と同一であることを述べ、最後に日本の訓読が新羅から伝えられた可能性等に言及されました。基調講演終了後、以下の4名の専門家により講演が行われました。

  京都大学金文京教授は、「日韓漢文訓読史の比較―その共通点と相違点」なる題目下で、インド仏典の中国語翻訳と訓読に密接な関係のあることを指摘し、中国の文字使用法を引用しつつ、東アジア全体の観点から日韓の訓読法を比較されました。京都大学名誉教授庄垣内正弘教授は「ウイグル漢字音と漢文訓読」で、ウイグル語訳仏典にはウイグル漢字音による語彙が多く用いられ、それらが訓読されていたことを、同氏が解読された具体的な例を挙げつつ説かれました。高麗大学名誉教授鄭光教授は「朝鮮吏文の形成と吏読―口訣の起源を模索しながら」で、漢文とは何かという問いから始め、中国吏文にモンゴル語が影響を与えて元代吏文が生じ、他方朝鮮では高麗後期に元代吏文の影響を受けて朝鮮吏文が生じた。ただ朝鮮吏文では新羅以降の伝統を引く吏読を混用していることを述べられました。広島大学名誉教授小林芳規教授は「日本所在の八・九世紀の『華厳経』とその注釈書の加点」で、東大寺図書館所蔵『華厳経』巻十二至二十の一巻は、梵唄譜や縦長の合符、そして使用されている真仮名(1部に省画仮名)から見て新羅経であるとされ、その仮名の字体が奈良朝の仮名に通じることを指摘されました。 講演終了後に講演者間或いはフロアーの聴衆と間に活発な質疑・応答がなされ、言語研究センター長藤本幸夫教授の挨拶で閉会しました。前訓点語学会会長石塚晴通北海道大学名誉教授・第一回シンポジウム講師小助川貞次富山大学教授・池田証寿北海道大学教授など専門家の参加もあり、盛況裡にシンポジウムを終えることができました。 【主催者:言語研究センター長 藤本 幸夫】

講師の庄垣内正弘氏

金文京氏と南豊鉉氏






講師の鄭光氏

講師の小林芳規氏