2014年度 日本の投資不動産市場の構造分析

不動産市場は,不動産の「利用市場」と「資産市場」とからなる。利用市場は建物床の新設・更新を通じてストックが形成され床需要との均衡で床賃料が形成される市場である。資産市場は床賃料を期待収益率で資本還元することで資産価格を形成し,建設コストとの対比で不動産投資のGo/NoGoが決定される市場である。結果は建物床の新設・更新として再び利用市場につながっていく。単純に俯瞰するとこうした描写になるが現実はそう単純ではない。

 不動産への投資は資産形成の行動の一つであり,したがって不動産以外の資産(株式,国債,JREITなど)と併せて多資産ポートフォリオの構築の行動とみなければならない。海外における研究では不動産を含めた多資産ポートフォリオの研究が多くあるが,わが国ではいまだそうした研究は数少ないのが現状である。とりわけ,資産価格の変化(キャピタルゲイン)だけではなく,資産からの収益(インカムゲイン)も合わせた総合収益をベースとして包括的な観点でポートフォリオ構築に着目したものはほとんどない。こうした着眼は,一国の国民が資産をどのような形態で保有するのがよいのかを問う問題でもあり,今後の資産形成の多様化について考えるうえで重要な含意をもたらすものである。

 筆者らはこれまで,(i)総合収益をベースとして我が国における不動産を含む多資産の時系列的変化における特徴をとらえ,(ii)それをもとに最小分散ポートフォリオの構築という観点から不動産投資の果たすリスクヘッジ機能として有効性を確認した。(iii)さらにこれらをもとに多資産の相互連関の下で将来の変化を予測するための一つとして多変量自己回帰モデルによる分析を進めている。

 本研究は,日本の不動産投資を含めた多資産におけるポートフォリオの新たな構築方法を考察しその有効性を検証することを目的としている。研究期間内に次のサブテーマについて結論を得たいと考えている。

(1) ウィンドウ移動型の多資産VECMによるポートフォリオ構築法の有効性に関する検証
(2) カルマンフィルタ型の多資産相互関連モデルによるポートフォリオ構築法の考察
(3) 同上の有効性に関する検証
(4) 多資産GARCHモデルを組み込んだ多資産ポートフォリオモデルのリスク評価

 

高辻 秀興 経済学部・教授

鈴木 英晃  (株)IPDジャパン