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2014.05.22|最終更新日:2020.07.24|

明治学院大学名誉教授 井上 孝代 氏が講演

IMG_6391麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田 各市教育委員会および柏商工会議所)の平成26年度前期第1回目が5月10日(土)に開催され、明治学院大学名誉教授の井上 孝代氏が、テーマ「60歳からのルネッサンス ―自分の居場所と幸せな生き方―」と題して講演されました。当日は322名の方々が来場し熱心に聴講されました。

井上氏はまず、”幸福感”の研究が世界的に注目されるようになってきたと指摘し、さらに心理学、哲学、社会学、経済学、政治学等の幅広い分野の中で、その研究が進んできたと示されました。

井上氏は、個人が抱く”幸福感”の要因には、「経済社会状況」「心身の健康」「人との関係性」が因果関係が強く、重要な幸福的要素であると解説されました。そして、「人との関係性」を良好に保つには、「トラブル」(争い)から、「トランセンド」(超越)という考え方が大切であると説明されました。

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井上氏は、「AとBの両方の意見が食い違った場合は、どうしたらよいでしょうか」と会場に問いかけられました。氏は、「世間一般には、どちらかが我慢する、お互いが諦めて撤退する、両方が歩み寄って妥協点を見つける、そのどれかだと考えられています。しかし本当は、Win-Winの関係こそが望ましいものです。そのためには両者が納得するまでお互いが思っている内面を話し合い、考え方のベクトルを変え、新しい生き方を模索することが大切です。妥協を乗り越えた解決点こそが「トランセンド」なのです」と解説されました。

さらに、”幸福感”には「居場所」が密接な関係があることも示唆されました。「居場所」(=居る場所)は物理的な空間、すなわち、“自分”が成立するための外的要因であると同時に、内的要因としての中身(心の働き)と、それらを入れる器(心身)が“自分”を構成し、それらが欠落すると「居場所がない」という状態になり、幸福感が得られなくなると解説されました。

次に井上氏は、人が「幸福感」を得られるには次の3つの要素があることを説明されました。

(1)愉快な人生(pleasant life)・・・愉しむスキルをもつこと。
(2)積極的に関わりのある人生(good engaged life)・・・日々の生活で何かが得られる、自我の強さや徳を投入する、地域の中で何か関わりを持っていること。
(3)意味ある人生(meaningful life)・・・自分だけにとどまらず、他方に役立つと信じるサービスをやり遂げる、誰かの役に立つこと。

特に(3)の「誰かの役に立つこと」が、幸福感を得られる最も重要な要素であると力説されました。

井上氏は最後に、「幸せで豊かな人生とは、一つは、個人が家庭・職場・社会などに安定した“居場所”を有していること、そしてもう一つは、その個人が意欲と希望をもって、すなわち尊厳を持って充実した生活を送ることです」と述べられ、盛大な拍手とともに講演会を締めくくられました。