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2015.07.27|最終更新日:2020.07.24|

東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏が講演

 

テーマ:日本の海洋安全保障

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平成27年度麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田各市教育委員会および柏商工会議所)の前期第3回目が7月11日(土)に開催となり、山田吉彦氏(東海大学海洋学部教授)を迎え「日本の海洋安全保障」と題して講演を行いました。当日は203名の方々が参加し、熱心に聴講されました。

山田氏は千葉県のご出身で、高校時代は陸上競技部に所属され、大学卒業後は一旦銀行に就職。その後日本財団に転職されてから海洋を専門的に研究するに至ったとの経緯を語られました。ご自身はフィールドワーク中心主義で、昨年は365日中123日、現地調査を行ったと語られました。

まず、日本は世界有数の海洋国家であると解説。日本人が思っている程の小国ではなく、北は択捉島から南は沖ノ鳥島、東は南鳥島から西は与那国島まで、東西南北約3,000km、6,852の島(周囲が100m以上)で構成されており、海洋面積は世界6位、海水体積は世界4位の海洋大国であると説明されました。

次に、日本をとりまく領土問題の実態について、詳しく説明されました。
1.北方四島・・・第二次世界大戦直後に、ソ連によって武力占領された。
2.竹  島・・・韓国によって長年、実効支配されている。
3.尖閣諸島・・・中国の漁船が毎日のように不法侵入し海洋侵略の危険にさらされている。

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山田氏は、中でも執拗な中国漁船の海洋侵略について「日本の海洋面積が447万平方キロメートルに対して、中国は約100万平方キロメートルと少ない。なんでも手に入れたい中国は、日本の豊富な海洋資源を狙っているのです」と主張されました。日本の海で採れる豊富な海洋資源について、94年分が眠っているとされる”メタンハイドレート”をはじめ、海底鉱物資源の”海底熱水鉱床”等を紹介されました。

しかし中国にとっては海洋資源の獲得は単なる通過点であるとして、中国が本来想定している壮大な海洋戦略を示唆されました。中国はまず、九州~沖縄~台湾~フィリピン~ボルネオ島を結ぶ、中国と米国の軍事境界ライン(所謂「第一列島線」)を結び、内側を中国の海とすることへの軍事戦略の一環であると解説。

2012年の尖閣諸島の国有地化の後、五島列島に漁船団が大挙したり、衝突事件を起こさせたりした、日本に対する執拗な圧力はそうした布石となっていると力説されました。当時の民主党政権は中国の圧力に屈したかたちとなり、尖閣諸島はますます脅かすことにつながったと主張されました。

また、大挙して来る中国漁船には、すべて発信機が取り付けられており、中国政府が管理・統制していることは明白であると述べました。マスコミは、サンゴの密漁について大きく取り上げられているが、実際はそれが目的ではなく、中国の海洋進出のための大きな戦略の過程であると説明されました。

山田氏は「日本が集団的自衛権等、あまり中国に刺激すると戦争が起きるのでないかという意見があるが、中国と日本は絶対に戦争にはなりません」と述べられました。理由としては、(1) 軍事力は日本が中国より有利であること。(2) 中国が海洋進出するためには沖縄を横切らなければならないが、有事の際は封鎖されてしまうため戦略上不利になってしまう、と解説されました。

したがって中国はまず、沖縄を手に入れることが戦略の基本であると論破されました。そのため、日本がオスプレイを導入する前に、尖閣から350kmの位置にヘリポートの基地をつくったり、12000tクラスの大型巡視船を浮かべて、洋上拠点を目論んでいたりしていると指摘されました。

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最後に、北方領土について詳述されました。

山田氏は、「今が北方領土返還の大きなチャンスです。動くなら今しかない絶妙なタイミングにきています」と解説。理由としては、安倍政権・プーチン政権ともに安定政権であるため領土問題を話題にしやすいこと。原油価格の下落が続き、経済的に低迷している現在のロシアとしては、プーチンの任期中に何とか極東開発による経済活性化を成功させたいとの思惑がある。このタイミングを利用して、日ロ平和条約締結に伴って北方領土問題を解決していくことを提言されました。

氏は「北方四島に住んでいるロシア人は、政府がモスクワの2倍の給与と年金を保証しているためで、島民は島に対して愛着を抱いていません。経済を切り口にして、実質的返還の条件を整っていくことが大切です」と述べられ、盛大な拍手とともに講演会を締めくくられました。