【開催報告】平成27年度第回公開研究会「Order Ethics: A Contractarian Approach to Business Ethics」

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去る平成27年10月17日(木)、企業倫理研究センター公開研究会が、同学あすなろ校舎にて開催されました。今回の研究会では、ドイツのミュンヘン工科大学よりChristoph Luetge教授をお招きし、「Order Ethics: A Contractarian Approach to Business Ethics」というテーマでご講演いただきました。講演の内容は、Luetge教授の近著であるOrder Ethics or Moral Surplus: What Holds a Society Together? (2015) がベースとなっており、そのエッセンスをお話して頂きました。

ホッブス、ロック、スピノザ、カント。講演は、これら伝統的な社会契約論者の紹介から口火が切られ、その後、ビジネスエシックスにおける「社会契約論的アプローチ」を巡るいくつかの先行研究がレビューされました。Luetge教授のアプローチも、(社会) 契約論を引き継ぐものではありますが、いわゆる社会契約論的アプローチとは袂を分かつようです。

その真意に迫るには、講演のタイトルにある“Order Ethics ”という概念に加え、“Contractarianism”と“ Contractualism”という、一見するところ違いがなさそうな両者の概念的相違点などを理解する必要がありますが、ここではその詳細に関する説明は割愛し、残りの紙幅を使って、講演全体を通じて私が感じたことを述べたいと思います。なお、Orderという言葉は、命令や秩序、順序といったように、多義性を有するものですが、ここでのOrderとは、ドイツ語で「規制 (政策)」を意味するOrdnungspolitikを指すものであるとの説明がありました。

さて、Luetge教授の講演を拝聴し、何よりもまず感じたことは、ビジネスエシックス研究における規範的・哲学的議論の意義と可能性、さらに言えば、日本における規範的・哲学的研究の必要性です。日本のビジネスエシックス研究は、欧米のそれと比較した場合、規範的・哲学的議論というよりも、むしろ実務的・実践的な議論に関心が寄せられているように思われます。Luetge教授が先行研究の1つとして取り上げた、Donaldson & Dunfeeの統合社会契約論についても、日本においては一部の研究者によってのみ議論されているのが現状です。このような中にあって、Luetge教授による最新の研究に触れたことで、多くことを学び刺激を受けることができました。

(経済研究科博士課程3年 大塚祐一 記)