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2016.01.14|最終更新日:2020.08.05|

【開催報告】平成27年度第2回公開研究会「中国における企業の公益活動」

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平成27年12月19日(土)、企業倫理研究センター公開研究会が、本学校舎「かえで」にて開催されました。今回の研究会では、「中国における企業の公益活動」というテーマで、華東政法大学外国語学院の王 丹先生と本学外国語学部の梶田幸雄教授にご講演いただきました。近年、中国はめざましい経済成長を遂げていますが、その一方で、公害問題をはじめとする種々の社会問題が深刻化してきています。社会に与える企業の影響が大きくなってきている中、中国では「企業の公益活動」をどのように捉えているのでしょうか。

王先生の報告では、「企業による寄付行為」という観点から、中国企業と外国企業の認識の違いや具体的な実践内容の相違点などについてお話をいただきました。日本においては、1990年代以降に企業のフィランソロピーが活発化し、現在では本業との関連性や戦略的な観点を考慮して寄付行為をおこなうといった事例も少なくありません。他方、王先生によれば、中国では寄付行為というものを企業の発展や利益と併せて捉えてはならないという社会理念のもとで、純粋に社会に恩を返し、故郷に幸福をもたらすための行為として認識されているようです。また、中国企業による寄付行為の特徴として、寄付に関する中長期的な計画がなく、単発的な取り組みである点が指摘されました。日本においても、単発的かつ無計画な寄付行為(社会貢献活動)から、中長期的で計画的(戦略的)な寄付行為(社会貢献活動)の必要性が議論されてきましたが、中国においても今後はより広いビジョンを持った寄付活動が期待されているようです。

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梶田教授の報告では、中国進出企業に求められるCSRについて、具体的な事例を交えてお話いただきました。中国では2006年の改正会社法により、CSRを果たすことが企業の法的義務となりました。しかしながら、梶田教授によれば、中国における"CSR"とは主として企業統治とほぼ同義に理解されており、日本や欧米での理解に比べると狭義のものであるようです。このような背景から、梶田教授は、日本企業をはじめとするCSR先進国企業が中国へ進出する際、CSR実践のロールモデルとしての役割が期待されると指摘されました。このことに加えて、私は、CSRへの取り組みが適正に評価されるような仕組みの必要性を感じました。例えば欧米では、SRIやESG投資の広がりによって、CSR活動へのインセンティブが与えられています。中国においても今後は、市場や政府による"CSR推進に向けた制度"の整備が進められていくことが予想されますが、そうした制度的基盤の発展段階にある現在、CSR先進企業が果たすべき役割の大きさを確認することができました。

本研究会では、本学教員や大学院生を含め、多くの参加者が活発に議論をおこない、大変有意義なものとなりました。