【開催報告】2016年度 公開研究会「Complexity of Public Opinion and Implication to Ethical Decision Making」(無料)

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2016年11月29日、本学生涯学習プラザにおいて、公開研究会が開催されました。今回の研究会では、立命館アジア太平洋大学よりChung-hee Kim(キム チョン ヒ)教授をお招きし、「Complexity of Public Opinion and Implication to Ethical Decision Making:The Case of Korean Air Nut Rage Scandal(世論の複雑さと倫理的意思決定への含意:大韓航空のナッツ・リターン事件を事例にして)」というテーマでご講演いただきました。

2014年12月に明るみになった通称「ナッツ・リターン事件」は、日本でも話題となり、同族経営の問題点などが指摘されました。他方で、Chung-hee Kim教授の問題意識や関心は、この事件そのものの (倫理的) 課題ではなく、事件に対するメディアの報道の仕方が韓国内と諸外国とで違っているという所にありました。同じ1つの事件に対して、どうして国内と海外とでは問題の取り上げられ方が違うのか。これがChung-hee Kim教授の問題意識だということです。ビジネスエシックスの研究課題として、国や地域ごとに異なる文化的な違いや商慣習の違いをどのように認識し経営実践に取り込んでいくべきか、といったテーマについては、これまでに多くの研究が蓄積されてきましたが、メディアの報道や世論における問題の受け止め方の違いを明らかにしようとする研究はほとんどなされてこなかったように思います。

Chung-hee Kim教授は、上記の問題意識に対し、日米英を含む18の国の新聞記事(419本)を収集し、Thematic Coding Approach (主題分析)の手法を用いて国際比較をおこないました。その結果、次の様な国際的な違いが明らかになりました。第1に、国内メディアに比べて海外メディは、本件を「韓国財閥における権力の乱用」という脈絡で報道する傾向にあったこと、第2に、海外メディアに比べて、韓国メディは本件を「ブランドイメージ」に関わる問題として捉える傾向が強かったこと、第3に、韓国のメディアは本件を「趙一族の信頼の失墜」という形で報じたが、海外メディはではそのような傾向は見られなかったことなどです。

企業倫理や企業の持続可能性を考える際、メディアの影響力は無視できないものとなってきています。不祥事を起こせば、その情報は一気に広がり、その規模は一国内を超えてグローバルに拡散する時代になりました。そして、1つのケースに対して問題の解釈の仕方が国ごとに異なるということを踏まえ、多国籍企業は単に自国内のみならず、海外における主要なステークホルダーと戦略的にコミュニケーションを図る必要性が強まっていることなどを報告の結論として示されました。

今回の研究会は英語でのご講演にも拘らず、多くの大学生や大学院生も参加し、活発な議論がおこなわれました。研究会終了後も、Chung-hee Kim教授のもとへ質問に行く大学生もおり、とても有意義な研究会であったと感じています。

 

(文責:麗澤大学大学院経済研究科博士課程3年 大塚祐一)