学校教育研究科道徳教育専攻 教員リレーエッセイ連載(第5回)
2017.8.30

子どもたちのつながりを豊かに --それはまず教師から

岩 佐 信 道

 道徳性の発達

 かつてNHKで「森に育まれる魚、オショロコマ」という番組が放送されました。北海道、知床の清流に棲むイワナの仲間の淡水魚、オショロコマは、多い時には、1日に3,000匹の水生昆虫を食べているという研究が紹介されました。次に、そのエサとなる虫たちは、川に沈んだ多様な木の葉を食べており、したがって、オショロコマは周辺の森に育まれているというのです。そして最後に、この魚も、森の鳥ヤマセミに食べられ、すべては森の大きないのちの輪の中で生きていることが明らかにされたのです。

 オショロコマは、流れてくる虫や水面を飛び交う虫を懸命に食べていましたが、私たち人間は、地球上の多種多様な生き物や植物を食べています。したがって、この映像を教材にして、食事の時には「いただきます」と食べ物に感謝の心を、と指導する先生があるかもしれません。しかし、ここでは、この映像をもっと広く、深く捉えてみたいのです。

 考えてみれば、あのオショロコマは、虫や森だけでなく、水や空気をはじめ、大地に注ぐ太陽など、まさに大自然そのものに生かされています。また、人間は、大自然はいうまでもなく、世界中の人々と支え合っており、決して一人では生きていけないのです。私はこうした状況を「相互依存のネットワーク」と呼んでいますが、私たちが人間として必要なのは、この事実をもっと真剣に見つめることではないでしょうか。そこから、大自然への感謝の心がめばえ、自分中心の心が和らぎ、接する人々を大切な存在として思いやれるようになり、私たちのつながりが豊かなものになっていくはずです。

 道徳性の向上とは、子どもたちのさまざまなつながりが豊かになっていくことといえるでしょうが、そこへ向けた働きかけの出発点は、教師自身です。まず教師が、私たちは相互依存のネットワークの中で生きているという事実とその在り方を深く理解し、自らのつながりを豊かにしていく努力が必要です。そのために教師自身の学ぶべきことがたくさんあります。次に、日々のふれあいを通じて、児童生徒一人ひとりのつながり、それも、家族や親友など、今自分に大切な人々をはじめ、広範囲の人々や環境とのつながりが豊かになるように支援することが求められます。子どもたちにとって、自分のつながりが豊かに広がっていくことほど大きな喜びはないはずですから。