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2007/09/06

犬養先生との出会い

去る6月13日に麗澤大学が犬養道子先生に名誉博士号を授与したことは、麗澤大学や犬養道子基金のホームページでも紹介されているので、ご存じの皆さんも 多いと思う。その後、先生より、いかにも先生らしい達意の文章でお心のこもった礼状を拝受し、先生の飾らぬお人柄にますます魅力を覚えたこともあって、先 生と麗澤大学との「出会い」を振り返ってみたくなった次第である。

犬養先生と本学とのご縁は、平成2年に、先生の養子でヴェトナム難民であったビンさんを本学へ受け入れたことに遡る。その時のことが「犬養道子の字引 第10回 アウトサイダー断片」と題されたエッセイで取り上げられ、本学のことにも触れられているので、ご紹介したい。

「×月×日
きょうはうれしい一日となった。
千 葉の麗澤大学を訪ねたから。私の『ヴェトナムの息子』のひとりが入学している。・・・久々に自分に戻った気がしたのはまず、インターナショナルな、自由 な、しかも規律あるアトモスフェア。英国の古き善きパブリック・スクールに範を得て昭和十年、小さく発足した(そして戦争ちゅうは官の圧迫を十二分に受け てひるまなかった)ここで、私の息子のヴェトナム少年は、みちがえるばかりの闊達さを身につけた。・・・東京をはなれたここの、キャンパスの初冬の美し さ。このキャンパスは近くの住民たちのため『美しいシーズン』には開放される。もみじ、かえで、いちょう・・・・・・・・ファカルティ・メンバーズのため の、アメリカンな『ホステル』も広々としたキャンパス内にはある。・・・かたくるしさや『管理』のかけらも感じられず、しかも礼儀と規律のしっかり入った 学校とはよいものだ。インターナショナルとはよいものだ。」(『世界』2月号より抜粋)

犬養先生には、その後、ちょうど国際経済学部を 設置した平成4年から、本学の客員教授になっていただいた。その頃の住まいはフランスだったと思うが、年に一度ご来学いただき、学生に対する特別講義を実 施していただいた。そのような関係もあって、大学の入学式や卒業式には祝辞を何度か頂戴した。たとえば、平成9年度の麗澤大学学位記授与式・修了式では、 つぎのような先生のお祝辞をいただいたが、卒業生のみならず、私も含め、式に参列したすべての人々が深い感動に包まれたことを思い出す。

「・・・ しかし、見てご覧なさい、全世界の8億人が飢餓線上ぎりぎりにあります。1億人が国内難民となって逃げまどっています。難民数は2千万人を切ることはあり ません。その中で何故あなた方だけがこの安穏な日本に生を受けたんでしょうか、あなた方が日本を選んだのですか、そうではないのです。そこで私があなた方 に、今日手向けたい一つの言葉は、ノブレス・オブリッジ(noblesse oblige)、「より多く恵まれたものは、より多くの義務を負う」という意味です。あなた方が日本に生まれ、この素晴らしい麗澤大学で学んだということ は、あなたが選んだからではなくて、キリスト教的に言うならば、神様が選んであなた方に責任を託したからなんです。ですから、ここで学んだ全ての学問、そ れに加えて人間の道、即ち倫理というものを、あなた方が一生大切に何度も何度も思い返しながら、どうぞ21世紀に向かって元気に進んでください。世界はあ なた方を待っています。・・・」(平成9年3月14日)

そのような先生の感化を受けて、実際に先生のボランティア活動に参加した麗澤大 学生もいる。当時、外国語学部英語学科4年だった鈴木清子さんもその一人で、同年の9月4日から26日までの約3週間、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サ ラエボでボランティア活動に参加した。現地では、一人暮らしのお年寄りなどのヘルパーをしたり、救援物資の衣類の整理や食糧配給の手伝いをして、現地の 人々から大いに感謝されたそうだが、つぎの感想文を読む限り、もっとも得るものが大きかったのは、学生本人だったようである。

「サラエ ボの戦禍の跡に生きる人々を見て、母国である日本の豊かさや貧しさについて考えるよい機会となりました。犬養道子先生がおっしゃっていた、違う者同士が 『出会う』ということの必然性を身をもって体験した気がします。歌を通じて、笑顔を通じて、肌のぬくもりを通じてお互いを共感できたこと、決して忘れませ ん。」(『麗澤大学NEWS』第29号 平成9年10月20日から抜粋)。

残念ながら、そうした活動も、平成12年(2000年)が最後となり、その後は、現在まで麗澤幼稚園の名誉園長としてかかわりを持っていただいている。

麗澤大学はそのような犬養先生の精神を大学として少しでも継承しようと、来年度に向けて外国語学部改組を行い、「国際交流・国際協力」のコースを設置した。ノブレス・オブリッジの精神で、世界のために活躍する日本人の育成を夢見て。