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2009/07/18

企業倫理シンポジウム開催

さる7月18日、廣池千九郎記念講堂にて麗澤大学開学50周年記念のメイン行事の第二弾、企業倫理シンポジウムが開催された。これは「変わる企業と経営者 の哲学」というテーマの下、経済学部・国際経済研究科・企業倫理研究センター共催で開催した、本学の学術的特徴をいかんなく発揮したシンポジウムである。 シンポジウムに先立ち、以下のような挨拶をした。

「本年平成21年、麗澤大学は開学50周年を迎えました。大学の前身である私塾の道徳科学専攻塾が開塾されましたのは昭和10年(1935年)でございますので、専攻塾まで遡りますと、来年の2010年には廣池学園創立75周年を迎えるわけでございます。

このエポックメイキングな周年を記念する麗澤大学は、本学の学術的・教育的ブランドを世に発信すべく、「知のモラルの再構築―地球と人類の平和をめざし て」を統一テーマにして、様々な記念行事を計画し実施してまいりました。「知のモラルの再構築」は、本学の建学の精神、知識と道徳の一体化を目指す「知徳 一体」の理想、道徳と経済の一体化を目指す「道経一体」の理想を現代的に展開しようするものでございます。現代のような経済至上主義の時代でこそ、「経済 とは何か」という基本的な問いを自らに発し、経済活動の目的を問い正さなくてはなりません。それは自己の利潤追求だけに終始する経済活動を、「経済」とい う言葉の原義である経世済民、「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」という原点に回帰させることに他なりません。

たとえば、現在よ く耳にする「コンプライアンス」という言葉一つをとっても、その原点まで遡れば、現代で使われている「法令遵守」という狭い意味よりも、もっと幅広くて奥 深い含蓄があるのに気づきます。『オックスフォード英語辞典(OED)』によりますと、この言葉のもっとも古い用例として、17世紀のものがございます。 私事で恐縮ですが、実は私の専門は17世紀の英文学で、特にイギリスの詩人ジョン・ミルトンを研究しております。OEDにはミルトンの代表作『失楽園』か らの引用がございますので、ご紹介いたします。1667年の用例ですが、アダムに従順なエバのしとやかな振る舞いが次のように描写されています。

All her words and actions mixed with love / And sweet compliance.(『失楽園』第8巻、603)
こ れはキリスト教の聖書『創世記』を題材にしたもので、エデンの園の住人で人類の始祖アダムが、エバについて詠った詩行です。アダムは、婚姻の喜びや生殖の 悦びを凌駕する楽しみが、愛と甘きコンプライアンスの混じったエバの日々のすべての言動に見出せると申しております。この場合の“compliance” は“complaisance”とほぼ同義でもありまして、「人を喜ばせる習性、人に満足を与える行為」という意味合いが含まれているのです。ですから英 文学者の私としましては、コンプライアンス=「法令遵守」だけでは、どうも物足らなさを感ずるのでございます。現代の用法では、人間性に対する思いやり、 他人への配慮、そして何よりも個人の充足度も含めての調和という意味合いがなく、これを「法令順守」と捉えた時点ですでに絶対的な限界が生じているので す。
だからこそ、現代の企業倫理でも、単に法令を遵守するだけでなく、人権に配慮した適正な雇用・労働条件、消費者への適切な対応、環境問題へ の配慮、地域社会への貢献など企業が市民として果たすべき責任としてCSR「企業の社会的責任」(corporate social responsibility)という考え方が出てきたのかもしれません。
それにつけても思い出すのは、足立政男著『老舗の家訓と家業経営』 (廣池学園出版部 1974年)という名著です。この本によると、京都には百年を超え、何世紀にもわたって老舗の「のれん」を掲げている企業が千社ほどあ るそうです。老舗とは、文字通り、古くから何代も続いた由緒ある店のことですが、生存競争が激しい商売の世界で、どうして経営が永続し、発展したのでしょ うか。その秘訣は老舗が代々守り続けてきた「家訓」や「店則」にあると同書は喝破しています。具体的に言えば、「人間性の回復」を目指し、地域社会や国家 社会に貢献できる店だけが、風雪に耐えて生き残ることができるのです。「売って喜び、買って喜び、第三者も喜ぶ」という奉公精神に徹した経営こそが、企業 永続の秘訣というわけでございます。これこそまさにコンプライアンスの本来の意味ではないでしょうか。

経済至上主義が幅を利かすグ ローバル化時代、世界同時的な経済不況に苦しむ困難な時代であるからこそ、私たちは肚を据え、しっかりとした企業哲学をもってこの難局を乗り切ってゆかね ばなりません。本日は「変わる企業と経営者の哲学」と題し、基調講演の脇田眞氏をはじめ、中島修治氏、信﨑健一氏、大槻修平氏の素晴らしい講演者とパネ ラーをお迎えしておりますので、企業倫理では学問的にも実践的にも世界をリードする麗澤大学ならではの実り多きシンポジウムになりますことを期待しており ます。本シンポジウムの成功を祈念してご挨拶といたします。」

企業シンポジウムⅠの内容について