1. ホーム>
  2. 未分類>
  3. 「第1回台日大学学長フォーラム」に参加して

2011/12/26

「第1回台日大学学長フォーラム」に参加して

 さる12月19日、台湾の教育部(文部科学省相当)主催の「第1回台日大学学長フォーラム」に招待され、「大学経営とISO26000の導入」と題する発表を行った。フォーラムの全体的な報告については、同行した中国語が堪能な外国語学科の松田 徹教授の報告と、小生の発表レジュメをご覧いただきたい。

 発表後、台湾の教育部の政務次長より「ISO26000導入により、どのような評価が期待できるのか」という質問があった。それに対し「本学には企業倫理研究センターがあり、すでに企業倫理の分野では社会的な評価を得ていると理解している。また本学では、経営理念がパフォーマンスに及ぼす影響に関する実証的研究を進めており、理念が浸透する組織ほど、パフォーマンスは高くなるとの結論も得ている。しかし本気で、その理念を教育姿勢にまで落としこみ、カリキュラムに反映させたり、実質的に機能させたりしている高等教育組織は少ないのではないか。現在のところ、麗澤での取り組みはあまり知られていないかもしれないが、これから大きく注目されることになろう。事実、マネジメントシステム規格の専門誌『アイソス』(2011年)では、39ページにもわたって本学の取り組みが特集されている。国際的社会的責任規格であるISO26000の活用に限らず、麗澤の倫理・道徳の研究は国際的通用性を目指しており、合衆国マサチューセッツ州のボストン大学のThe Center for Character and Social Responsibilityと学術協定の覚書を締結し、チャールズ・タトル社から”Happiness and Virtue beyond East and West: Toward a New Global Responsibility”という題名の共同執筆本を上梓する予定である」との説明を行った。

 台湾の学長から提携校の申し出があるなど反響があり、充実したフォーラムであった。

フォーラムの様子

「第1回台日大学学長フォーラム」

淡江大学学長(右)とともに

淡江大学の「麗澤国際学舎」

                                         

<松田 徹教授からの報告>

「第1回台日大学学長フォーラム」に同行して

 平成23年12月18日から21日まで、第1回台日大学学長フォーラムに参加された中山学長に、交際交流センター中島淑子主管とともに同行した。以下は、その経過報告、ならびに台湾滞在中印象に残ったことを簡単にまとめたものである。

 台北松山空港到着後、今回のフォーラムの運営担当校である淡江大学スタッフが、手際よく宿泊先ホテルに案内してくれた。そこでは、淡江大学スタッフに交じって麗澤大学卒業生2名が出迎えてくれ、部屋まで荷物を運んでくれた。現在淡江大学大学院に在籍しているとのこと。思いがけないうれしい再会だった。

 翌19日は、9時20分から17時30分まで、昼食をはさんでフォーラムが開催された。中山学長の発表は、日本側学長としては最初に行われた。発表の冒頭で、「ありがとう台湾」という意味を込めた麗澤大学特製Tシャツを披露し、台湾語で「多謝(ドーシャ)」と呼びかけ、喝采を浴びた。発表の内容について活発な質疑応答がなされたほか、途中休憩や昼食時などにも話題となっていた。

 今学期、淡江大学には麗澤大学から4名の学生(中国語・中国文化専攻3名・英語コミュニケーション専攻1名)が留学しに来ている。フォーラムの合間に、彼らとも久しぶりに会うことができた。すっかりこちらの生活になじんだようだ。「麗澤の学生は中国語の発音レベルが高いです。」と、こちらの先生に言っていただき、鼻高々だった。

 フォーラムも無事終了し、3日目は専用バスで台中へ向かい、相次いで2つの大学を訪問見学した。

 最初の訪問校東海大学は、1955年に台湾で最初の私立大学として設立された、ミッション系の総合大学である。8つのカレッジ・34の学部から構成されており、東京ドーム28個分の広大なキャンパスを誇る。キャンパス内のチャペルで、世界的にも有名な建築物である路思義教堂にも案内していただいたが、柱を1本も使わず、屋根そのものが建築自体を支える仕組みに度肝を抜かれた。

 キャンパスを案内してくださった同校国際交流センター王良原主任の話では、この広いキャンパスの清掃は、すべて学生が行うという。東海大学では、1年生は1日1時間キャンパス清掃が義務付けられているそうで、上級生がリーダーとなって管理し、この清掃活動をきちんと行わなければ、進級は出来ないとのこと。王先生の「東海大学では、多くの学生が海外留学に行きます。自分の家・大学・国を愛せない者が、どうして他の国を愛することが出来るでしょうか。」という言葉に感銘を受けた。

 この日2番目の訪問校は、逢甲大学で、1961年に開校した逢甲工商学院を前身とする、実業系の総合大学である。ここでは、楊龍士副学長が、大変丁寧にキャンパス案内をしてくださった。中でも強い印象を残したのは、同校内にある外国語センターである。本学のI-Loungeの規模をさらに大きくしたような施設だが、ユニークなのは、カフェラコーナーが併設されていることである。それもただのカフェコーナーではなく、立派に外国語学習に役立てているのだ。つまり、母語でなく外国語でオーダーすると1割引きになるというシステムなのである。本学でも来年新しい学生ラウンジがオープンするが、こうした面白い取組みを応用できないかと中山学長とも語り合った。

 4日目、この日は早朝ホテルを出て、台中から新幹線で台北に帰らなければならない。駅まで我々を送ってくれる専用バスが渋滞に巻き込まれ、新幹線の駅に着いたのは、けっこうぎりぎりだった。バスの遅れに、我々以上に気を揉んで、携帯で連絡をとっていたのが、台中まで同行してくれた淡江大学のスタッフである。今回、淡江大学の李佩華先生、徐聖芬先生、紀淑珍女史には本当にお世話になった。

 台北では、帰国前の慌ただしい時間の中、麗澤大学とは大変縁の深い彭春陽先生(淡江大学前日本語学科主任)と馬耀輝先生(現日本語学科主任)のお二人と昼食をともにし、今回のフォーラムの総括をすることができた。

東海大学のシンボル―教会―

逢甲大学

                                                  


 

 

 

 

 

 

<発表レジュメ>

「大学経営とISO26000の導入」

 まず最初に3月11日に発生しました東日本大震災におきましては、台湾政府および国民の皆様から、200億円をこえる世界で最高額の義捐金と援助を賜り、まことにありがたく、この場をお借りし、日本国民を代表いたしまして、心より感謝を申し上げたいと存じます。
 この度、私どもは台湾の皆様のご厚情と日台両国間の深い友情に対する認識を新たにし、どれほど勇気づけられたことでしょう。まずは衷心より御礼申し上げます。
 その感謝の気持ちの印として、本日、廣池学園の廣池理事長のご発案で“I Love Taiwan”と書かれたTシャツを持参しました。中国語で「多謝」とも書かれています。本来ならこれを着て登壇する予定でしたが、冬ですので皆さんにご紹介するにとどめます。

 さて、本日は大学の発展と学校経営というテーマですが、皆さんもご存じのように、日本では「全入時代」という大学の氷河期の真っただ中にあります。今ほど、大学経営が問題にされる時代はなかったと言っても過言ではありません。
 そのような厳しい状況の中で、私どもは、大学をひとつの経営体と見なし、建学の精神、大学のミッション、教育理念、経営理念をしっかりと構築し、学内の改善・改革をする必要性に迫られておるわけでございます。

 そのような中で第一に考えるべきは、私学の私学たる所以である建学の理念と経営理念とをいかに調和し、整合性を持たせるかということでございます。
 本学の場合は、大学経営ということを考えましたとき、大学の建学の理念と経営の理念とが非常に密接に関係しているわけでございまして、創立者の廣池千九郎は、本学の建学の精神として知識と道徳は一体であるとする「知徳一体」を、経営理念としては経済と道徳は一体であるとする「道経一体」を掲げております。すなわち、学校経営においても、道徳、モラルを基盤とすることが、本学の教育のミッションに合致しているわけでございます。

 もちろん、経営と言った場合、どこの大学でも同じだと思うのですが、一般企業のように売り上げをいくらにするとか、シェアをどうするとか、といった具体的目標が立てられるわけではありません。またそれは、本来の大学の目的でもありません。逆に言えば、企業的、商業的な営利目的が明示できないからこそ、大学経営としては、大学のミッションとともに、ステークホールダ―である学生が望む質の高い教育を真摯に検討し、成果目標をはっきりと示した上で、学生支援を実施することが大切ではないかと考えるわけでごいざいます。

 企業の場合は、コンプライアンス、CSRといった行動指標がございまして、それらを遵守することが健全な経営体質のアカウンタビリティーを可能にしているわけです。そこで、グローバル化時代を迎え、国際的通用性のある経営戦略の策定とマネッジメントの考え方を固める上で、大学が基づくべき国際的基準のようなものとして、大学が準拠するべきものは何か?こう考えて本学が他の大学に先駆けて取り組んだのがISO26000です。
 ISO 26000は、企業による利用だけでなく、多様な組織による採用を前提として作成された国際規格で、「社会の持続可能な発展」を測るために、企業その他組織による社会的責任の実践を促すことを目的としています。本学でのISO26000活用の主たる目的は、「知と徳を併せもって社会の発展と人類の安心・平和・幸福の実現に寄与できる人物を育成する」という本学の理念の実現を促進するという点にあります。
 もちろん、本学の社会的責任は多岐にわたり、それらの実現も目指しますが、次世代を担う人物の育成という教育機関としての大学の本義を通じての社会的責任の実現を重視する場合、この規格が適切だと考えました。
 本学が、大学組織としてこの社会運動を側面から推進するため、どのようにISO 26000の導入を機関決定していったか、取り組みの流れにつきましては、参考資料(2)をご覧ください。そして参考資料の(3)にありますように、それをマネジメント体制に落とし込むため、10のステップを踏みながら態勢づくりを行いました。最終的には『麗澤大学・ISO 26000管理一覧』の発行にまでこぎつけ、2011年3月、初版を発行しましたが、ここでは省略します。

 言うまでもなく、ISO 26000は「パフォーマンス」(結果)を重視する規格です。そこで本学では、「パフォーマンス」にかかる側面だけに注目し、次の5つの問いを立てることにしました。その問いとは「組織として取り組むべき課題をどう把握するか」「課題に対しどのように優先順位を与えるか」「優先順位を与えられた課題への取り組みと進捗はどう測定するか」「進捗を測る尺度の信頼性をどう担保するか」「いかにしてパフォーマンスを継続的に改善するか」です。
 そして、本学の現状と課題を整理したうえで、必要性や影響などを考慮して、現在下記の5つの課題を「麗澤課題」とし、重点的に取り組んでいるわけでございます。

麗澤課題1 学生基点に立った教育を推進し学生の成長を助けること
麗澤課題2 学生基点にたった窓口業務・対応に徹すること
麗澤課題3 温室効果ガスの削減を図ること
麗澤課題4 環境の美化・保全に努めること
麗澤課題5 コミュニティ貢献を持続的に実施すること

 詳しい内容をここでご紹介することはできませんが、本学らしいと申しますか、単に教育と研究だけにとどまらない現代的テーマである課題3と課題4につきましては、参考資料の(4)と(5)をご覧ください。

 現代の私たちの生活は、今までそうだったように、これからも同じように営むことができる。これまで日本の平和と繁栄を謳歌してきた私たちはそう考え、それを当たり前のように感じてきました。「日本社会の持続可能性」は保証されていると盲信していたのです。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発の事故は、この「当たり前感覚」を粉々に打ち砕いたのです。「社会の持続可能性は当たり前でない」ということを思い知らされたのでした。2010年11月に発行されたISO 26000は、グローバルなレベルで持続可能な社会の構築を促そうとする国際規格ですが、今ほど「持続可能性」という言葉が真実味を持って訴えかける時代はありません。社会の持続可能性は、グローバルなネットワークの中で、多くの組織の努力と助け合いによって具体化されるものです。最後に、できるだけも多くの組織が、ISO 26000の積極活用に動き出すことを期待して私の発表を終わりたいと思います。


【当日の発表資料】

発表資料(日本語)

発表資料(English)

感謝の気持ちの刻まれたTシャツを披露

フォーラムでの発表の様子

現地メディアの取材の様子