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2012/11/01

台湾での対談と講演会

野口さんとともに

今回の台湾訪問の目的は2つある。一つは張榮發基金会の訪問であり、もう一つは第四回台湾モラロジー基礎講座での教養講話である。この講話には、本学と1981年から交流を始め、これまで延べ1000人以上の本学学生を派遣し、600人以上の留学生を受け入れてきた提携校、淡江大学の学生も参加している。

内容については、同行した国際交流センター長の堀内一史教授のレポートをご覧いただきたいが、ここでは3点だけ特記しておきたい。

まず、一つ目は、本学卒業生との嬉しい出会い。台湾出発前に羽田空港のANAのラウンジで一息ついていたら、従業員の女性から笑顔で「学長さんですよね」と声をかけられた。制服姿がとてもよく似合っていたので、一瞬どなたかと思ったが、すぐにその笑顔の持ち主は卒業生の野口麻希さんであることがわかった(英語コミュニケーション専攻)。学生時代は「きもの・お作法の会」の代表で、「全日本きもの装いコンテスト関東大会」で優勝するなど、サークル活動でも活躍していたことが記憶に残っている。まったくの偶然だが、立派な社会人として元気に働いている卒業生の姿を見ることほど、学長として嬉しいことはない。

張栄発基金会にて

二つ目は、張榮發基金会の訪問。エバーグリーン・グループ総裁の張榮發氏は、東日本大震災のときに個人名義で10億円もの義捐金を寄付されている。義捐金について言えば、台湾から世界最高規模の約200億円もの支援をいただいたにもかかわらず、先の3月11日の大震災追悼式典では、情けないことに、日本政府は台湾代表の羅坤燦氏を指名献花から外すという非礼な行動をとった。その後、天皇陛下が「春の園遊会」に40年ぶりに馮寄台駐日代表をお招きになり、皇后陛下とともに感謝のお言葉をおかけになったという経緯がある。私もまずは日本人として御礼を申し上げたいという思いがあった。この場をお借りして私たちを歓迎してくださった総執行長(chief executive director)の鐘徳美氏を始め、私の講話にも参加いただいた財団関係の方々にもお礼を申し上げたい。

台湾モラロジー基礎講座の様子

三つ目は、第四回台北モラロジー基礎講座で「道徳的発想こそ、これからのグローバル時代を楽しむ秘訣」と題して講話を行ったこと。中国語では「唯有道德性的思考才是享受國際化時代的秘訣」となるようである。私の講話の名通訳をしてくれた本学卒業生で非常勤講師でもある邱瑋琪先生、ご招待してくださった台湾道徳科学研究会理事長、白文亮博士をはじめ、関係者の皆様の温かい歓迎に心から感謝したい。





      台湾訪問記録

  
                                              麗澤大学国際交流センター長堀 内 一 史

張榮發基金会訪問

26日午前9時20分、張榮發基金会に到着した中山学長はじめ私たち訪問者をロビーで手厚く出迎えてくださったのは、インタビューを受けて下さる総執行長の鍾徳美氏の他に、訪査部執行長の黄敬中氏、慈善部執行長の陳肇賢氏、文教部副理の許淑恵氏、張榮海事博物館課長の胡湘源氏の4名であった。基金会の錚々たる顔ぶれによる熱烈な歓迎ぶりに、その姿勢にこめられた先方の誠意を強く感じた。

財団法人張榮發基金会は、今急成長を遂げている航空会社エバー航空の親会社、エバーグリーン・グループ総裁の張榮發氏が慈善事業を展開するために1985年に設立した財団である。基金会の南隣りには蒋介石を顕彰する中正紀念堂。東方向には、景福門からはじまる凱達格蘭大道。大道の両側には中華民国外交部(外務省)と台北賓館(迎賓館)が建ち並び、その先の突き当たりには総統府がでんと構えている。このように基金会は中華民国政治の中枢部に位置し、台湾社会における並々ならぬ存在感と影響力を窺わせる。

インタビューは予め用意された質問への回答を鍾総執行長が読み上げ、それを淡江大学外国語学部日本語学科の施信余先生が、聞き手の中山学長に対し口頭で通訳するという形で行われた。同学科の前主任の彭春陽先生も同席され補足説明をしていただいた。質問の内容は、(1)エバーグリーン・グループの社員教育および張会長の経営観、(2)張会長の博愛行為、(3)同グループが実践している社会的責任、(4)日本人が台湾人に学ぶべきところ、台湾人が日本人に学ぶべきところ、(5)高齢者が幸せに暮らしていくための留意点、(6)基金会のビジョンおよびミッションの6点であった。なお、このインタビューは、モラロジー研究所発行の月刊雑誌『れいろう』(平成25年1月号)に掲載されることになっている。

張会長の人情味あふれる美談の数々をインタビューで耳にしたが、私の心にもっとも深く残った話がある。それは2008年に中国大陸の四川省で発生した大震災の罹災者に対して張会長が行った支援活動に端を発する。翌年の2009年今度は台湾で震災が発生した。その惨事を聞いた四川省の小学生たちは受けた恩への返礼として台湾の罹災者のために寄付を募った。子供たちは苦労の末やっとの思いで3000人民元を集めた。大陸の代表がそれを台湾に運び張会長に手渡すと、会長は使い古しのボロボロのお札を見て痛く感動した。届けられた金額と同価値の台湾元を秘書に手渡し、会長自身は小学生の心のこもったボロボロのお札を取っておき、今もそれを大事に保管しているという。

45分ほどのインタビューの後、同じビルにある400点にも及ぶ模型の船が展示されている海事博物館や主に水彩画を収集した美術館を見学し、張会長の健康の回復を切に祈りつつ私たちは基金会を後にした。

 







 

第4回台湾モラロジー基礎講座

10月27日、午後3時から5時 まで20分の休憩を挟んで中山学長による教養講話が行われた。講話は本学非常勤講師の邱瑋琪先生による通訳を交え、1時間。講話のあと30分の質疑応答が行われた。今回の基礎講座で特筆すべきは何と言っても淡江大学外国語学部日本語学科生18名が受講したことであろう。同学科の馬耀輝学科主任も教養講話に自ら参加され、質疑応答の時間には熱心に質問をされていた。

 教養講話は前半と後半の二部構成。前半は学生に向けたもので、社会人になるにあたっての心構えと道徳の重要性についてであった。我が国の経済産業省が掲げる社会人基礎力や基礎学力。それらを活かすのが品性であり、道徳性であるという知徳一体の立場から、品性教育がなければ社会的基礎力の教育は行えないと強調した。加えて、国際的教養を身につけることは重要であり、自国の文化を相対的に学び、理解してそれを発信する能力の涵養が必要であることを訴えた。

講演の様子

後半は、一般の聴衆向けの話であった。現代社会は個性尊重が特徴であるが、この風潮は社会を個人主義化する。そうなると道徳の希薄化を生み、社会はぎくしゃくしたものとなる。そこで、個人個人が道徳的ストーリーを作る必要性が生じる。一般に人は自己中心的傾向から支配的ストーリー(利己心、自我)に拘泥しがちだが、それを相手中心の選択的ストーリーに書きかえること(自己反省、自己変革)が必要であると説き、この公式を夫婦関係、親子関係、職場の上下関係、師弟関係などに当てはめて分かりやすく解説した。個々人のストーリーは集合することにより文化が形成され、どのような社会でも道徳的文化(公共善)の創造が必要だとした。

参加した60名の参加者からは「すばらしかった」「感動した」などの感想が聞かれ、質疑応答では沢山の質問が寄せられ講話に対する関心の高さをうかがい知ることができた。

 中山学長の教養講話は講座の3日目にあたりその後行われた感想発表では、6人の淡江大学生も発表を行った。感想の中から共通する部分を列挙するとつぎのようになる。

(1)最初は緊張し怖々参加したが参加者が学生を大切にしてくれたので日を追うにごとに楽しくなり心温まる思いがした。
(2)他者を変えるのではなく自分が変わる必要性を感じた。
(3)親や先生に感謝の気持ちを持つことの大切さを学んだ。
(4)理論は難しいけれどもストーリーの事例があると分かりやすかった。
(5)異世代の人と触れあえたのがよかった。
(6)費用を払ってでも参加する価値があるので、友達や後輩にも参加を呼び掛けたい。

このように、第4回台湾基礎講座は台湾の大学生にとっても多くの学びを得る機会となったようである。台湾には儒教倫理が浸透していて、お年寄りに席を譲る行為や親孝行は当然の義務という感覚が若者に備わっている。台湾から本学への留学生の中で、東日本大震災のあと放射線の問題が発生したあと両親から帰国要請を受け、涙をのんで帰国した留学生は少なくなかった。一般に日本の大学生よりも道徳やモラルを実践できる下地が台湾の学生には備わっているように思われる。


受講者からの質疑応答

 







 

 

台湾麗澤会

 10月28日正午から午後2時30分まで、台北シェラトンホテル17階のレストランで台湾麗澤会が開催された。台湾出身の別科卒業生、その後学部を卒業した人、大学院まで進んだ人、台湾在住の日本人卒業生、年齢的には20期の大先輩から76期の若手会員など35名が参加した。中には兄弟、夫、親戚が麗澤会員というお子様連れのお得意様も。会場は終始和やかな雰囲気のうちに宴は終了した。台北で同窓会を開くたびにお世話になる、シェラトンホテルのシニア・セールス・マネージャーで本学卒業生の劉意新さんには心から感謝したい。