平成20年度 卒業式告辞
本日ここに、平成20年度、麗澤大学学位記授与式、ならびに別科日本語研修課程修了式を挙行するにあたり、麗澤大学を代表してお祝いのご挨拶を申し上げます。
まずは、高いところからではございますが、公私にわたり御多忙の中、また足元のお悪い中、多数のご来賓をはじめ、関係各位のご臨席を賜りましたことに対し、衷心より厚くお礼申し上げます。
次に、卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。また、これまで皆さんを支え、この日を待ちわびておられたご家族の皆様のお喜びもひとしおと思います。心からお祝いを申し上げます。
さらに後援会、麗澤会をはじめ、多くの関係者の皆様方には、日頃から本学の教育・研究活動に対し、深いご理解とご支援を賜っておりますことにも、厚く御礼申し上げたいと思います。卒業生および修了生の皆さんがめでたく喜びの日を迎えられましたのも、数多くの恩人の方々のお陰でございますので、この機会をお借りし、ともに心より感謝の気持ちを捧げたいと思います。
さて、今年度は、大学院言語教育研究科博士後期課程5名と、国際経済研究科博士課程1名、合計6名に博士の学位を、言語教育研究科博士前期課程12名、国際経済研究科修士課程17名、合計29名に修士の学位を、外国語学部296名、国際経済学部264名、合計560名に学士の学位を、別科日本語研修課程54名に修了証書を授与いたしました。したがって、本年は、総数649名の卒業生と修了生を送り出すことになります。さらに、海外の提携校から留学されている特別聴講生も12名が修了されました。
本日、卒業および修了された学部生と大学院生合わせて595名の中には、94名の外国人留学生が含まれております。これに別科日本語研修課程修了生と特別聴講生を含めますと、出身は10の国と地域に及びます。自国と異なる言語、文化、習慣の壁を克服して見事学業を成就された留学生の皆さんのこれまでのご努力に対して深く敬意を表します。
また、本日は、学位請求論文を提出され合格となった1名の方に博士の学位を授与しました。この方は、本学の博士後期課程で学ばれた後、母国に帰って研究を続けて来られましたが、その努力が実り、本日の学位授与にいたりました。誠におめでとうございます。
本日、立派に学位を取得され、これから新しい世界へ輝かしく羽ばたいていかれる皆さんを祝福して、3つの餞の言葉を捧げたいと思います。
まず、第一は麗澤大学校歌でも謳われておりますように、「日々に孜孜、日に新たなり」です。これは中国の古典『尚書』の名言ですが、「日々に孜孜」とは「自ら彊(つと)めて息(や)まず」とも言われますように、日々、高い道徳・倫理の教えに従って物事に熱心に励むこと、「日に新たなり」とは、そのようにして日々に生まれ更わって新しくなり、前進することを意味します。在学中は、授業やゼミで使う教材が皆さんの教科書であったかもしれませんが、これからは社会が、そして世界が皆さんの新しい教科書となります。言葉をかえれば、大学の卒業をもって学びが終わるわけではなく、これからは、新たに実社会でいろいろな学びが始まります。そのような学びを積み重ねて、新しく生まれかわってゆくことで、素晴らしい人生が開けてくるわけです。
「日々に孜孜、日に新たなり」は、21世紀を迎えた知識基盤社会、生涯学習社会においても、いや、まさにそのような時代であるからこそ、ますますもって輝きを増す言葉です。江戸時代の儒学者、佐藤一斎は、私も座右の銘にしている言葉、つぎのような名言を残しております。「少(わか)くして学ばば、即ち壮にして為すこと有り」「壮にして学ばば、即ち老いて衰えず」「老いて学ばば、即ち死して朽ちず」と。つまり、若いうちに学んでおけば、壮年になって何かを成し遂げる一角の人物になる、壮年になって学ぶ人は、年をとっても衰えない、老いて学ぶ人は、たとえ肉体は滅んでも、名を残すであろうという意味です。まさにそのような学びの中にこそ、知識と道徳は一体であるという麗澤大学の建学の精神、「知徳一体」の理想を読み取ることができます。
幸い、麗澤大学には大学院もありますし、年間延べ4,500人以上の市民が学ぶ麗澤オープンカレッジ・イン・柏、ROCKもあります。また姉妹法人である財団法人モラロジー研究所では、社会人対象にいろいろな教育プログラムも充実しています。卒業してから、自分にまだ学力が足りない、実力をつけなおしたいと気づかれたら、若くして気づいた人も、壮にして気づいた人も、あるいは老にして気づいた人も、是非ともこの学園に学び直しに戻って来てください。いつでも皆さんを心から温かく歓迎いたします。
第二は、「盛時には驕らず、衰時には悲しまず」という麗澤大学の創立者廣池千九郎の言葉です。盛時とは運勢の盛んな時であり、衰時とは運勢の衰える時を言います。私たちの人生には、必ず運勢の盛んな時と運勢の衰える時があります。しかし、いかなる時も、感謝の心を忘れず、前向きな態度を持とうと創立者は私たちを励ましているわけです。成功したときや幸福なときは、それが多くの人々のお蔭であると感謝し、つねに謙虚な心を持ちたいものです。また苦しい時や悲しい時には、決して悲観的になることなく、これは運命を改善する好機と捉えて、感謝の心で受け止めたいものです。
言うまでもなく、皆さんがこれから巣立ってゆく社会は、いつも順風万帆というわけには参りません。まさに本日の学位授与式ならびに修了式のように、誰も予期せぬような春の嵐が吹き荒れることがあります。個人的な事を申し上げて恐縮ですが、私は本校に奉職して31年目になりますけれども、本日のような大荒れの天候での挙式は始めてでございます。そして、このように印象深い式は私が定年の日を迎えるまで、経験することがないかもしれません。しかし、物事にはすべて必ず光と影とがあります。影の部分だけを見ていると、悲観的になったり自暴自棄になったりすることもありますが、逆に光の部分に気づけば、希望が生まれ、勇気がわいてきます。事実、冷静に現実を見つめれば、このような悪天候であるからこそ、平成20年度の学位授与式および修了式は、教職員にとっても皆さんにとっても、決して忘れる事のない出来事として、生涯、私たちの記憶に刻まれることになったわけです。だとすれば、荒れていれば荒れているだけ記憶に残るわけですから、イギリスの劇作家シェイクスピアの戯曲『お気に召すまま』(As You Like It, Act 2, scene 7, 174)で“Blow, blow, thou winter wind”「吹け、吹け、汝冬の風よ」と詠われているように、私たちも“Blow , blow, thou spring wind”「吹け、吹け、汝春の嵐よ」とこの素晴らしい人生の瞬間を謳歌したいものです。またシェイクスピアは“Sweet are the uses of adversity.”「逆境が人に与える教訓ほどうるわしいものはない」とも述べています( As You Like It, Act 2, scene 1, 12)。さらに同じくイギリスのロマン派詩人バイロンも“Adversity is the first path to truth.” 「逆境は、真理へ到達する第一の道である」と詠っています(Don Juan, Canto XII, st. 50)。「盛時には驕らず、衰時には悲しまず」、このような逆境こそ、私たちの人生をより深く、真剣に味わうきっかけを与えてくれるものなのです。
第三は、「知のモラルの再構築―地球と人類の平和をめざして―」です。麗澤大学は、今年いよいよ開学50周年を迎えます。さらに麗澤大学の前身である道徳科学専攻塾まで遡りますと、翌年の平成22年には廣池学園創立75周年を迎えることになります。それに伴い、大学の新校舎、学生寮の建設を始め、さらなる麗澤教育の充実・発展を目指すべく、いろいろな周年記念行事を計画しておりますが、その記念行事を行うにあたり、麗澤ブランドを積極的に発信しようとして掲げたのが、この「知のモラルの再構築」というテーマです。麗澤大学の建学の精神、「知徳一体」を現代的に展開し、知とモラルではなく、知のモラルとは何かを、モラルハザードが蔓延している現代社会に問いかけてみたいと考えております。
まず、学術行事としましては、世界から著名な学者を招いてのモラル・サイエンス国際会議の開催、「道徳科学」のテキスト『大学生のための道徳教科書』の刊行、企業倫理のシンポジウムの開催、そして国際人口学会のセミナーとシンポジウムの開催を予定しています。特に皆さんに直接に関係があるものとしましては、平成21年10月3日に開催予定の規模を拡大したホームカミングデイがあります。さらに、平成21年度・22年度にかけて、麗澤卒業生を対象にした麗澤会ブロック別記念大会が開催されます。卒業生の皆様には、この場をお借りしまして、是非とも、ご理解とご協力、そして積極的な行事へのご参加をお願いしたいと思います。社会で元気に活躍しておられるであろう皆さんのお顔を是非拝見させてください。
最後に旧約聖書の『詩篇』の言葉を皆さんに贈りたいと思います。「いかに幸いなことでしょう。あなたによって勇気を出し 心に広い道を見ている人は。嘆きの谷を通るときも、そこを泉のわく所とするでしょう」(84:6・7)。この「勇気を出し 心に広い道を見ている人」とはイスラエルの民だけではなく、今日ご縁があってこの会場に参集された皆さんすべてにあてはまります。長い人生の中では思いがけない出来事があり、「嘆きの谷」と形容されるような苦しみや悲しみに遭遇するかもしれません。しかし私は、皆さんには、その嘆きの谷を喜びと感謝に満ちた「泉のわく所」に変える麗澤スピリッツがあることを信じて疑いません。皆様のご健康とますますのご活躍を切に祈り、ここに告辞と致します。
平成21年3月14日
麗澤大学学長 中山 理


