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平成23年度 入学式告辞

本日ここに、多数のご来賓の方々のご臨席のもと、平成23年度麗澤大学入学式を挙行できますことは、私どもの大きな喜びでございます。麗澤大学を代表いたしまして、新入生ならびに父母・保証人の方々に心よりお喜び申し上げます。

平成23年度の入学者は大学院生、学部生、学部編入学生、別科生、特別聴講生、研究生を合わせて総計770名で、この中には、世界の13の国と地域から148名の外国人留学生が含まれております。ただし、この度の東日本大震災の影響で、海外から来日する予定であった別科生全員と内外を含めた一部の新入生は、まことに残念ながら、本日の入学式に参加することができなくなりました。今回の震災では、甚大な被害や影響を蒙っている学生もおりまして、まことに心を痛めております。まずは、この場をお借りしまして、高いところからではございますが、本学の学生と関係者をも含め、被害に遭われた皆様に衷心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早く日常生活が取り戻せますよう、心よりお祈り申し上げたいと存じます。

さて、本日は、ここにご出席の皆さんのご入学を心から歓迎し、3つのことをお伝えしたいと思います。

まず第一は、麗澤大学という名称です。現在、本学はJリーグの柏レイソルとパートナーシップ提携を締結し、柏レイソルでの本学学生のインターンシップ(就業体験)活動がメディアで紹介されたり、柏レイソルの選手のユニフォームのパンツには「麗澤大学」のロゴが入ったりしておりますので、サッカーファンなら、麗澤という名称をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。ただし「麗澤」は、単なるロゴマークではありません。まさに名は体を表すと言うように、「大学における教育とはこうあるべきだ」という創立者の教育理念が込められた名称です。「麗澤」とは、中国の古典『易経』の「象に曰く。麗ける澤は兌びなり。君子以て朋友と講習す」からとったもので、「並んでいる沢が互いに潤し合う姿は喜ばしい。立派な人間になろうとする者が志を同じくする友と切磋琢磨する姿は素晴らしい」とあるように、水脈を同じくして「ともに並ぶ澤」を意味します。一方の澤が枯れた時には、もう一方の澤の流れが相手の澤を潤すように、麗澤でともに学ぶ者たちは、お互いの切磋琢磨を通して、常に相手を尊重し、互いに助け合いながら、自己の品性を高めることの大切さが謳われているのです。本学の創立者はこの古典の精神を敷衍し、「麗澤」の意味をさらに一歩進めまして、こう表現しました。麗澤とは「太陽天に懸かりて萬物を恵み潤し育つる義なり」と。すなわち、「天にある太陽のごとく、生きとし生けるものすべてを育てる」人であれというのが、創立者の目指した麗澤の人間像です。

第二は、本学では、どのような人材を育てようとしているのかということ、すなわち、本学のミッションは何か、ということです。本学の教育の目標は、グローバル化時代に対応できる国際的通用性と道徳・倫理性を備え、「持続可能な社会」の構築を目指し、人類社会に貢献し得る人材を育成することにあります。そのような「持続可能な社会」を実現するには、目先の利益や便利さだけを追い求めるのではなく、次世代の安心や幸福への配慮、そしてグローバルな共通善の視点が必要です。それは、自分だけ良ければ良いというのではなく、相手方にも良く、そして第三者にも良いという考え方に基づいています。もちろん、口で言うほど簡単なことではなく、これを実現するには、いろいろな人々の英知を結集しなければなりません。それには高いグローバル・リテラシー、すなわち地球市民としての対話能力、あるいは異文化間調整能力、そして専門性を備えた学識が必要です。ここに私たちが大学で学問をすることの意味があり、麗澤大学の教育理念の中核をなす「知徳一体」の意味があります。知徳一体とは、知識と道徳はひとつに調和すべきであり、大学や大学院での学問も、知識と道徳が車の両輪のように機能して、初めて社会に役立つものとなるという教育理念です。

本学は、この道徳・倫理の研究・教育を国際的な場で展開し、この分野では常に時代の最先端を行くことを目標にしております。たとえば、本学は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州にある名門私立大学のボストン大学と学術交流協定を結び、同大学の人格・社会的責任センター(Center for Character and Social Responsibility)と、本学の道徳科学教育センターとで、人格教育の研究および教材開発を行うための共同プロジェクトを2年前に立ち上げ、現在、積極的に推進しております。

なぜ、今、アメリカで人格教育かと申しますと、その目的のひとつは、アメリカ建国の父から受け継いできた伝統的価値を保持することにあります。それは社会的にも、政治的にも重要な意味を持ち、アメリカの民主主義を実際に機能させるためには、「有徳な」市民が投じる一票が必要であり、そのような徳がないと、民主政治は衆愚政治に堕落しかねないと考えられているからです。日本の高等教育で道徳教育や人格教育というと、「それは価値観の強制だ」とか、「それは小学校や中学校で行なうものだ」とか、どちらかと言えば、否定的な意見をしばしば耳にします。しかし現在のアメリカの高等教育では、21世紀における「知」の再構築を目指し、再び道徳・倫理教育が復活しつつあるのです。道徳や倫理を研究するセンターやそれに関連する大学での教育プログラムは、全米で優に100を超えており、この分野では、日本の高等教育はさらなる学問的研究と努力が要求されているのです。
また本学では、他大学に先駆けて、社会的責任に関する国際規格であるISO26000を採用し、教育・研究・社会貢献の3領域にわたる責任をより積極的に果たしていくことを宣言いたしました。現在、全学をあげてその実質化に取り組んでいるところです。ISOとはInternational Organization for Standardizationの略称で、この国際標準化機構が提示する同規格は、企業のみならず、大学、病院、政治団体、市民団体など、あらゆる種類の組織が活用することを期待して作成された国際規格です。本学は、大学組織として、国際的に通用する基準にもとづき、より計画的・体系的に、持続可能な社会の構築に貢献していくことを目指しているわけです。
新入生の皆さんには、専門の学問とともに、私たちの人生や社会を美化し善化する、グローバルな時代にふさわしい道徳・倫理思想をぜひとも本学で学んでほしいと思います。

第三に、本学の教育の成果について、ひとこと申し上げます。世間ではいわゆる偏差値を基準にして大学を評価しているようですが、ほんとうに重要なのは入口の偏差値評価ではなく、大学に入ってからどれだけ学生が伸びるか、どれだけ付加価値がつくか、つまり「偏差値」ではなく、「伸差値」だと思われます。そこで本学の学生の目覚ましい活躍を各学部から一つずつご紹介したいと思います。

まず、外国語学部では、国際交流・国際協力専攻の学生が積極的に推進しているRISOVP(麗澤大学国際学生海外ボランティア・プロジェクト)を通しての国際貢献があります。国際交流・国際協力専攻の学生有志がチームを組織し、財団法人麗澤海外開発協会(RODA)と共に、ラオスのタート・インハンという小学校に図書館を建設し、寄贈しました。そしてこの度、その貢献が高く評価され、特定非営利活動法人・国際協力NGO・IV-JAPANから感謝状を授与されました。世間では、日本人学生は「内向き志向」と言われる中で、このような本学学生の国際的活動はじつに頼もしい限りです。

また経済学部では、昨年の12月4日、日本銀行主催の「第6回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」決勝大会において、麗澤大学チームが最優秀賞を受賞し、さらに、日銀への優れた提言に与えられる「特別賞」も同時に受賞しました。この大会は、大学生たちが経済・金融分野についての論文とプレゼンテーションを行うコンテストで、全国の大学から104チームが参加しましたが、麗澤大学はみごとその頂点に輝いたわけです。諸君の先輩の中には、このように立派に活躍している学生がたくさんおりますので、皆さんも是非、いろいろなことに果敢にチャレンジしていただきたいと思います。

最後に、一昨年度は、本学開学50周年を、昨年の平成22年度には廣池学園創立75周年を迎え、「森との共生」をコンセプトにした大学の新校舎「あすなろ」が完成しました。新入生の皆さんは、この新しい校舎で、キャンパス・ライフを楽しんでいただくことになります。それに伴い校舎「かえで」も改修し、レンガとウッドデッキで構成されたテラスつきのステューデント・ラウンジを新たに開設いたしました。本学のキャンパスのコンセプトは「仁、草木に及ぶ」で、キャンパス内の樹木も、人間と同じように、私たちの家族として大切に扱おうという環境理念を掲げております。快適な自然・学習環境を維持するため、新入生の皆さんには、キャンパスの自然環境の保護と美化に是非とも協力いただきますようお願い申し上げます。今後は、さらにステューデント・プラザと新学生寮の建設を始め、さらなる麗澤教育の充実・発展を目指すべく、いろいろな周年記念事業を進めております。

それでは、入学される皆さんとともにイノベイティブなキャンパス・ライフをともに築いていきましょう。皆さんのご健康とご健闘を祈念し、学長告辞といたします。

平成23年4月2日
麗澤大学学長 中山  理