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16年度 入学式告辞

麗澤大学 第4代学長 梅田博之

(一)あいさつ

本日ここに、孔子第七十七代裔孫 孔徳成先生をお迎えし、地元柏市の本多市長をはじめ多くのご来賓の方々や関係各位のご臨席をいただきまして、本学の平成十六年度入学式を盛大に挙行できま すことは、私の心からの慶びとするところでございます。衷心より厚く御礼を申し上げます。
また、ご家族、保護者の皆様には、ご子弟の勉学の成果が 見事に実り、ここにめでたく、入学式を迎えられまして、さぞかしお喜びのことと、心からお祝いを申し上げます。 今年は、大学院生、学部生、別科生、研究生、特別聴講生を合わせて八百三十五名の新入生を迎えることができました。改めて、麗澤大学に入学された新入生の 皆さんに、大学を代表して心からお祝いと歓迎の意を表したいと思います。
新入生の中には、海外の十七の国と地域からの留学生が二百十四名入学さ れました。在学中の外国人留学生も含めますと、その総数は二十の国・地域から五百二名となります。全学生数三千百九十五名の約十五、七%にあたります。海 外の各地から皆さんをお迎えすることができましたことは、大きな歓びであり、我々教職員一同は在学生とともに、心から温かく歓迎いたします。

(二)建学の理念と麗澤の意味

本学は、創立以来一貫して、「知徳一体」の教育理念のもと、高い専門性と品性、道徳性を具え、国際社会 に貢献できる人材の育成をめざしてまいりました。創立者の法学博士 廣池千九郎は、本学の前身である「道徳科学専攻塾」を昭和十年にこの地に開学いたしました。創立者は、「知識を真に生かすものは高い人間性・道徳性であ る」という考えから、人格陶冶を根幹としてその上で徹底した語学教育と実務教育を行うことによって、「世界で真に信頼と尊敬を受ける国際人の育成」をめざ したのであります。
また、本学の「麗澤」という名前は、中国の古典である『易経』に由来するものであります。「水脈を同じくする、二つの連なっ た沢」は、いつでも互いに潤しあって枯れることがなく、その周囲にすばらしい自然環境が形成される。そこから、「優れた師のもとで、互いに友人同士が補い あい、切磋琢磨することによって、人格の完成をめざし、社会に貢献できる人を育成する」という意味を込めて、麗澤という名前が付けられております。
麗澤大学の学生になった皆さんは、この麗澤の意味をよく理解されて、よき師の感化を受け、良き友と切磋琢磨して、社会に有用な人物になっていただきたいと、心から念願いたします。

(三)大学生としての自覚

さて、皆さんは今日から大学生です。自立した一個の人間として、考え、行動してください。高等学校の時 とは違った勉学の態度が必要です。高校までは、段階別の教科書があって、学習のレベルと学ぶべき知識が決まっており、その範囲の中のものを勉強し理解すれ ばよかったのですが、今日からは自ら問題意識を持って、自分でいろいろ調べたり、参考文献にあたったりして、自律的に学習し理解しようと努めなければなり ません。
大学では、学問を学びますが、これは先人たちの叡智と努力によって築かれた知識の体系と物事を考える方法を学ぶということです。特に、物事をその根元から徹底的に考える習慣を身に付けることが肝要で、柔軟で且つ論理的な考え方を養う必要があります。

(四)国際理解と語学教育・情報教育

今日の世界は、経済・社会・文化等の様々な面で世界化が進み、国際的な依存関係はますます深まっていま す。環境問題、エネルギー問題、難民問題等、どれをとっても地球規模の問題で、その解決にはグローバルな視点が不可欠です。それと同時に、情報科学技術の 進歩も現代社会に大きな変革をもたらし、時間的・空間的な制約を崩して世界化はますます進みました。
一方、地域社会も、国際化が進み、いろいろな国や地域から来た人々がともに暮らす多言語・多文化共生社会に変わりつつあります。
世 界化・国際化・情報化が進む二十一世紀に生きていくためには、それぞれの専門分野の知識・技能を高める他に、まずグローバルな社会で共通語となった英語の 運用能力を高めることが必要ですが、それと同時に多言語・多文化共生社会で生きるために、広い視野を持ち、自分とは異なる文化を理解して「違い」を認め合 い、お互いの歴史的伝統や多元的な価値観を尊重し合うことによって、ひとつの物の見方や考え方にとらわれない豊かな国際性を身につける必要があります。
国 際理解に際して、特に必要なものは言語です。言語は、コミュニケーションの道具であるだけでなく、外界に対する認識と密接な関係があり、人間は外界の事象 を、言葉を介して把握しています。それ故、言語を学ぶことはその言語を話す民族の考え方や文化を理解することに通じます。ですから、世界共通語としての英 語以外にもアジアの言葉も含め、少なくとももう一、二ヶ国語は学んでほしいものです。
また、情報技術の進展に対応するために、本学では最新のコ ンピュータシステムを整備し、文科系では国内でトップクラスという高い評価を受けている情報教育を実施しています。在学中に、ぜひ、ネットワークの運用・ 管理やプログラミング等、高いIT活用能力をしっかり身につけていただきたいと思います。

(五)価値観の多様性の保持

他方、今日の科学技術・情報技術の発達と世界化の進展は、価値観の単一化、均質化をもたらし、英語など の大言語の勢力を拡大させる一方で、話し手の少ない言語は政治的、経済的、社会的な理由から、生き残ることができない状況に追い込まれるという事態を招い ています。たとえば、アメリカ、アジア、オセアニア等々の先住民の中には、自らの言葉や文化を維持することが難しくなっている例が多く見られます。日本固 有の土着言語であるアイヌ語も話し手が亡くなりつつあり危機に瀕した状況にあります。近年、アイヌの言語文化復興の動きがあるのは歓迎すべきことでありま す。
ひとつの言語が消滅するということはどんなことを意味するのでしょうか。文化の根底をなす言語が失われるということは、人類の共通財産であ る多様な文化そのものが失われることを意味します。言語は、それぞれの民族・地域の歴史や生活、自然との関わり、世界観などの結晶です。だから、ひとつの 言語が失われていくたびに、そこに存在していた固有の世界観、認知体系とそこに潜む人々の叡智と感性が、話し手の伝統、文化とともに消滅していくのであり ます。こういう現実に対して、本学にも、中国やタイの山地、その他で先住民の言語や文化を調査・研究している先生方がおられますが、先住民が住む原生林は 多種多様な動植物を宿す力を持っており、人間でさえも自然をなんら破壊することなく、そのなかで生きていけるのだそうです。もし、開発が進み、彼らが森を 離れ、言語文化を捨てて生活するようになれば、彼らの自然観、人生観は失われ、彼らが持っていた人間と自然との共生の智恵も失われてしまうでしょう。
消滅の危機に瀕した言語・文化を調査し維持するということは、価値観の多様性を保持するということであり、万物を恵み潤し育てる麗澤の心に通じるものがあ ると思います。言語文化の多様性の維持は、その言語の話し手だけの問題ではなく、私たちが人間として存在する上で、非常に重要な問題なのであります。開発 が進み、世界化の進む流れの中で、言語文化の多様性を保持することの大切さも分かっていただきたいと思います。

(六)大学生活に期待するもの

さて、皆さんが今日からおくる四年間の学生生活は、長い人生の中でも、特に重要で且つ楽しい時期だと思います。
自分がやりたいことを見極め、どんな分野でどのように社会に貢献するかを決め、そのための基礎となる知識や方法、技術を修得する重要な時期です。
他方、この時期は、高校時代より行動の範囲が広がり、交友関係も多様になって楽しい思い出ができる時期でもあります。今後、社会に出てさまざまな人間関係 を結んでいく中で、その原点ともなるべき温かく永続的な人間関係を構築する時期でもあります。大学時代によき師、よき友に恵まれれば、その後の人生に幅と 厚みが加わるに違いありません。生涯、心を許し合える人間関係を築いていただきたいと思います。
大学生活でもう一つ大切なことは、広く教養を身 に付け、社会性を養い、社会的な問題に対して自分のはっきりした意見をもてるようにすることだと思います。わたしたちは社会の中で生き、経験を積み、知識 や知恵を獲得する過程で、物の見方、考え方、価値観などを身に付けていきます。あらゆることにいつも知的好奇心と探究心を持って接すれば、それだけ深くて 適格な見方、考え方ができるようになります。
礼儀・作法を身に付けることも社会に生きる人間として大切な教養のひとつです。幸い、本学の学生は学外の方々から礼儀正しいという評価を受けていますが、礼儀・作法の大切さも充分に理解し、実践してください。
もうひとつ忘れてはいけないことは、今後の人生での活動には健康であることが肝要であるということです。規則正しい生活を心がけ、夜更かしをせず、適度の運動を行って、健全な健康状態を維持するようにしてください。

(七)大学院新入生の皆さんへ

大学院に進学される方々にも、ひとこと申し上げます。
大学院では、学問の基礎をより広く深く学び、さらに高度な研究成果についても学習すると同時に、いつも旺盛な問題意識を持ち、自分の研究課題を見つけ、自律的に研究を進めていかなければなりません。
皆さんの大学院での勉強と研究の成果を期待いたします。

(八)留学生の皆さんへ

ここで、留学生の皆さんに、ひとこと申し上げます。
皆さんが日本に留学に来られた目的は様々 でしょうが、しっかりとその目的を達成されることを心から願っております。特に、留学の基礎となる日本語の学習については、日本語教育センターで先生方が 皆さんの日本語のレベルと母語を考慮した、系統的な指導をしてくださいますので、まず日本語をしっかり身に付けてください。言葉ができるようになると、日 本人と日本文化に対する理解度も格段と高まります。また、一人でも多くの友人をつくり、日本と母国をつなぐ人間関係を築いてください。
一方、日本人の新入生の皆さんには、留学生の方々を温かく迎えてくださるようお願いしたいと思います。また、留学生と仲良くすることによって、自分と異なる文化や考え方に接することができますから学ぶことも多いはずです。

(九)おわりに

最後に申し上げます。
皆さんが、今後の人生で出会う、いろいろな困難な問題に対して解決の方法 を与えてくれるのは、皆さんが大学生の時に培った「学問的知識」と「思考力」であり、「教養」と「品性」であります。まさに、大学時代に、皆さんの長い人 生の基礎が築かれるのだということをよく認識して、今日からの四年間をおくっていただきたいと思います。
自立した人間として高い志を持ち、新しい時代の創造のために力を尽くし、同時に他人の立場に立って考えることのできる寛容さを具えた、高度の専門性と品性を持った国際人を目指して、充実した大学生活をおくることを希望して、告辞といたします。