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18年度 入学式告辞

麗澤大学 第4代学長 梅田博之

(一)あいさつ

本日ここに、公私まことにご多用の中を、本多晃柏市長をはじめ多くのご来賓の方々や関係各位のご臨席をいただきまして、本学の平成18年度入学式を盛大に挙行できますことは、私の心からの慶びとするところでございます。衷心より厚く御礼を申し上げます。
また、ご家族、保護者の皆様には、ご子弟の勉学の成果が見事に実り、ここにめでたく、入学式を迎えられまして、さぞかしお喜びのことと、心からお祝いを申し上げます。
今年は、大学院生、学部生、学部編入生、別科生、研究生、特別聴講生、合わせて832名の新入生を迎えることができました。改めて、麗澤大学に入学された皆さんに、大学を代表して心からお祝いと歓迎の意を表したいと思います。
新入生の中には、海外の20の国と地域からの留学生が251名入学されました。在学中の外国人留学生も含めますと、その総数は21の国・地域から581名 となります。全学生数2,985名の約19.5%にあたります。海外の各地から皆さんをお迎えすることができましたことは、大きな歓びであり、我々教職員 一同は在学生とともに、心から温かく歓迎いたします。

(二)建学の理念と麗澤の意味

本学は、創立以来一貫して、高い人間性、品性、道徳性を具え、国際社会に貢献できる人材の育成をめざしてまいりました。創立者の法学博士 廣池千九郎は、本学の前身である「道徳科学専攻塾」を昭和10年(1935年)にこの地に開学いたしました。
創立者の考えは、「知識を真に生かすものは高い人間性・道徳性である」という「知徳一体」の教育理念と、「道徳と経済は一体である」という「道経一体」の 考えのもとに、人格陶冶を根幹としてその上で徹底した語学教育と実務教育を行うことによって、「世界で真に信頼と尊敬を受ける国際人の育成」をめざしたの であります。
また、本学の「麗澤」という名前は、中国の古典である『易経』に由来するものであります。その意味は、「水脈を同じくする、二つ の連なった沢が互いに潤し合って枯れることがない」ということで、そこから、「優れた師のもとで、互いに友人同士が補いあい、切磋琢磨する(つまり、仲間 同士互いに励まし合って学徳を磨く)ことによって、人格の完成をめざす。そして社会に貢献できる人となる」という意味を込めて、麗澤という名前が付けられ ております。
麗澤大学の学生になった皆さんは、この麗澤の意味をよく理解されて、よき師の感化を受け、良き友と切磋琢磨して、社会に有用な人物になっていただきたいと、心から念願いたします。

(三)大学生としての自覚

さて、皆さんは今日から大学生です。高等学校の時とは違った勉学の態度が求められます。高校までは、段 階ごとに教科書があって、学習のレベルと学ぶべき知識が決まっており、その範囲の中のものを勉強し理解すればよかったのですが、今日からは必要なことを知 らなかった場合、「まだ教わっていない」とか「範囲に入っていないから知らない」といってすますわけにはいきません。自分でいろいろ調べたり、参考文献を 読んだりして、自律的にそれを学習し理解しようと努めなければなりません。
大学で学ぶ学問というものは、先人たちの叡智と努力によって築かれ た知識の体系と物事を考える方法を学ぶということです。特に、物事をその根元から徹底的に考える習慣を身に付けることが肝要で、根拠のない思い込みをせ ず、いろいろな見方ができる、柔軟で且つ論理的な考え方、知的探究心を養う必要があります。

(四)国際理解と語学教育・情報教育

今日の世界は、経済・社会・文化等の様々な面で世界化が進み、国際的な依存関係はますます深まっていま す。環境問題、エネルギー問題、難民問題等、どれをとっても地球規模の問題で、その解決にはグローバルな視点が不可欠です。それと同時に、情報技術の進歩 も現代社会に大きな変革をもたらし、時間的・空間的な制約を崩して世界化はますます進みました。
一方、地域社会も以前のような単一言語社会・均一的文化社会と違い、国際化が進み、いろいろな国や地域から来た人々がともに暮らす多言語・多文化共生社会に変わりつつあります。
世界化・国際化・情報化が進む21世紀に生きていくためには、それぞれの専門分野の知識・技能を高める他に、まずグローバルな社会で共通語となった英語の 運用能力を高めることが必要ですが、それと同時に多言語・多文化共生社会で生きるために、広い視野を持ち、自分とは異なる文化を理解して「違い」を認め合 い、お互いの歴史的伝統や多元的な価値観を尊重し合うことが必要です。先にも述べましたように、本学には21の国や地域から581名の留学生が来てくだ さっていますが、この多言語多文化共生の環境は本学の貴重な特質のひとつだと思います。異なる言語・文化の担い手たちが、それぞれの固有性を保ちながら、 その違いを認め合って、キャンパスの中で交流を深め、切磋琢磨することによって、ひとつの物の見方や考え方にとらわれない国際性豊かな人間に育っていただ きたいと思います。
国際理解に際して、特に必要なものは言語です。言語は、コミュニケーションの道具ですが、人間の外界に対する認識と密接な関 係があり、人間は外界の事象を、言葉を介して把握しています。それ故、言語を学ぶことはその言語を話す民族の考え方や文化を理解することに通じます。です から、世界共通語としての英語以外にもアジアの言葉も含め、少なくとももう一、二ヶ国語は学んでほしいものです。
情報技術の進歩にともない、 急速に発達したインターネットは、教育・研究の場においても、また社会に出てからの実務に従事する場合にも、一般の家庭生活でも不可欠のツールとなりまし た。本学ではコンピュータシステムを整備し、文科系では国内でトップクラスという高い評価を受けている情報教育を実施しています。本学では3年に一度、全 てのコンピュータを更新することにしており、本年度はその入れ替えの年度に当りますから、みなさんは最新のコンピュータを使って勉強することになります。 在学中に、ぜひ、ネットワークの運用・管理やプログラミング等、高いIT活用能力をしっかり身につけていただきたいと思います。

(五)高い専門性と道徳性

さて、学問や知識を学び、その知識の活用法を理解しても、「高い道徳性」を具えていなければ、人間のために役立つものとはなりません。
本学は、先に述べましたように、創立以来、教育理念として「知徳一体の人材の養成」を目標として来ましたが、今日ほどその必要性が求められている時はない と思います。昨今の日本社会の政治的・経済的混乱は深刻なものがありますが、皆さんはぜひとも何のために学問をするのかということをよく考えて、知識を修 得するとともに自己の品性を磨き、「高い専門性と品性を兼ね備えた人間」として社会に貢献できるように努力しなければなりません。

(六)大学生活に期待するもの

さて、皆さんが今日からおくる学生生活は、長い人生の中でも、特に重要で且つ楽しい時期だと思います。
自分がやりたいことを見極め、どんな分野でどのように社会に貢献するかを決め、そのための専門的な知識や方法、技術を修得する重要な時期です。一生懸命勉強してください。
他方、この時期は、高校時代より行動の範囲が広がり、交友関係も多様になって楽しい思い出ができる時期でもあります。今後、社会に出てさまざまな人間関係 を結んでいく中で、その原点ともなるべき温かく永続的な人間関係を構築する時期でもあります。大学時代によき師、よき友に恵まれれば、その後の人生に幅と 厚みが加わるに違いありません。先生とは教室での授業以外のいろいろな場でも、親しく教えを受けるようにしてください。友人関係もクラスやゼミ、課外活 動、その他さまざまな場でのものがありますが、生涯に亘って心を許し合える親友ができたらすばらしいことだと思います。

(七)教養の大切さ

大学生活でもう一つ大切なことは、広く教養を身に付け、社会性を養い、グローバルな視野に立って、多元的な視点で考え、現実の課題や未知の事態に的確に対応していく力を涵養することです。
自分の国の伝統や文化、歴史等に対する理解を深めるとともに、異なる国や地域の伝統や文化を理解し、互いに尊重し合うことのできる資質・態度や、世界の人と的確に意思疎通できるコミュニケーション能力も教養を形成する要素のひとつであります。
一方、国語は、日常生活を営むための伝達手段であるだけでなく、論理的思考や表現力の基礎であり、すべての知的活動の基盤となるものですから、国語の力を高めることは非常に重要です。
わたしたちは、先人の叡智に触れ、人生の生き方を学ぶために和漢洋のいろいろな古典に親しむことも必要です。
また、自然の摂理を学び、物の成り立ちを理解し、論理的に対処する能力を育んで、企業経営や科学技術に関する倫理的な問題や環境問題などについての正確な理解力や判断力を身につけることも教養の一つであります。
ボランティア活動を通じて身をもって社会貢献を体験し、芸術に親しむことによって美意識と感性を磨き、スポーツを通じて心身を鍛え、フェアプレーの精神を 養うことも、教養を身につける重要な課題と考えられます。課外活動は、みなさんにこれらの教養を磨く場を提供してくれるものと思います。
礼儀・作法を身に付けることも社会に生きる人間として大切な教養のひとつです。幸い、本学の学生は学外の方々からも明るく、さわやかで、礼儀正しいという評価を受けていますが、礼儀・作法の大切さも充分に理解し、実践してください。
現代の社会は「知識基盤社会」(knowledge-based society)だと言われています。これは、政治、経済、文化などの、社会の基礎的な領域で、新しい知識・情報・技術が非常に重要になるという意味で す。その結果、グローバル化と技術革新が進み、従来の考え方では律することができない事態が生じて、幅広い知識と柔軟な思考力による対応が求められるよう になるでしょう。そういう社会にあっては、広く深い教養と高い倫理性を持ち、精神(文化)面と物質(経済)面の調和を保って、時代の変化に的確に対応し社 会を支えていく資質を持った人材が必要です。
また、教養を深める過程で、品性、品格というような人格的特性も身についてきます。さらに、教養 は、個人の人格形成にとって重要であるばかりではありません。社会に属する一人一人が広く深い教養を持つことは、結局、社会全体の教養度を高め、「品格あ る社会」がつくられることになります。広く深い教養を身につける必要性が益々求められています。

(八)「食育」の重要性

もう一つ忘れてはいけないことは、みなさんの今後の人生での活動には健康であることが肝要だということです。今日から始まる大学生活では、規則正しい生活を心がけ、適度の運動を行って、健全な健康状態を維持するようにしてください。
昨年六月に『食育基本法』が成立・施行されました。国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるようにするため、「食育」を推 進しようというのです。厚生労働省によれば、「食育」は生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものであり、健全な食生活を実践す る人間を育てることです。つまり、私たちの心も身体も「食」の上に成り立っているから、健全な食生活が大切だというのであります。一日三度、朝昼晩に、栄 養バランスのとれた適度の量の食事を摂ることが健康を維持するために必要ですが、「国民健康・栄養調査」(厚生労働省、平成15年)によると、朝食の欠食 率、つまり朝ごはんを食べない人の割合が男女ともに二〇歳代が最も多くなっています。残念ながら、本学でも朝食を摂らずに登校する学生が多いようです。そ れで後援会のご支援を頂いて、今年度も学生食堂「柊」において朝食代金の割引をして朝食を食べる習慣をつけるキャンペーンをすることにいたしました。新入 生のみなさんにもぜひ朝ごはんをきちんと食べて登校することをお勧めいたします。

(九)留学生の皆さんへ

ここで、本学に学ぶ留学生の皆さんに、ひとこと申し上げます。
皆さんが日本に留学に来られ た目的は様々でしょうが、しっかりとその目的を達成されることを心から願っております。特に、留学の基礎となる日本語の学習については、日本語教育セン ターで先生方が皆さんの日本語能力のレベルと母語を考慮した系統的な指導をしてくださいますので、まず日本語をしっかり身に付けてください。言葉ができる ようになると、日本人と日本文化に対する理解度も格段と高まります。また、一人でも多くの友人をつくり、日本と母国をつなぐ人間関係を築いてください。
一方、日本人の新入生の皆さんには、留学生の方々を温かく迎えてくださるようお願いしたいと思います。また、留学生と仲良くすることによって、自分と異な る文化や考え方に接することができますから学ぶことも多いはずです。私たち教職員は、新入生諸君もふくめて、謙虚な気持ちで留学生から学ぶという姿勢を忘 れないでいきたいと思います。

(十)大学院新入生の皆さんへ

大学院に入学される方々にも、ひとこと申し上げます。今年度から新たに開設された言語教育研究科英語教育専攻(修士課程)の10名を含む、64名の皆さんの入学を心からお祝いいたします。
修士課程の皆さんは、学問の基礎をより広く深く学び、さらに高度な研究成果についても学習すると同時に、いつも旺盛な問題意識を持ち、自分の研究課題を見 つけ、これに積極的に挑戦していかなければなりません。博士課程入学の皆さんはさらに高度な研究を行い、先行研究を網羅的に参照した上で独創性を発揮した 論文を仕上げて頂きたいと思います。
皆さんの大学院での勉強と研究の成果を期待いたします。

(十一)おわりに

最後に申し上げます。
皆さんが、今後の人生で出会う、いろいろな困難な問題に対して解決の 方法を与えてくれるのは、皆さんが大学生の時に培った「学問的知識」と「思考力」であり、「教養」と「道徳性」であります。まさに、大学時代に、皆さんの 長い人生の基礎が築かれるのだということをよく認識して、今日からの四年間をおくっていただきたいと思います。
自立した人間として高い志を持ち、新しい時代の創造のために力を尽くし、同時に他人の立場に立って考えることのできる寛容さを具えた、高度の専門性と道徳性を持った国際人を目指して、充実した大学生活をおくることを希望して、告辞といたします。