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平成18年度 卒業式 告辞

麗澤大学 第4代学長 梅田博之

(一)はじめに

本日ここに、多数のご来賓をはじめ関係各位のご臨席を賜り、学位記授与式ならびに別科日本語研修課程修了式を挙行できますことは、私の大きな喜びでございます。衷心より厚く御礼申し上げます。
ご家族、保護者の皆様には、今まで温かく支えてこられたご子弟の勉学の成果が見事に実り、ここに晴れて、今日の日を迎えられまして、さぞかしお慶びのことと、心からお祝いを申し上げます。
また、後援会、麗澤会をはじめ多くの関係者の皆様方には、日頃から本学の教育活動に深いご理解をいただき、ご支援、ご協力を賜りましたことに対しまして、厚く御礼申し上げます。
さて、今年度は、外国語学部三二七名、国際経済学部二九八名、合計六二五名に学士の学位を、大学院では、言語教育研究科博士後期課程修了の一名と、国際経 済研究科博士課程修了の一名に博士の学位を、言語教育研究科博士前期課程一五名、国際経済研究科修士課程一七名、合計三二名に修士の学位を、別科日本語研 修課程は五六名に修了証書を授与いたしました。したがって、本年は、総数七一五名の卒業生を送り出すことになります。さらに、海外の提携校から留学してき ている特別聴講生も十名が修了となりました。
卒業生・修了生の皆さんには、教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。皆さんが本日、晴れの 日を迎えることができましたのは、皆さん自身の努力も勿論のことですが、背後にあって皆さんを支えてこられたご家族、その他の方々のおかげであります。こ れら多くの恩人に対する感謝の心を忘れてはなりません。
本学は、創立以来、「知徳一体」という教育理念のもとに、真の人間尊重、品性の向上を目 指す教育と、少人数教育を基盤とする厳格な学力評価のもとに専門教育を行い、高い道徳性と専門性を兼ね備えた人材の育成を目指してまいりました。卒業生の 皆さんが、我々のこの期待に立派に応えてくれたことに対し、祝意と感謝の意を表する次第です。

(二)今日の世界

皆さんが、これから新しい一歩を踏み出す世界は、様々な課題を抱えています。独裁と人権抑圧のある国、 貧困や飢餓から脱出できない国が存在し、民族的対立、宗教的対立もからんで、紛争が起こるというように、多くの難問を抱えています。これらの課題の解決に は、皆さんのような若い力が必要であります。皆さんは、この世界を真に豊かで平和なものとするために力を尽くすことが期待されています。
そのためには、広い視野を持ち、自分と異なる文化を持った人々とともに生きていく資質や能力を持つことが必要です。「違い」を認め合い、互いの歴史的伝統や多元的な価値観を尊重しながら、ともに生きるという互敬の精神を身につけることが必要であると思います。

(三)環境問題について

【環境問題と環境資源勘定】
さて、私たちが生きている現代社会は、環境問題という大きな課題を抱えています。私たちが健康で元気に暮らすためには、身近な環境や地球の環境も健全でなければなりません。環境問題に対して私たちはきちんと考え、対処しなければなりません。
私たちの生活は環境の中での物質やエネルギーの循環を基盤として営まれています。人間は、自然界から食糧や石油などのエネルギー等の資源を採取してそれを 消費し、ゴミなどの不用物を自然界に排出してきました。しかし、人口・社会経済規模の拡大に伴い採取と排出の量が飛躍的に増大する中で、資源採取による資 源の枯渇や生物種の絶滅、不用物排出による汚染物質の蓄積といった現象が生じてきました。今日の環境問題は、資源採取と不用物排出の量と質が自然の循環の 容量を超えてしまったため生じたものと言うことができます。
それゆえ、私たちは現在の生活行動様式を環境の観点から見直す必要があります。地球 環境に大きな影響を与えている大量消費、大量廃棄型の消費及び生産活動を見直し、環境負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築するためには、環境と経済 活動との相互作用を体系的に把握し、環境と経済を統合する政策の指標が必要になります。これまでも政府は、環境基本計画の策定過程で指標を検討してきまし たが、現在は「第三次環境基本計画における指標の活用等に係る検討委員会」を組織し、新たな検討を行っています。本学の小野宏哉教授は委員としてこれに参 画され、ご専門の環境資源勘定の開発・整備等の環境研究を基礎に、国の施策検討に参加しておられますが、同時に、柏市清掃工場建設、かしわ環境ステーショ ン運営等の地域社会の環境行政にも携わっておられ、学術・教育の面のみならず社会貢献の面でもたいへん重要な役割を果たしておられます。
なお、現在のライフスタイルを見直し環境への負荷を減らしていくことは、私たち、市民の側の責任でもあり、私たちは「環境にやさしい」生活様式や行動様式を新しい生活文化として定着させていかなければなりません。
「生物多様性」保全の問題
環境問題と関連して「生物多様性」保全の問題があります。この問題については、本学の犬飼孝夫教授が取り組んでおられますが、「生物多様性」とは、第一に 多様な生物種が存在すること、第二に一つの種(species)のなかで遺伝子レベルの多様性が存在すること、そして第三にさまざまな環境に応じて異なる 生物種からなる多様な生態系が存在するということです。
なぜ「生物多様性」の保全が必要なのでしょうか。たとえば、今日の農業で、同一の遺伝子 からなる作物だけを栽培していると、冷害や害虫等の害を一律的に受けてしまいます。急速に変化する地球環境に対応するための生物資源確保の観点から、多様 な生物種、多様な遺伝子、多様な生態系の存在が必要なのであります。このように「生物多様性」は人間にとって大切なものですが、近年、開発の進展、地球温 暖化による気候の変動、外来生物の持込による生態系の破壊、生物資源の過剰利用、有害化学物質や化学肥料の過剰使用等による環境汚染など、さまざまな理由 によりこれが破壊され、減少しつつあることは残念なことであります。これらの理由は、いずれも企業活動と密接な関係があり、生物多様性に配慮しその保全に 取り組むことは、環境倫理や企業倫理の側面でのみ重要なのではなく、企業の存続にかかわる問題であります。卒業後、企業に入って企業側に立つ場合でも、あ るいは個人として健康的な暮らしを希求する立場からも、「生物多様性」は重大な問題であることを認識してもらいたいと思います。

(四)難民問題と国際協力活動

国際社会が抱える大きな課題のひとつに難民問題があります。
タイ北部の少数民族救援のために 献身的に活動しておられる教授が本学におられます。竹原茂教授です。竹原教授は、日本への留学中に起こった母国ラオスの政変によって自ら難民生活を余儀な くされ、日本に帰化されたラオス系日本人です。ご自身の経験から「難民が難民を助ける」というコンセプトで、アジアその他へ直接足を運んで救援活動をして 来られました。
竹原教授の国際協力や援助活動には、常に「教育的である」ことが特徴です。その最たるものがタイ北部の少数民族の救援を目的に設 立されたメーコック・ファームでの活動です。メーコック・ファームのことは、毎年、竹原教授が企画するスタディ・ツアーに参加した諸君は知っていると思い ますが、メーコック・ファームでの活動の目的は、難民の子供たちが将来、貧困から麻薬栽培や人身売買によって生活を立てることのないように教育することで す。また、スタディ・ツアーに参加する日本の若者には、ファームで生活する子供たちと知り合うことによって、具体的に難民問題に触れ、今後の日本や世界を 見る視点や問題意識を持つことが期待されます。
竹原教授の活動は、「真の国際協力とは、物や金だけの援助ではなく、教育と実践を通して相手国の 人々の苦しみを理解し、互いに影響を与えあう活動を永続させることにある」という信念に基づいており、困窮した人への具体的な援助活動、日本人の啓蒙活 動、アジア諸国への理解促進活動等の、様々な活動の目的は、すべて「地球市民を育成する」ということに集約されます。

(五)「知識基盤社会」の時代に生きる

さて、皆さんが社会に出て仕事をするようになると、さまざまな困難な問題に出会うことがあると思いま す。その際、どのように対処したらよいか判断に迷った時は、物事の根本に立ち帰って考えることが大切です。そういうときに頼るべきものが学問です。学問 は、実際の社会のいろいろな具体的な事柄に対する基本的な考え方を示してくれ、問題解決へのヒントを与えてくれます。
また、皆さんがこれから出 て行く社会は常に動いており、変化するものであります。そして常に新しい問題が提起され、それに対する対応が求められます。一方、学問研究の進歩発展もめ ざましいものがあります。現代社会は、知識や情報が社会を動かす原動力となるような、いわゆる「知識基盤社会」(knowledge-based society)だと言われています。「知識基盤社会」に生きる皆さんは、社会に出た後も、生涯を通じて、学問や技術の新しい展開について学ぶ必要や、社 会が新たに提起した問題の解決策を研究する必要が出て来るに違いありません。
卒業は決して勉学の終わりを意味するものではありません。今後も、必要に応じて、いつでも大学を訪ねて来てください。麗澤大学は、皆さんの必要に応じて新しい学問・知識を提供する充電の場として、皆さんの生涯学習を支えていきます。

(六)大学院修了者に

次に、大学院修士課程および博士前期課程を修了した皆さんに申し上げます。
このたび、所定の課程を修了され修士の学位を取得されましたことを心からお祝いいたします。
修士課程ではそれぞれの専門分野の知識を深く学び、その分野の専門家になるために、自ら自律的に研究を行い、修士論文を完成されました。この自律的な研究と、そこから得た自信が、今後の皆さんの仕事の支えとなることでしょう。
今日晴れて修士の学位を取得された皆さんが、それぞれの専門分野で「知識基盤社会」形成の担い手として活躍されることを期待いたします。
大学院言語教育研究科博士後期課程を修了し文学博士の学位を得られた陳君慧さん、国際経済研究科博士課程を修了し経済学博士の学位を得られた佐藤純子さ ん、おめでとうございます。陳君慧さんは、「日本語における動詞の中止形を含んだ複合後置詞の形成窶博リ用と文法化の相互作用」と題する学位論文で、ニオイ テ、ニヨッテなどの複合後置詞の形成過程を、コーパスを利用して、文法化と漢文訓読語からの借用の二つの視点から論じ、この分野の研究に重要な知見を提供 しました。佐藤純子さんは「高齢者雇用の促進に関する一考察」という学位論文で、日本の高齢化社会における高齢者雇用の問題に関し、500社に及ぶ企業に 対するアンケート調査によって得られたデータをもとに、現状、問題点、課題などを分析して高齢者雇用の促進の方策を提示されました。たゆまぬ努力を重ねて こられたお二人の尊い研究成果を称え、ご列席の研究科長とともに博士学位の取得を心からお祝いいたします。
麗澤大学の教育理念は、「高度の専門 性と道徳性を兼ね備え、国家・社会の発展と人類の安心、平和、幸福の実現に寄与できる人物を育成する」ことであります。お二人は、この理念のもとに、特定 の専門分野の高度な知識を修め、それを深く掘り下げて、論文にまとめ、博士の学位が授与されたのであります。今後さらに研究を進め、学問の発展と人類の幸 福に資するよう努力していただきたいと思います。

(七)留学生のみなさんに

ここで、留学生の皆さんに申し上げます。
世界各国から来日され、麗澤大学に学ばれた皆さんは、慣れない生活の苦労を乗り越え、本日、無事に卒業、修了の日を迎えられました。まことにおめでとうございます。
皆さんは、この麗澤で多くのことを学ばれたと思いますが、私たちも皆さんから多くのことを学びました。皆さんたちが来てくださったおかげで、異なる言語・文化の担い手たちが、キャンパスの中で交流を深め、お互いに豊かな国際性を育てることができました。
皆さん方が、この麗澤大学で学ばれたこと、そして日本で体験されたことを十分生かして、我が国とお国との「良き架け橋」として今後一層ご活躍されることを、我々教職員一同心から願っています。

(八)麗澤人としての誇りを胸に

最後に、改めて卒業生・修了生全員に申し上げます。
先ほど、環境問題や難民問題に取り組んで おられる先生方を紹介しましたが、これはほんの一、二の例に過ぎず、麗澤大学のすべての教職員が、それぞれの分野とお立場で、研究・教育に、学生指導に、 あるいは学生支援に、そして社会貢献に力を注いでおられます。皆さんは、本当に素晴らしい先生がたの薫陶を受けたことに自信と誇りを持って今日この麗澤の 園を去り社会へ巣立って行っていただきたい。
私も亦、皆さんとともに、三月を以って学長の職を辞し、麗澤大学を退任いたしますが、素晴らしい教職員の方々とともに、そして麗澤の心を育まれた素晴らしい学生の皆さんとともに過ごした麗澤の日々を誇りに思い、感謝を申し上げたいと思います。
皆さんの今後の一層の活躍と、ますますの発展を心から祈念いたしまして告辞といたします。