1. ホーム>
  2. 未分類>
  3. 平成30年度 入学式告辞>

平成30年度 入学式告辞

 本日、この麗らかな春の日に、秋山浩保柏市長を初め、多数のご来賓の方々のご臨席のもと、平成30年度麗澤大学入学式を挙行できますことは、私どもの大きな喜びでございます。また、新入生の保護者やご家族の方々にも心よりお喜び申し上げます。

  本年度の入学者は大学院生44名、学部生706名、別科生40名、総計790名、これに特別聴講生と研究生17名、この中には、世界の28の国と地域から来られた184名の外国人留学生も含まれます。また本年は、道徳教育学の確立を目指し、道徳の教科化に対応するための教員養成を使命とする日本で唯一の大学院、学校教育研究科道徳教育専攻を設置したわけでございますが、その第一期生が7名入学されたことも、ご紹介しておきたいと思います。その中には現職の先生や校長先生で院生になられ、勤務先の入学式のために、この入学式に参加できない方もいらっしゃると伺っておりますが、麗澤大学を代表いたしまして、皆さんのご入学を心から歓迎いたします。

  さて、本日は、ここにご出席の皆さんのご入学を心から歓迎し、3つのことをお伝えしたいと思います。

  まず第一は、麗澤大学という名称です。「麗澤」の意味についてお話しするのは、まさに「麗澤」という名称の中に麗澤教育の理念が表わされているからです。「麗澤」とは、『易経』という中国の古典からとった言葉ですが、『易経』の言葉は、私たち人間の進化と退化の法則を、自然現象に当てはめて表現している点に特徴があります。

 まず『易経』には、「麗澤」という言葉がそのまま登場する箇所が一カ所あります。それは「象に曰く、麗澤は兌なり、君子もって朋友講習す」という一節で、ここでの「麗澤」とは「ともに並ぶ澤」を意味します。「沢」といっても流れる渓流というよりは、むしろ、水の貯まる地面のくぼみを指すものであり、まさに廣池学園の「池」や沼をイメージすると分かりやすいでしょう。この一節をもっとわかりやすく現代風に言えば、「並んでいる沢が互いに潤し合う姿は喜ばしい。立派な人間になろうとする者が志を同じくする友とともに学び切磋琢磨する姿は素晴らしい」という意味になります。すなわち、お互いを切磋琢磨する学びを通して、常に相手を尊重し、互いに助け合いながら、自己の品性と知性を高めることの大切さを謳っているわけです。これはまさに本学の追求する人間教育、あるいは教育の本質であります。

 それとともに、『易経』には、麗澤の麗を「付着する」という意味の「つく」と読ませる箇所があります。すなわち「日月は天に麗き、百穀草木は土に麗く。重明もって正に麗けば、すなわち天下を化成す」(離為火)という一節です。これを現代風に訳せば、「日や月は天に付着しているから萬物を照らすことができ、穀物や草木は土に付着しているから花を咲かせ実を結ばせることができる。また、明徳、天から与えられた優れた徳性をもって正しい道にしっかりと付着して政治を行えば、天下を正しく教化できる」という意味です。『易経』では、さらにこれを天体の自然現象に当てはめ、「黄離、元吉なり」、すなわち「太陽が中天にかかり、黄金色の光で万物を照らす」という解釈も成り立つとしています。本学の創立者の廣池千九郎はこのような古典の精神を敷衍し、「麗澤」の意味をこう表現しました。「麗澤」とは「太陽天に懸かりて萬物を恵み潤し育つる義なり」と。つまり「天にかかる太陽のように、生きとし生けるものすべてを慈しみ育てる人であれ」というのが、「麗澤」の名称に込められた創立者の願いです。

  第二は、そのような建学当時からの伝統を踏まえながらも、本学では、革新、すなわち、つねに時代の変化に即応した新しい能力やスキルが養成できる様々なプログラムを用意しているということです。たとえば、本学では、世界の18の国と地域の51の大学と交流ネットワークを構築し、外国語学部ではクロス留学や海外研修、経済学部ではグローバル人材育成コースで全員留学やダブルディグリーを目指すなど、充実した両学部のユニークな留学プログラムや研修制度が用意されています。29年度の実績を申しあげますと、189名を超える学生が、海外留学や研修プログラムに参加し、国際的通用性のある人間力を高めております。

 そのようなグローバルな教育を行う本学に対する外部評価をご紹介しますと、イギリスの高等教育情報誌Times Higher EducationのTHE世界大学ランキングの今年の日本版では、国際性(international environment)分野で千葉県内の大学の中で第1位の評価をいただき、全国353大学中12位というトップクラスにランクされました。

 現在、キャンパスには世界約30の国・地域からの留学生が、在学生の8人に1人、全体の13.4%を占めています。また、外国語学部生の3人に1人が留学しています。この数字をご覧になっただけでも、本学のグローバルな教育環境がいかに整っているかがご理解いただけると自負しております。

 第三は、皆さんの先輩方の活躍です。大学の教室での勉学や留学以外に、ミクロネシアでの環境教育支援活動、ネパールでの減災教育支援活動、カンボジアでの交通安全教育支援活動、秋田での限界地域活性化活動、柏市との連携による麗澤・地域連携実習など、学生によるPBL(課題解決型学習)活動、北海道枝幸町、群馬県水上町、沖縄石垣市での学部生と留学生による観光インターンシップ、さらには2017年11月には、アメリカのワシントンD.C.で開催され、全世界から千人を超える学生が参加した「全米模擬国連大会」に外国語学部と経済学部の合同チーム7名が参加し、一昨年の2016年に引き続き、“Outstanding Position Paper”賞を連続受賞するという快挙を成し遂げました。

 そのような中で、私が学長に就任した2007年、今から11年前のことですが、今でも昨日のことのように私の心の中に残り、皆さんに語り伝えてゆきたいエピソードがありますので、ぜひご紹介しておきたいと思います。それは、本学のキャンパスの花壇で、毎年5月に、「アラン・アンド・アイリーン・ミラー」という名の美しい花を咲かせる白バラのことです。このバラを寄贈してくださったのは、本学の卒業生の葛西さんで、実はこの白バラ、世界にひとつだけの新種のバラなのです。「アラン・アンド・アイリーン・ミラー」と言う名称は、葛西さんがイギリス留学中(1993~94年)にお世話になったホストファミリー、ミラー夫妻の名前です。

 ミラー夫妻にとって葛西さんは初めて受け入れた外国人留学生でした。夫人はその心境を「日本人学生と住むのは初めてのことだし、今まで夫婦二人きりの生活だったから、最初はどうなるか少し不安だった。でも、今の私たちは本当にハッピーなのよ。今まで平凡で単調だった毎日がこんなに楽しくて素晴らしいものになるなんて。あなたが来てくれたおかげだわ」と話してくれたそうです。その言葉のとおり、言葉も不十分な日本人の葛西さんを、ご夫妻は、さながら自分達の娘のように、時には厳しく、大きな愛情をもって接してくれたのです。そのようなご夫妻の姿に接し、言葉では伝えきれないくらいの感謝の気持ちでいっぱいになった葛西さんは、帰国前にその気持ちをお二人に伝えると、「あなたの日本のご両親とは比べものにならないけど、私たちも、あなたのことがとても大切なのよ」という言葉が返ってきたそうです。

 何気ない一言でしたが、当時の葛西さんの心の琴線に触れた温かい言葉でした。そのとき、お二人が自分にむけてくれる想いの深さを知っただけでなく、それまで当り前のように受け流していた、自分に対する日本の両親の深い愛情にも気づくことになったからです。それまでは、目新しいことを吸収する喜びばかりが前面に出て、自分一人で成長しているかのような錯覚さえ覚えた葛西さんでしたが、このご夫妻との交流がきっかけとなり、周りの人々の支えがあって自分があることに、心から感謝できるようになったそうです。

 葛西さんとご夫妻との交流は、留学中はもとより帰国後も、日英の国境を越えて続きました。ところが、残念ながら、1999年にアランさんが、そして2005年にはその後を追うようにアイリーンさんが亡くなりました。

 生前に葛西さんを我が子のように慕っていたお二人は、亡くなられた際にその遺産の一部を葛西さんに贈るという遺言を残されました。最初は戸惑ったようですが、同じように留学した学友たちの想いも込めて、そのご遺志を受け取ることにしたのです。そのとき葛西さんの脳裏に浮かんだのは、ご夫妻がバラの愛好家であり、半年間下宿していたコヴェントリーの庭にも白バラが咲き誇っていたことでした。さっそく葛西さんは、同級生でバラ生成の専門家である「バラ屋」店主の平岡さんに白バラの育成を託し、母校に寄付してくださったのです。

 私は学長として、そのような思いやりのある学生の真心に接し、深く感動して心が震えたことを、今でも白バラを見るたびに思い出すのです。その白バラは、大学キャンパス中央の花壇に植樹してあり、毎年、5月になれば、眩いほどの純白の花を咲かせます。皆さんも是非ご覧になって、この卒業生とイギリス人のホストペアレンツの間に生まれた、いかにも麗澤らしい、温かな心の交流のエピソードを思い出していただければと思います。

 最後に、皆さんが本日から新たな一歩を踏み出し、本学で充実したキャンパスライフを送られますことを祈念し、告辞といたします。

平成30年4月2日 麗澤大学学長 中山 理