ASEANからの客員研究員2名による最終研究報告会を開催
2008.3.5

本学経済社会総合研究センターの客員研究員Tan Hsien–Li-Teresa氏とDinh Thi Hien Luong氏が1年の研究期間を終えて帰国するため、2月28日に2人の最終報告会が本学の生涯教育プラザにて開催されました。2人は政府のODA(途上国援助)の国際協力について調査・情報提供を行っている財団法人国際協力推進協会(APIC)を通じて来日。牛場財団の資金援助を受けて、この1年間、センター長でもある国際経済学部の成相修教授の指導の下、熱心に研究に取り組んできました。

ベトナム外務省国際問題研究所に所属するDinh Thi Hien Luong氏の研究テーマは、東アジアの地域共同体の形成の中における日本とベトナムの関係の重要性に関するものでした。 
東アジア地域におけるベトナムの高い潜在力は、天然資源、人材、ビジネス環境、政治的安定性などによるものである。特に日本との経済関係においては、日越関係の強化が2国間の経済的利益のみならず、東アジア地域全体の安定と繁栄につながると考えられる。とくに、中国の人民元切り上げなど中国に対するFDIが減速する中で、ベトナムに対する日本企業のFDIは注目されている。日越二国間の協力の枠組みは、2006年10月のTan Dungベトナム首相の訪日を機に一層強化されてきた。日本とASEANとの自由貿易協定の締結に向けた動きが加速化している。ベトナムは、ASEANの後発メンバーとしてカンボジア、ラオス、ミャンマーとの地域協力を形成してきており、この地域におけるリーダーとしての役割を果たしており、今後も日本・ASEAN自由貿易協定に向けて大きな役割を演じることができる、と報告。こうした認識に立って、Dinh Thi Hien Luong氏は、4つの提言をしています。 
・ 日越協力を、東アジア地域協力の起爆剤にする。 
・ 東アジアにおける歴史的対立などを超えて、日越両国の協力を東アジア地域における平和と繁栄の構築に向けたモデルとする。 
・ 東アジアの大国を地域協力の枠組みに引きこむためにも、日越関係の強化を地域協力のベネフィットの見本にする。 
・ こうした日越関係を、グローバルな統合と発展に向けたステップとする。 
この提案に向けた日越両国の重要性を強調されました。 この研究報告について、参加者からは、ASEAN内部が中国とインドという2大新興国の急速な成長の中で、ASEAN内部の結束が乱れているのではないか、日本との関係強化よりも中国やインドとの関係強化がより重要になってきているのではないか、といった指摘がなされました。こうした点を踏まえて、Dinh Thi Hien Luong氏の今後の研究が期待されます。

シンガポール国立大学の博士課程に所属するTan Hsien–Li-Teresa氏の研究は、東アジアにおけるHuman Securityの向上における日本の役割でした。 
Human Securityは日本のODA大綱でも強調されており、各国の努力に加えて、国連などの国際機関、地域協力の枠組みが重要な役割を持っていることが強調される。日本のこれに対する取り組みは、1998年の小渕政権から本格化した。経済成長、経済発展を円滑に進め、各国の国民生活の向上のためにも、Human Securityが前提である。 自由、人権、などに加え、Tan Hsien–Li-Teresa氏は、貧困の撲滅が最重要課題のひとつであると強調する。 
経済成長が国民の所得格差を拡大させる傾向があるが、成長を広く国民に均霑させることが重要であり、その仕組みの形成が重要であるとしている。日本は近年、東ティモールの平和構築、津波災害からの復興、インドネシアにおける草の根運動への支援、貧困撲滅などにおいて重要な役割を演じてきている。今後、JICAがASEANとともに、こうしたHuman Securityの確立に向けた中心的な役割を演じることが期待されている、との報告がなされました。 
これに対し、参加者からは、JICAが本年10月から従来のOECFの業務を兼ね備えることになるので、人材育成と、Microcreditの枠組みをあわせて、女性の事業振興、農村の振興、ひいては貧困撲滅に貢献できるのではないかとの指摘がありました。 Tan Hsien–Li-Teresa氏の今後の研究に生かすことが期待されるとともに、日本政府の経済援助に生かされることが期待されます。さらには、アジアにおけるこうした援助政策がアフリカなどにも適用されることも望まれるでしょう。 
来年度の研究員の受入れは4度目となり、カンボジアとラオスからの予定です。

Dinh Thi Hien Luong氏

Tan Hsien–Li-Teresa氏

報告会