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2014.07.15|最終更新日:2020.07.30|

福田 康夫 元内閣総理大臣が講演

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麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田 各市教育委員会および柏商工会議所)の平成26年度前期第2回目が6月7日(土)に開催され、元内閣総理大臣の福田 康夫氏が、テーマ「日本の明日、アジアの未来」と題して講演されました。当日は雨にもかかわらず330名の方々が来場し、ほぼ満席となった会場は熱気に包まれました。

福田氏はまず、現在日本政府が抱えている「集団的自衛権」の行使容認問題について言及され、「この問題を考えると、いつも湾岸戦争を思い出します」とご自身の思いを切り出されました。その問題に先立って福田氏は、1990年の湾岸戦争時は平和憲法に護られた日本は何もできず、日本は自衛隊を派遣せずにお金だけ供出し、結果として世界の国々から非難を浴びることになったことを説明されました。当時は福田氏が衆議院議員に初当選した時期で、「議員になってすぐのことでしたので、相当悩みました」と振り返えられました。

また福田氏は、「日本はこの湾岸戦争の時の経験が"トラウマ"となったが、これを機にPKO協力法をつくることができた」と説明。さらにその後の2003年のイラク戦争時に自衛隊派遣した当時は、福田氏は小泉内閣の内閣官房長官を務めておられ、「かなり判断に苦しんだが自衛隊派遣を敢行し、テロ対策法と併せて国際社会から高い評価を得ることができた」と解説されました。

福田氏は「集団的自衛権」について、「行使容認にあたっては、日本国民への十分な説明と諸外国が納得できるように、政治がしっかりしていかなければならない」と注意を喚起されました。

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福田氏は次に、日本が抱える大きな課題について、次の6つを言及されました。

①自然災害について。
この地球上では、マグニチュード6以上の地震の20%は日本列島で起こっている。災害には第一義的に対処しなければならない。日本人は、長い歴史の中で自然と共存ながら繁栄してきた民族であることに、世界からも驚きの声もある。誇りを持っていきたい。

②日本は資源・エネルギーに大変乏しい国である。新しいエネルギーの開発までの原発のあり方など、エネルギー問題は大きな課題である。

③日本列島は中国・韓国・北朝鮮・ロシアに囲まれて、現状は地政学的には良い環境にない。この内、ロシア・北朝鮮とは平和条約すら調印されていない。中国・韓国とは領土・歴史で諍いが絶えず、70年前の戦後処理が未だに解決していないことは、極めて遺憾なことだ。これからの若い政治家がなんとか道筋をつくり、諸外国と快く協力し合える緊密な関係を築いていただきたいと期待する。

④人口減少・高齢化については、日本にとって大きな問題である。そしてまた、アジア全体の課題でもある。インドネシアも高齢化が進み、中国は「一人っ子政策」で一気に高齢化に及ぶ可能性がある。

⑤財政問題。ここまで膨れ上がった債務は、容易に解決できることではない。政治の中心課題とすべきだ。

⑥東京都の一極集中について。国内の資本金10億円以上の企業の半分が東京都に集中し、人口だけでなく、富も集中していることは大きな問題である。東京になぜこれほど人が集まるのかを考え、地方都市に教育と医療を充実させなければならない。

と述べられました。

IMG_6530福田氏は最後に、日中関係の今後のあり方について言及されました。福田氏は、相手国に対して双方の国民の80%が悪い感情を持っているという現状は、明らかにマイナスであると解説しました。

また、中国という国柄について、「経済的成長が速く、世界はG2(米中)の時代と言われる程に自国に対する自信も持つようになった。しかし大気汚染等の環境問題が現実的に起こっていたり、社会保障制度等についても、まだまだ成熟するまでには至っていない」と解説されました。社会保障制度については、「日本では医療保険は世界に誇る制度だが、それは50年前、高度経済成長の時に安倍首相の祖父である岸信介首相の時にできた制度である。中国も今のうちに制度化しなければ、大変なことになるだろう」と訴えられました。

福田氏が総理大臣の時代は、良好な日中関係を維持できていたことを振り返えられ、「当時は『戦略的互恵関係』を包括的に推進し、胡錦濤国家主席と良好な関係を築いてきた。だから胸襟を開いて話しあえば分かり合える。まずは首脳同士の信頼関係を築くことが先決だ」と述べられ、講演会を締めくくられました。

講演終了後は、活発な質問が飛び交い、エネルギー問題、農業問題、日中関係などの諸問題についての質問に、福田氏は明確な回答をされ、今回の特別講演会は講演テーマである「日本の明日、アジアの未来」に沿った、たいへん示唆に富んだ解説と、政治の裏話も興味深く、受講者の方々は熱心に耳を傾けられていました。最後は、大きな拍手とともに終了しました。