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2016.10.26|最終更新日:2020.07.30|

【開催報告】2016年度 公開研究会「資生堂の企業文化について」

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平成28年10月15日(土)、本学生涯教育プラザにおいて、企業倫理研究センター公開研究会が開催されました。今回の研究会では、「企業文化」をテーマとし、2名の先生方にご講演いただきました。

まず、本学外国語学部の梶田幸雄先生より、「日本の企業文化と経営」というタイトルでお話いただきました。企業文化論は、1980年代以降に関心が高まり、現在では企業倫理を論じる際にも不可欠なものとなっています。不祥事を起こしてしまった企業の「第三者委員会報告書」などを見ても、必ずと言っていいほど、再発防止策として「倫理的な企業文化の醸成」が謳われています。

このように、企業文化の意義や重要性が認識されている中、梶田先生のご報告では、一社レベルでの企業文化という枠を超え、異なる文化的価値を持つ国の企業同士が合弁会社を設立する際、その文化的な隔たりをいかに埋めていくべきか、との問題提起がなされました。集団主義的な価値志向を持つ日本企業と、個人主義的な色彩の強い欧米企業とでは、リーダシップや意思決定のスタイル、仕事の進め方、さらには成功の定義といった所にまで違いがあり、このような隔たり・差異をどう埋めていくかが、合弁会社の経営を考える上で重要な課題であると指摘されました。また、昨今では、自社の経営理念や経営哲学を外国語に翻訳し、それを世界に散らばる子会社や関連会社にも浸透させようとする日本企業が増えてきていますが、その際にも、単に翻訳版の経営理念を配布するだけに留まらず、文化的な違いに留意しつつ、その浸透を図っていくことが重要だと感じました。

次に、㈱資生堂 企業文化部 マネージャーの大木敏行氏より、「資生堂の企業文化について」というタイトルでご報告いただきました。多くの会社が設立から数年で姿を消してしまう中、資生堂は今年で創業144年を迎える長寿企業です。約一世紀半もの間、常にリーディングカンパニーとして走り続けることができたのは、まさに今回のテーマにある「企業文化」に関係するものでした。大木氏によれば、資生堂にとっての企業文化とは、いわゆる組織風土とは一線を画するものであり、資生堂の歴史の中で「構成員たちが知的・感性的な創造活動を展開した結果、その一部が蓄積された成果であり、経営資産として活用可能なもの、すなわちヒト・モノ・カネに次ぐ第四の経営資産」として機能を果たすものであるとのことでした。

また、資生堂では、このような知的・感性的な創造性を社内に還流するため、芸術文化支援を通じた社会貢献活動を幅広く展開しています。「企業 "の"文化 (資産)」と「企業"と"文化 (芸術文化)」。この2つの文化の伝承・取り入れ・還流の積み重ねに、他の追随を許さない資生堂の強さを再確認することができました。

(経済研究科博士課程 大塚祐一 記)