「日本茶初輸出さしま茶ブランドの価値向上・発信事業」の中間報告
2018.6.22

 麗澤大学では平成27年から茨城県境町と包括連携協定を締結しています。この協定にもとづき、本学は平成28年度から地方創生推進交付金(農林水産省)による事業「日本茶初輸出さしま茶ブランドの価値向上・発信事業」の委託を境町から受けて、研究を行っています。さしま茶は、茨城県西部を中心に生産されている日本茶で、このプロジェクトでは、さしま茶のブランド価値向上・発信を目的として、「幕末における横浜からのさしま茶の輸出に関する歴史調査」、「六次産業化ネットワーク構築支援」および「さしま茶に関する市場調査」に関する研究を行っています。このたび平成29年度の「さしま茶ブランド価値向上・発信事業 調査研究報告書」の中間報告がまとまりましたので、紹介します。

 まず「さしま茶のルーツ調査」については、幕末の日本開国後から、アメリカ向けの日本茶(緑茶)は、生糸と並んで日本からの有力輸出商品でした。昨年冬に委託された研究課題の一つは、茨城県西部の利根川地方(猿島郡、当時は下総国内)の商人である中山元成という人物が、ウォルシュ商会のホールという人物を通じて輸出したのが初めてであったいうことについて調査をして欲しいという主旨でした。外国語学部の櫻井良樹教授と経済学部の西澤美穂子非常勤講師を中心に、横浜開港資料館の先生方や、日本およびアメリカの茶業史の専門家の協力を得て、この問題に取り組んでいます。中山家に残されていた諸史料、上海における貿易統計、さらにハーバード大学に残されていた商社の経営史料やホールの手紙などの発見および分析により、1859年秋に出荷されたものが上海に運ばれ、インド洋・大西洋経由でニューヨークに運ばれ、翌年秋に「日本茶」のブランドとして販売されたことが判明しつつあります。

 次に「さしま茶に関する市場調査」および「六次産業化に関する研究」については、経済学部の徳永澄憲教授を中心に、阿久根優子准教授(当時)および客員研究員の沖山充氏によって行われました。さしま茶の栽培農家が6次産業化を通じて生葉から茶を原料とした商品を製造・販売するバリューチェーンを構築した場合における茶栽培農家へ生産波及効果、及び茨城県全体への経済波及効果を計測しました。茨城県、埼玉県、静岡県の3県において茶産業の経済波及効果について県内産業連関表を用いて計測した結果、茨城県の生葉と緑茶等の経済波及効果は、埼玉県と静岡県の両県に比べて小さいこと、また、茨城県の茶系飲料については埼玉県よりも経済波及効果が大きいものの、静岡県よりも小さいことが分かりました。現時点の茨城県で茶産業の6次産業化による経済波及効果を試算すると、茨城産の茶系飲料の需要が10億円増加したとしても、茶系飲料の直接的効果(生産増加)を除くと1億円程度しか期待できないが、仮に静岡県並みの6次産業化が構築されるならば、その効果は2.6-3.0億円程度になることが分かりました。

 筑波大学の氏家清和准教授によって、さしま茶に対する消費者評価に関して、さしま茶の主要な販路である、一都三県ならびに茨城県の消費者を対象として、インターネットによる消費者調査が行われました。一都三県市場においては、さしま茶の認知度は5%程度であり、現状では、その他大勢の茶の一つとしてさしま茶は認識されており、静岡県産茶や鹿児島県産茶と同等の需要量を得るためには、相当な価格差を付ける必要があることが示されました。一方、茨城県市場においては、約3割の消費者がさしま茶を認知していることが分かりました。消費者評価も静岡県産茶には及ばないものの、鹿児島県産茶と同等かそれ以上の評価を得ていることがわかりました。また、前述の調査で得られたさしま茶のルーツの情報を消費者に認識させることにより、両市場で、さしま茶に対する評価が大きく向上することが分かり、このような情報をマーケティングに適切に利用していくことが重要であることが示唆されました。(文責:麗澤大学櫻井良樹、徳永澄憲、筑波大学氏家清和)

研究発表をする櫻井教授