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教育・研究
2019.02.27|最終更新日:2020.07.24|

【開催報告】公開研究会「非倫理的行為と組織の倫理風土」

 2019年2月22日(金)、本学生涯学習プラザにおいて、企業倫理研究センター公開研究会が開催されました。今回のテーマは、「非倫理的行為と組織の倫理風土」というもので、報告者は、山田敏之先生(大東文化大学教授)、福永晶彦先生(宮城大学教授)、中野千秋先生(麗澤大学教授)の3名でした。

 この3名の先生方は、日本経営倫理学会の実証調査研究部会に所属され、長年にわたって企業倫理に関する実証調査を積み重ねて来られたそうです。とりわけ、1996年から2008年までの12年の間に、3年毎に計5回にわたって「日本における企業倫理の制度化に関する定期実態調査」を実施して来られました。その間、日本企業は、倫理制度化(仕組み作り)という側面においては著しい進展が見られた一方で、依然として企業不祥事が発生し続けているのは、企業倫理の組織風土(組織体質)への落とし込みが十分になされていないためである、と感じて来られたそうです。そのような問題意識の下、先生方は2000年代半ば頃から、倫理的組織風土に関する研究を重ねて来られました。

 今回報告された研究は、企業倫理の制度化および組織の倫理風土が、組織における非倫理的行為にどのような影響を及ぼすかを確認するとともに、非倫理的行為を抑制あるいは助長する組織の倫理風土の特性を解明しようとするものです。組織の倫理風土に関する実証研究として定評の高い Victor & Cullen (1987)の枠組みに基づいて、アンケート調査から得られた1,216名のデータを用いて、組織における非倫理的行為に対して、企業倫理制度が及ぼす影響、また組織の倫理風土が及ぼす影響を分析してみたところ、以下のような結論が得られたそうです。

(1)非倫理的行為の抑制には、取り組んでいる制度の数や範囲ではなく、制度が実際に機能していることが重要である。

(2)非倫理的行為を抑制するためには、制度の機能以上に重要となるのが、組織の倫理風土の構築である。

(3)それぞれ異なる組織風土特性が、非倫理的行為を抑制する要因、あるいは助長する要因として具体的に浮かび上がってきたこと、などが判明したとのこと。

 例えば、「自己利益」を追求する傾向が強い組織風土は非倫理的行為を助長する、あるいは「他者への配慮」、「会社の利益・効率」、「原則・規則」などを重んじる組織風土は非倫理的行為を抑制する等の結果は、当たり前のようにも思えますが、こうしたデータに基づいて実証的に示されると、説得力が違って来ると感じました。

 欧米に比べ、企業倫理の定量的研究が必ずしも十分に進んでいるとは言えない中にあって、先生方の研究は先駆的かつ大変意義深いものであったと感じました。フロアからも多くの質問や意見が出され、活発な議論・意見交換が行われました。

(文責:麗澤大学大学院経済研究科博士課程3年 大塚祐一)