お知らせ
【開催報告】映画・舞台通訳の第一線で活躍する鈴木小百合氏による特別講義を開催

2025年12月1日に、映画・舞台通訳の第一線で活躍されている鈴木小百合先生による特別講義が実施されました(外国語学部の日影ゼミと渡邊ゼミの合同開催)。今回も多くの学生が参加し、教室は熱気に包まれていました。通訳という仕事の奥深さや、世界的スターとの舞台裏に触れることができる貴重な機会となりました。
講義の冒頭、鈴木先生はご自身がこれまでの功績により日本会議通訳者協会から特別功労賞を受賞されたことに触れられ、その長年のキャリアがどれほど多岐にわたり、緻密な準備と瞬発力によって支えられてきたかが語られました。とりわけ映画のプロモーション現場では、出演者の来日が急遽決定することも多いと話され、臨機応変な対応力が求められる通訳の実情を紹介してくださいました。
印象的だったのは、世界的な俳優との実体験に基づくエピソードの数々です。ブラッド・ピット氏の来日時には、発表からわずか24時間後に来日が決定し、舞台挨拶やレッドカーペットでの同行、さらには渋谷や大井町での撮影、日本の居酒屋で白身魚を味わう場面など、短時間で多岐にわたる企画が進行していった様子が臨場感たっぷりに語られました。(オリコン・ジャパン・エンターテイメント・ニュース)
続いて、トム・クルーズ氏に関するお話では、彼が"インポッシブルと思われることほど挑戦したがる"人物であることが紹介されました。大阪から東京までの新幹線を貸し切り、ファンとマスコミのみを乗せて移動したという規格外のエピソードや、道頓堀からボートで登場した際の舞台挨拶など、映画の世界と現実が交錯するダイナミックな現場が描かれました。一方で、会場でテーマ曲が大音量で流れ続け、「音が聞こえないと訳せない」という通訳ならではの苦労も語られ、学生たちは頷きながら聞き入っていました。
さらに、今年の夏に公開された『ジュラシック・ワールド』関連の通訳では、俳優陣との逐次通訳の緊張感や、イヤモニを通して声が聞こえなければ通訳が成立しないという現場のリアリティが紹介されました。また、海外監督や俳優の訛りが強い場合、日本の観客に意味が伝わりにくい部分を意訳する必要があるという専門職ならではの判断についても触れられました。
講義の終盤では、先生が初めて携わった『007/カジノ・ロワイヤル』から、『ハリー・ポッター』、『アイアンマン』、『オーシャンズ12・13』、さらには国際映画祭での数々の記者会見まで、30年以上にわたるキャリアの中で経験してこられた変化と現在の通訳業界の姿が語られました。特に、かつては規模重視だった舞台設営が、近年では「見た目の演出」へと重点が移り変わっているという話は、映像文化の変遷を示す興味深い視点でした。
また、学生からの質問に対して、先生はAI時代に語学を学ぶ意義についても言及されました。AI翻訳の精度が向上している一方で、映画イベントのように台本通りに進まない現場では、状況判断や意図の読み取りが欠かせないため、「通訳は単なる翻訳ではなく、人間の感性や機転が求められる仕事である」と強調されました。
本講義を通じて、通訳者という職業が単に言語を置き換える作業ではなく、出演者や観客、文化と文化を結びつける架け橋であることを学びました。世界的な俳優や監督と同じ空間で言葉を紡ぐ責任と魅力、そして現場で求められる柔軟性や判断力の大きさに触れ、通訳の世界に関心を抱いた学生も多かったようです。今回の講義は、語学学習の先に広がるリアルな職業像を知る、非常に貴重な機会となりました。
(英語リベラルアーツ専攻3年 坂元 凜)












