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ドイツ

ハレ=ヴィッテンベルク・マルチン・ルター大学

“Leben wie Gott in Frankreich”

ドイツ・ドイツ文化専攻3年 戸田駿太郎
2019/03/28
  “Leben wie Gott in Frankreich”
  〈フランスで天国にいるかのようにして暮らす〉
  この文はドイツにおけるいわばことわざの一つで、フランスにおける恵まれた食生活、生活環境などを示し、ユートピアとしてのフランスを描き出しています。さて、もし可能なのでありましたら、私はこのように記すのかもしれません、“Wie Gott in Halle leben”〈ハレで天国のようにして暮らす〉こう書くのは、あまりの快適さの故なのです。ほしいものがあれば、近くのスーパーに行くのもよろしいですし、Marktplatzで買い物をするのもいい。ドイツ語を話したければ、図書館に集っている方々の討論に(仮に友人がいるとして)参加して、歴史にせよ、経済にせよ、話し合えばいい。あるいは、気が向くのであれば、よりアカデミックなドイツ語を図書館で味わうのもいいし、はたまた、ごくまれにある教授たちによるゼミナーに出ればよい。といったようにして、世界はほぼハレで完結している状態にあります。正確に申し上げるのであれば、ほかのところに行ったことはあるのですが、いかんせん、ハレにおいて、快適な生活を送ったためか、窮屈に感じたりとあまりいい思いをしたことがありません。
  そんな旨をタンデム・パートナーに話すと、実にもったいない、と言われ、もっと世の中を知るべきではないだろうかと、至極もっともな忠告を受けたのですが、私という人間の存在として、外国旅行は無理だなあとも思うのでありました。理由としてあげられるのは、一にも二にもハレという町が完璧であり、寛容であるとしか言いようがありません。Landrain 寮を出ていけば、学生の味方たるスーパーマーケットPenny がありますし、もっと先に行けば、EDEKAセンターという巨大なスーパーがある。そこに行けば、大体のものは手に入るし、なによりも、量が多いので少しばかりのもので満足してしまう。品質は言うことはないし(米と魚は例外の上で)、毎日作る料理は試行錯誤こそするが、おおむね問題はない。
  平日は、夜1時か12時に寝て、朝は必ず8時に目が覚め、弁当を作り、図書館で勉強をして気が付けば、夜9時になり、少しばかり有頂天になりつつ食事をとり、買ってきた本を読んで、就寝。こうした生活を続けていると、自然と健康になるもの……とはいかず、ストレスだか何だかで口が荒れたというよろしくないことがありますが(口を噛みすぎた)、おおむね、本当に天国にいるかのような生活を送っています。
  夜寝る前に必ず考えるのは、明日はどんなことをしようか、あるいは何を食べようかといったことで、一度だけ一人でフルコースを作っていたこともあります。ふしぎと料理をしていると心が安らぐもので、今、私が何を考えているのだろうといったことを示している――そんな気がするのです。例えば、難しいことだったり、悩んでいるときだと、無心になるためか、スパゲティであっても茄子を素揚げし、にんにくもあたかも映画『グッド・フェローズ』のように、薄く切って、にんにくを油で煮るようにして炒め、トマトを入れ塩と胡椒を。ブルスケッタも手間のかかる茄子とパルメザン、トマトになるといったように。時間と手間をかけている気がします。あたかも逃避するかのように。にんにくを少しだけ焼いたバケットにこすりつけるようにして香りをつけたのちに、強力粉をまぶし、油でいためた茄子とトマト、モッツァレラをのせて、もう一度焼き上げる。しかし、物事がうまくいっていると、簡単なアラビアータもしくはハムとチーズのサンドイッチ、ヨーグルトで済ませているのが日常です。
  さて、今ハレ大学では二か月間続いた休暇が終わり、新たなる夏学期が幕を開けつつあります。しかし、その前に、忘れてはならないことがあります。WSこと、冬学期の際に、私はある授業をとっていました。その名も「Staat und Nation im 19. Jahrhundert」。教授の名前は、Manfred Hettling。非常に物腰が低く丁寧に低い声で歴史について話すこの人は、19世紀のドイツとその統一に関する第一人者で今なお第一線で活躍していらっしゃる方です。日本にもしばし、その関係で来日され会議に参加しているこの方の研究室には急須と湯のみが置かれ、少なからず日本に愛着を持っていると語り。講義にしばし、遅れてくるこの無礼な日本人を温かく迎え入れ、レポートのノウハウについても助言してくださり、迷惑ばかりかける私を静かに見守ってくださっている偉大なる方です。
  こうして体験記を書いている3月27日の今、私はおよそ4か月にわたって(Hettling先生が少なからず助言してくれた)ドイツ語のわずか、100ページに満たない本を二冊、日本語の本を3冊、英語を1冊読むという苦行のごときことをやってのけてついに、数ページ程度のTeilnehme をもらうためのレポートを書き上げたのでありました。むろんのことながら、タンデムとバディの協力を経て、文章を校正してもらい(たくさん直されはしましたが、意味は通じているので、B2の私には良しとしましょう)、今、パソコンの前で安息を感じながら、この原稿を打っているのです。できれば、来学期もまた、この授業をとってみたいものです。今度は課題を提示するゼミナーとのことですが、果たして、無事受けられるでしょうか?やりたいこともいっぱいありますが、それではこれにて締めくくりたいと思います。
写真1:リガトーニ。ボロネーゼソース。玉ねぎ、ひき肉、にんにく、ニンジンを刻み炒め、これをワインで煮込み、オレガノを加え、塩、コショウ、カットトマト(入れすぎないように)で色付けをして、1時間、弱火で煮込み、赤いつやのある上澄みができれば完成。なお、EDEKAに売っているリガトーニの中でもなかでも比較的大きいものを使用すること。ペンネ台ではなく、いささか値が張るが、2ユーロで買えるリガトーニを使うこと。
写真2:茄子のブルスケッタ
写真3:Prof. Dr. Manfred Hettling
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