教職員
2015.09.09|最終更新日:2022.03.31|

名も無き人の運命を研究する学問。

名も無き人の運命を研究する学問。
黒須 里美
国際学部 国際学科 教授、麗澤大学大学院 言語教育研究科 教授
黒須教授は麗澤大学外国語学部を卒業後、米国ワシントン大学大学院で社会学/人口学を学びPh.D.(社会学博士号)を取得。 その後、独国ベルリン・マックスプランク研究所研究員、米国ハーバード大学ライシャワー研究所を経て、1999年4月より母校、麗澤大学にて教鞭をとる。専門は社会学・人口学。日本の歴史人口学を代表する研究者と言われている。 趣味はフラメンコにスノーボード、そして剣道にいたっては4段の腕前。スポーティーな一面も持っている

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目次

    運命の研究との出会い

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    高校をきっかけに家を離れて寮のある麗澤高校に入学し、そのまま麗澤大学の門を叩きました。大学卒業後にアメリカの大学、大学院へ進学をしましたが、そこで初めて社会学に触れ、その一分野である人口学に出会いました。ある日、ワシントン大学大学院の教授に「人口学は人の運命を研究する学問なんだよ」と言われて、ときめいたことが学びのきっかけだったように思います。

    私が在学していた麗澤大学も創立者である廣池千九郎先生が『道徳科学=運命の研究』をする人として知られていたので、何かご縁を感じました。それから麗澤時代の英語劇と剣道で培った度胸と集中力と体力で5年間、アメリカ人に交じって研究に没頭しました。家族には1年アメリカで勉強してくるといって家を出たのに、結果、学びに没頭して合計6年も帰りませんでしたね(笑)。

    名も無き人の運命を研究する学問

    社会学、人口学は人がいるところに生まれます。人と人がいて交流するとそこに社会が出来ます。とても大きなくくりですが、人の運命、人の生きざまを科学的に研究する学問です。特に私の専門である歴史人口学では、一般の歴史の授業が、徳川家康といったような歴史的に有名な人物にフォーカスしていくものとしますと、私の研究対象は江戸時代の名もない一般庶民。100年経っても、誰も知らない、名もない人に注目して、その人の生き様や如何に生きたかを浮かび上がらせ、それを地域社会の中に捉える。とてもエキサイティングな学問です。

    例えば、昨今「人や家族が多様化した」、と言われていますが、研究してみると実は明治以前のほうがよほど離婚・再婚・養子も多く、家族は多様化していました。生きるためにいろんな家族の形と選択肢がありました。我々が日々『当たり前』とか『幸せ』とか思っていることが、実はここ最近になって作られたもので不変的なものではないということですね。知れば知るほど、もっと深く学びたくなる、そんな学問です。

    今年、私の研究が文部科学省が実施する私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択されました。これは麗澤大学が世界における日本の歴史人口学拠点として、公私共に認められた証となりました。非常に身の引き締まる思いですが、更なる歴史人口学の研究から『今、起こっている様々な課題の解決のための糸口を発見できれば』と思っています。

    答えは『無限大』

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    私の授業では社会学・人口学の切り口から「なぜ結婚する人が減ったのか?」「ロミオとジュリエットからみる人口と家族』『グローバル時代の家族学』などをテーマにディスカッションをしています。海外での留学や仕事を通じて私自身が体験してきたコミュニケーション重視型の授業を行っています。テストもディスカッションと記述式で実施しており、特に不正解があるわけではありません。もちろん、基礎はおさえておいてほしいのですが、「自分がどう思うか?」「どう根拠づけられるか?」考える力を培うことを目的に、それらを確認するためのテストをしています。

    これまで当たり前だと思っていた自分の価値観に対して、他の違った価値観や見方に触れることで、日常生活そのものを学びの場とすることができます。「これまでの常識を疑い、自分自身が何者なのかを知ること」で、社会における自分の「生き方」が見えてくると考えています。卒業生の多くは、考えることで自分という人間を理解し、同時に他者を受け入れる心も兼ね備えている、自発的に行動できる人材として社会で活躍しています。

    入学される方は4月からの授業を楽しみにしていてくださいね。私もこの学問を一緒に究める方に出会えることを楽しみにしています。

    麗澤大学HPはこちら

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