大学の授業
2018.08.01|最終更新日:2020.09.24|

【大学の授業シリーズ】 主体性重視だから実力がつく!学生主導の自主企画ゼミで、目指すは英語教諭

【大学の授業シリーズ】 主体性重視だから実力がつく!学生主導の自主企画ゼミで、目指すは英語教諭
望月 正道
外国語学科 教授
専門分野は応用言語学・英語教育学。現在の研究テーマが、英語教員養成「教師の成長をどう支援するか」。大学では英語科教育法I・II、英語教育研究(ゼミ)、などを担当する。 東京生まれ、東京外国語大学卒業。英国エセックス大学大学院TEFLディプロマ課程修了、同大学院応用言語学修士課程修了。英国スウォンジー大学大学院応用言語学科博士課程修了。
目次

    学生自らが考え、行動して生まれるのが「自主企画ゼミナール」

    麗澤大学外国語学部には、「自主企画ゼミナール」と呼ばれるユニークな授業があります。全学生必修の専門分野を学ぶ「ゼミナール」とは別に、学生自らが授業内容を企画して、指導教員を選び、6名 以上の学生が集まると正式にゼミとして成立し、単位取得もできるプログラムです。本来「学び」とは、与えられるだけではないはず。「自主企画ゼミナール」は、学生の意思を尊重して、既存のカリキュラムを超えた学びを身につけることができるオリジナルのプログラムです。今回は、英語科教員採用試験対策のために学生達が立ち上げた「英語科教員採用試験対策自主企画ゼミナール」に参加してきました。

    主役は学生! 先生は、学生が主体的に発信できる場づくりをサポート

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    担当教員は、学生の呼びかけに賛同した、英語教員養成分野の第一人者である望月正道教授。90分授業の最初の5分間は前回の授業の復習テスト。その後に、過去の教員採用試験を用いた演習授業を行います。演習授業を終えると、残りが約1時間。ここから模擬授業がスタートです。

    望月先生の"Are you ready?"の掛け声に、今回、模擬授業を担当する学生が"Yes!"と応えると"Hello, everyone. How are you doing today?"でスタート。担当学生が快活に、英語で生徒役に呼びかけ、身振り手振りを交えながら、笑顔で元気よくフレンドリーな進め方が印象的です。こうした手慣れた進め方も、学生自身が考えていくわけです。模擬授業の制限時間は20分。この日は、「ユニバーサルデザイン」をテーマに全て英語で教える、という設定です。

    やりっぱなしはダメ! KJ法を使って模擬授業を振り返る

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    先生役の学生は、一方的に話そうとせず、生徒役の反応に合わせて意見を求めたり、説明をはさんだりしています。模擬授業とはいえ、こうした配慮は必須。授業の臨場感を改めて目の当たりにしました。

    20分の模擬授業が終わると、撮影した映像を全員で見直しながら、学生達は模擬授業について感じたことや気づき、良かった点や改善すべき点などを付箋に書き込んでいきます。その際、良かった点を緑の付箋に、改善すべき点や疑問を感じた点を赤の付箋に書き分けます。

    模擬授業の実施や、授業風景の撮影自体は、他大学でも比較的取り入れられた進め方ですが、そこまでで止まっているケースが多いそうです。

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    さらに一歩踏み込んで、その場できちんと、しかも全員で振り返ることが重要。これは、望月先生が10年以上前から模擬授業で取り入れているスタイル。様々な情報を効率よく整理する「KJ法」と呼ばれる手法を用いて、授業全体を再検証していきます。付箋は、「Warm-up」「Oral-Intro」「Listening」「Reading」「Overall」に分類して、ボードへと貼り分けていきます。例えば、冒頭のウォーミングアップについて、「授業の冒頭で、気軽に声を出す機会となったのはgood」「フレンドリーで、緊張した状況をほぐす場面を作り出していた」などの良い点とともに、「高校生には簡単すぎるウォーミングアップではないか?」「メインテーマのユニバーサルデザインと関連性がなかったのでは」といった改善点や疑問が、学生達から挙がっていました。

    貼り分けられた付箋は、さらに同じ系統のものでグループ化します。例えば、「授業の進め方」「教科書の使い方」「ワークシート」「机間指導」などと分類した後、学生達は中身について意見交換を重ねます。

    「私からも学生には様々なアドバイスを投げかけますが、それ以上に、学生同士が率直に評価し合い、話し合う姿勢にこそ価値があり、学びが深まるのです。麗澤大学の少人数授業でも、実際に模擬授業を行えるのは1学生につき年に数回程度。だからこそ自分の担当授業以外で、いかに深い学びにつなげるかが大切です」。(望月先生)

    1年後、全員がたくましい姿へと成長する

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    学生達に授業の感想や手応えを求めると、「少人数なので、人前に立つことが苦手でもやりやすく、先生や皆にも質問がしやすい」「他の人の模擬授業を見ながら、良いと思うやり方を参考にしています」など、全員参加型だからこその実感が聞こえてきました。

    最後は振り返りシートに、授業で得た気づき、本人が感じた反省などを改めてまとめ直していきます。ここまでをきちんと振り返って初めて、模擬授業での体験が血肉化するわけです。「学生一人ひとりには個人差がありますが、主体的な取り組みを継続すると、1年後にはどの学生もとてもたくましく成長しています。こうした授業を通じて、新学習指導要領でも求められている、思考力・判断力・表現力の育成につなげてほしいですね。

    英語教員を目指す方には是非、この「英語科教員採用試験対策自主企画ゼミナール」でたくさんの模擬授業を体験して、素敵な英語の先生になってほしいと思います」。 (望月先生)

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