学生の活躍・課外活動
2019.05.16|最終更新日:2022.03.30|

【前編】学部の垣根を越え、学生たちが国際協力とは何かを考え実現する

【前編】学部の垣根を越え、学生たちが国際協力とは何かを考え実現する
教育支援活動プロジェクト団体 Plas+(プラス)
カンボジア・フィリピン
 
内尾 太一
外国語学部 助教
福岡教育大学教育学部国際共生教育コース卒業。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻「人間の安全保障」プログラム博士課程修了。専門社会調査士。専門は文化人類学で、フィールドは日本とチリ。趣味は自転車旅行。
谷内 うらら
外国語学部 国際交流・国際協力専攻
(現在の国際学部 国際交流・国際協力専攻)2020年3月卒業
1997年生まれ。茨城県守谷市出身。中・高の6年間を吹奏楽部に在籍し、フルートと打楽器を担当。趣味は幼い頃から続けている和太鼓。演奏旅行で赴いたスペインで触れた異文化の魅力に影響され国際協力への興味を抱く。
後藤 亮一
経済学部 グローバル人材育成専攻
(現在の国際学部 グローバルビジネス専攻)2022年3月卒業
1999年生まれ。千葉県松戸市出身。千葉県立松戸国際高等学校卒業。個人的に臨床心理学を学びながら国際協力へも参加するなどアクティブな一面を持つ。趣味のダンスを通して子どもたちとの交流を図ることを目標とする。
目次

    麗澤大学には学生たちが自分自身で学びたいテーマを見つけて、自ら授業を作ることができるカリキュラム「自主企画ゼミナール」というものがあり、ここで紹介する『Plas+』(プラス)はカンボジアやフィリピンを中心に活動している教育支援活動プロジェクト団体です。今回は担当教員の内尾先生と学生代表の谷内さん、メンバーの後藤さんにお話を伺いました。

    世界中の子どもたちに笑顔を与えたい

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    ――自主企画ゼミナール 国際協力団体「Plas+」とはどんな経緯で生まれたのでしょうか?

    内尾: 2014年度に国際交流・国際協力(IEC)専攻の学生たちが立ち上げた団体で、当初は男子1名、女子5名の小さな団体でした。映画「僕たちは世界を変えることができない」に感化された学生が、「自分たちも国際協力をしてみたい」と思い立ち、行動に移したのが設立のきっかけだと聞いています。

    このPlas+という名称は「Present Love to All Students」の頭文字を取ったもので、「すべての子どもたちに愛を」という意味です。この「すべての子どもたちに愛を」をモットーに学生たちが主体的に活動を行っています。出発点としてカンボジアの子どもたちを対象に活動を始めましたが、現在はフィリピンにも活動の場を広げています。

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    ――学生が主体となり活動を続けるPlas+。学部や専攻を問わず参加できるのでしょうか?

    谷内:どなたでも大歓迎です!基本的には国際交流・国際協力(IEC)専攻(以下、IEC専攻)の学生が主体でしたが、今では経済学部の学生も参加してくれるようになり、団体の中にも新しい風が吹いて来たように感じています。現在、留学中のメンバーを含めて21名が在籍し、男女比率は半々です。嬉しいのは後輩たちが増えていることです。私たちの活動を広報活動やSNSなどを通して知り、理解し、賛同してくれる学生が増えたことを誇りに思っています。後藤君は経済学部の学生で、まさに新しい風。期待しています。

    後藤:なかなか他学部の学生と交流する機会ってないかもしれませんが、Plas+では学部の壁を感じることなく同じ考え・価値観を持つ"仲間"として積極的に活動しています。まさに「自分自身が望んでいた場所を見つけた!」という感覚ですね。

    ――谷内さんは代表として、どんな役割を担っているのですか?

    谷内:基本的に代表と言っても"えらい"とか、"仕事が多い"などということはありません(笑)。強いて言えば「潤滑剤」みたいな存在ですかね。Plas+は学生主体の団体ですから、活動の交通整理やメンバーの活動を把握しておくように心掛けています。

    内尾:谷内さんはPlas+にとって欠かせない存在。私は監督として全体を把握することが求められますが、そのパイプ役として情報を精査して報告してくれるのでとても助かっています。

    子どもたちの笑顔が活動の原動力

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    ――カンボジアでの活動内容を教えてください。

    谷内:カンボジアは経済の格差が大きい国。首都であるプノンペンは近代化が進んだ大都市として栄えている一方、農村地帯では恵まれない子どもたちがたくさんいます。私たちはそんな子どもたちを対象として、一般財団法人麗澤海外開発協会(以下、RODA)※が小学校建設に資金援助をしたトム・オー小学校を拠点に交通安全や日本の文化を教える教育活動を行っています。また、現地の方々とのコミュニケーションを通して学校に塀を作るプロジェクトも実施しました。日本では考えられないことですが、カンボジアの小学校には塀や柵がなく校庭はオートバイや耕運機の通り道になっています。

    それでは子どもたちが安心して遊ぶことができないと思い、交通安全の一環として塀の建設を決意。資金調達がネックでしたが、アルバイトをしたり、街頭募金活動やクラウドファンディングを活用して、資金調達にも挑戦しました。金額は総額170万円。最初は難しいと思われていた挑戦でしたが、たくさんの方からのご協力のおかげもあり、資金を集めることに成功。校庭を囲む全長400mの塀が完成しました。

    カンボジアには体育や運動会の概念がないのですが、完成後、日本式の運動会を実施したところ子ども達は大喜びで大盛況でした。子どもたちの笑顔が私たちの活動を続ける原動力となっています。

    内尾:授業などの交流重視のソフト面だけでなく、学生たちが塀を作るというハードの部分まで実現したことは、正直驚きました。企画が上がった段階では実現するのはちょっと難しいと思っていたのですが、地元の方々と話し合いを重ね、街頭募金やクラウドファンディングを駆使して施工までたどり着いたことは貴重な経験になったはずです。私が自慢するべきものではありませんが、学生たちの行動が評価されカンボジアで自治体の首長から表彰されたことは素晴らしい実績だと言えるでしょう。

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    谷内:先輩が以前「Plas+はエンターティナーであれ」と言っていたのが忘れられません。子どもたちを笑顔にすることがとても重要だという意味で捉えて、今もその想いを受け継いでいます。私たちが現地を訪れることで子どもたちが笑顔になってくれたり、また大人になった時にふとPlas+のことを思い出して笑顔になってもらえたら嬉しいですね。

    昨年はメンバー全員でカンボジアにある3つの小学校を訪れたのですが、卒業した子どもたちが走って出迎えてくれた時には涙が出るほど嬉しかったです。子どもたちを笑顔にしたいと思いながらも、笑顔をもらっているのは私たちかもしれません。

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    ――この活動が世界に広がって行くことをPlas+の活動を統括する責任者として、内尾先生はどうお考えですか?また、活動を通して学生たちに変化はあったのでしょうか?

    内尾:私なりに彼らが育ててきた活動をうまく支えたいと思っています。今では21名の学生が参加する大きなものになっていますが、最初は数名の小さいグループで、必ずしも人気団体という訳ではありませんでした。けれども現在では参加する学生が増えたこともあり、より多くの地域での活動が可能になりました。これからも、学生たちを陰からしっかりとサポートして、安全かつ成果の出しやすい環境を整えることが私の役割だと考えています。

    成長という部分では、通常の授業だけではなく、IEC専攻内のイベントなどで、谷内さんは活動の内容や魅力を高校生や新入生に対してアピールする役割を積極的に行ってくれています。今ではIEC専攻を背負っている存在ですね。自分たちが築き上げた結果が自信となり、積極的にアクションを起こせるようになったことを大きく評価してあげたいです。

    ――谷内さんはPlas+で得た経験を、卒業後にはどう活かして行きたいと考えているのでしょうか?

    谷内:私は現在4年生ですが、卒業後にもこの経験を活かしたいと考えています。今回、塀を作るためにクラウドファンディングを活用してわかったのですが、Plas+のように国際貢献をしたい、自分の夢を叶えたいと思っても資金がないことで活動をためらったり、諦めなくてはいけない人たちがたくさんいます。クラウドファンディングはそんな人たちの役に立てる仕事だと思いました。そして私もそんな仕事をしてみたいと思い、今はあるクラウドファンディングの会社でインターンをしています。この先、Plas+活動を通して身につけたコミュニケーション力、プレゼン力、適応力は私にとって大きな味方になってくれると思います。

    ※一般財団法人麗澤海外開発協会(RODA)とは...開発途上国において文化・経済の発展に協力するため、国際協力活動を通じて、世界の平和、人類の安心と幸福増進に寄与することを目的として、主にネパール・タイ・ラオス・カンボジアにおいて援助活動を行っている。
    http://www.reitaku.or.jp/

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