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2017.08.03|最終更新日:2020.07.29|

ROCK特別講演会
太田章 氏「Keep Busy!」講演報告

[ROCK特別講演会実施報告]

 平成29年度麗澤オープンカレッジ特別講演会(後援:千葉県教育委員会、柏・流山・松戸・我孫子・野田各市教育委員会および柏商工会議所)の前期第二回が6月10日(土)に開催され、太田章氏(五輪レスリング2大会連続銀メダリスト、早稲田大学スポーツ科学部教授)を迎え「Keep Busy」と題してご講演をいただきました。当日は200名の方々が会場を埋め、太田先生の熱意が直に伝わるご講演を聴講されました。

 冒頭、岩澤カレッジ長の挨拶では、「人は生まれながらにして才能を持っている。その才能に気づくことは自分自身との格闘であり、常に自分への挑戦である。」という太田先生のお言葉を引用しつつ、逆境にも負けずにオリンピックでメダルを獲得した、その力の根源はどこにあるのか、人生に向かって挑戦し続けるための秘訣について伝授頂きたいと、会場の期待を高めて頂きました。

 太田先生のご講演では、まず、ご自身の選手人生について、レスリングを志された学生時代から振返っていただき、数々の難局にも負けず反骨の精神で日本一を目指された、気持ちの持ち方や考え方について説明頂きました。

 なぜそこまで頑張ることができたのか。先生は「出逢い」について着目されます。人との出逢いは奇跡です。先生も多くの指導者との出逢いがあったそうです。そして、他人との出会いも大事ですが、自分の中に眠る才能(素質)との出会いも大事と説明されました。自らの才能は挑戦しなければ分からないですし、挑戦を始めてすぐに出逢えるとも分からない。やってみて、努力してみて誰かに出逢ってそのきっかけを作ってもらえたら、もっと伸びるかもしれない。まずは一歩踏み出すことが大事、自分を探しに行くことが大事、と受講生を大いに勇気づけて頂きました。

 先生は小さいころからスポーツ万能だったとのことです。なかでも個人競技に興味があり、中学校は柔道一直線だったといいます。また、ギターとの出逢いもあり、レコードデビューまでしたという、文武両道ぶりをお話しいただきました。何にでも挑戦する先生のお姿が写真で披露されると、会場からは度々感嘆の声が上がりました。

 様々な背景で高校からレスリングを始め、それでも1年生の大会でメダルを獲得し始める先生ですが、一方で当時の周囲の高校生(無気力・無関心・無感動・無責任)に対して反骨があり、生徒会長としても学内で活躍されます。レスリングに生徒会と二重に苦労がある中でもそれぞれ成功を収められ、まさに「二兎を追う者だけが二兎を得る」を体現した先生のお言葉には大変説得力がありました。

その後入学された早稲田大学の話になると、様々なご学友、著名な同期の方との出逢い・エピソードや、生き方・言葉など一人一人丁寧に紹介され、先生が価値観の面で大きな影響を受けたことを語っていただきました。そうした数々の仲間の存在が、先生を気持ちの面で支えてきたのではないかとも感じられました。

 学生時代は貧乏だったという一節も、ひもじさの中でもハングリー精神を失わない前向きさが大事というメッセージであり、求めなければ与えられない、自分で動かなければ何も変わらない、さればこそ変革のための「Keep Busy」の精神につながったといいます。

 Keep Busyの意味は、忙しくし続けるだけでなく時間を無駄にしないということで、この言葉は先生が20歳の時にワールドカップで渡米した際、チーム通訳のセイコさんから頂いた言葉だということです。人生は有限で時間はあっという間に過ぎてしまう。時間だけが誰にとっても平等。だからこそ時間は有効に使うべきと気づいたそうです。

 そして、やり始めたらNever give up!=あきらめないことが肝要です。先生はあきらめなかったから勝てた試合が山ほどあるそうです。逆転勝利が多いというのも、それを狙っていたのではなく、あきらめない意志があったから。また、Positive thinking=前向きに考える姿勢がないとそれが成り立たないそうです。

 ここで先生は「3つのR」を紹介され、前向きでいることで得るものもあることを説明されました。3つのRとは、繰り返し(Repetition)、それに負荷をかけて(Resistance)、休む(Rest)ことです。繰り返し負荷をかけることは人を強くしますが、休まない人は発達しない。休み方がうまくない人が失敗する。この「3つのR」がうまくいかないと何事も成功しない。また、鍛え方にムラ、ムダ、ムリがあってもいけない(ダラリの法則)そうです。

 これまで具体なエピソード中心の話の展開でしたが、一転してさらりと理論を説明する流れがとても理解しやすく、理屈に偏らない、先生の長年の哲学が感じられるようでした。

 一歩を踏み出すこと、時間を大切にすること、あきらめない事、前向きに考えること。理屈の部分は最小限に、この後、先生は様々なエピソードを交えて実例で解説されました。66歳でレスリングを始めた女性、群馬から新幹線で通ってくる男性、アメリカの片足のレスラーなど、どれも心を打つ内容ばかりでした。

 また、アメリカのレスリング文化や、ご自身の試合のこと、ご家族のこと、教え子のことなど多岐にわたり、写真や映像を交えて語っていただき、まるで先生の見ている風景を追体験できたような、不思議な臨場感がありました。最後は「勝ち負けより夢を持ち続けられたのが最大の財産」という言葉で締め括っていただき、講演を終えられました。

 質疑応答でも、昨今の男子レスリングの状況や、昔の選手に関する質問、先生ご自身の強さの秘訣など会場から寄せられ、一つ一つ丁寧に回答いただきました。講演の途中で本物の銀メダルを会場のROCK会員に回覧するサプライズもあり、その重みを一人一人実感される姿が印象的でした。頭でわかるというより、体得したような、とても胸にしみいるご講演でした。

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