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平成25年度 卒業式告辞

 本日ここに、平成25年度、麗澤大学学位記授与式、ならびに別科日本語研修課程修了式を挙行するにあたり、麗澤大学を代表してご挨拶申し上げます。   

 まず初めに、公私にわたり御多忙中にもかかわらず、多数のご来賓をはじめ、関係各位のご臨席を賜りましたことに対し、衷心より厚くお礼申し上げます。

 また、これまで卒業生、修了生の皆さんを支え、この日を待ちわびておられたご家族、保証人の皆様のお喜びもひとしおと拝察し、心からお祝いを申し上げます。

 さらに後援会、麗澤会をはじめ、多くの関係者の皆様方には、日頃から本学の教育・研究活動に対し、深いご理解とご支援を賜っておりますことにも、厚く御礼申し上げたいと思います。

  さて、今年度は、外国語学部279名と経済学部275名、合計554名に学士の学位を、大学院の言語教育研究科と国際経済研究科および経済研究科では、合計3名に博士の学位と21名に修士の学位を、別科日本語研修課程では21名に修了証書を授与いたしました。したがって、本年は、総数599名の卒業生と修了生を送り出すことになります。さらに、海外の提携校から留学されている特別聴講生も14名が無事本学での留学を終了されました。

 本日、卒業および修了された学部生、大学院生の中には、71名の外国人留学生が含まれております。これに別科日本語研修課程修了生と特別聴講生を含めますと105名、出身は12の国と地域でありまして、それらを五十音順に紹介いたしますと、アメリカ合衆国、アラブ首長国連邦、オーストラリア連邦、シンガポール共和国、タイ王国、大韓民国、中華人民共和国、中華民国(台湾)、ドイツ連邦共和国、ベトナム社会主義共和国、ベネズエラ・ボリバル共和国、モンゴル国となります。

 留学生の皆さんは、異なる言語、文化、習慣の壁を克服して見事学位記と修了証書を取得されました。これまでの皆さんのご努力に対して深く敬意を表します。これから皆さんは、どうか日本と皆さんの祖国との間の架け橋となっていただき、草の根のレベルで互いの友情を深めるとともに、麗澤スピリットを大いに発揮して世界中で活躍していただきたいと思います。

 皆さんのご卒業に際し、麗澤大学を代表いたしまして、学長告辞として3つのことをお伝えしたいと存じます。

 まず第一は、本学の建学の理念である「知徳一体」という言葉の意味をもう一度思い出していただきたいということです。これから皆さんが巣立つ社会は、「知識基盤社会」であると言われています。しかし、そのような「知の極大」を目指す知識集約型社会に貢献するだけが、社会人としての皆さんの役割であるとは思えません。現代社会に生きる私たちは、これといってほしいものがないというほど物質的に豊かになり、ICTの発達で情報量も格段に増えました。しかし、それと反比例するように、よき伝統や価値観が崩壊したことによる精神的なアノミー、すなわち混沌とした規範のない心の問題が増えているのはなぜでしょうか。今ほど、心と物との調和、知識と徳との調和を目指す道徳的知性、すなわちモラル・インテリジェンスが必要とされる時代はないと言えるでしょう。もちろん、知識も必要ですが、それと併せてグローバルに通用するようなモラル・インテリジェンスもぜひとも発揮していただきたいということです。

 二つ目は、そのようなモラル・インテリジェンスの獲得には、いつまでという年齢の制限がないことです。その意志さえあれば、いつでも、どこでも、何歳になってもモラルを学ぶことができ、実践することができます。モラルとは「自分と他者との関係性」です。自分と他者との関係を考えながら、どのように生きるかについて学ぶことに年齢の制限はありません。大学生には大学生の関係性があり、社会人には社会人の関係性があり、退職後の人生には退職後の関係性があります。そして創立者の廣池千九郎も述べておりますように、この他者との関係性とはすこぶる多様性に富むものであり、単なる友人、先輩、後輩、知人、家族といった個人的関係だけではなく、個人と地域社会、国家、世界、そして自然や物質との関係性までも含まれます。

 もし、この他者を金銭あるいは財産と置き換えたら、私たちと財との関係性はどうあるべきでしょうか。中国の古典の『大学』に「仁者は財を以て身を発し、不仁者は身をもって財を発す」という名言があります。人徳のある人は、自分の財産を他者のために使って身を立てるけれども、人徳のない人は自分の欲望のためにだけ財を蓄えるというほどの意味です。私たちの人生で大切なのは、お金を儲けることではなく、どのようにそれを使うか、その使い方にあるということをこの名言は教えてくれています。

 皆さんの先輩の中にも、このようなモラル・インテリジェンスを発揮した卒業生がいます。皆さんは本学のキャンパスの中央花壇で毎年5月に白い花を咲かせる白バラのことはご存知ですね。このエピソードは本学出版の『大学生のための道徳教科書【実践編】』にも取り上げられています。そのバラの名称は「アラン&アイリーン・ミラー」というのですが、実は、これは皆さんの先輩で卒業生の葛西照美さんという方が在学中にイギリス留学(1993~1994年)をした際、お世話になったホストファミリー、故ミラー夫妻の名前にちなんでつけられた名称なのです。彼女がミラー夫妻に「言葉も不十分な異国育ちの私を自分たちの娘のように、時には厳しく、大きな愛情で接してくださり、言葉では伝えきれないくらいの感謝の気持ちでいっぱいです」と伝えると、ごミラー夫妻も「私たちは、あなたの日本のご両親とは比べものにならないけれど、私たちも、あなたのことがとても大切なのです」という言葉が返ってきたといいます。ミラーご夫妻は葛西さんをこよなく愛し、1995年の本学の学位記授与式にはアランさんがイギリスからわざわざ駆けつけてくださったほどでした。このような人種や国境を越えた暖かな思いやりの気持ちが互いに通じ合うという経験を通して、彼女は人間愛というものの奥深さを知り、それまで当たり前のように受け流してきた自分自身の両親の愛情にも気づいたということです。お二人はその後亡くなられましたが、遺言により、その遺産の一部が彼女に贈られることになりました。彼女は、ご夫妻がバラの愛好家であり、ホームステイ先のコヴェントリーにもバラが咲き誇っていたことから、その遺志を受け止め、同じ麗澤の同級生でバラ育成の専門家である友人の平岡誠さんに新種の白バラ育成を頼んだのです。彼女は同じようにお世話になった学友の気持ちを代表し、いただいた遺産を亡くなったご夫妻の御霊への感謝の印として使ったのでした。シェイクスピアの『ソネット』1番に「美しいバラは決して枯れることがない」(“beauty’s rose might never die”)という一節がありますが、私は「美の象徴」ではなく「徳の象徴」として「麗澤の徳のあるバラは決して枯れることがない」(“virtue’s rose in Reitaku might never die”)と申し上げたいと思うのです。

 実は、この物語には後日談があります。この物語は海を渡り、台湾の財団法人張榮發基金会の関係者の知るところとなりました。この財団は、今急成長を遂げている航空会社エバー航空の親会社、エバーグリーン・グループ総裁で台湾の松下幸之助といわれている張榮發氏が慈善事業を展開するため1985年に設立した団体です。同団体が台湾内外で36万部発行している『道徳』という月刊誌に、この麗澤の白バラのエピソードが紹介されたのです。このようなご縁もありまして、この度、張総裁には本学の名誉博士号(経営学)を授与させていただくことになりました。この慶事を、学位記授与式というおめでた場をお借りしてご紹介しておきたいと思います。張氏はすでにアメリカやイギリスなど海外の多くの大学から名誉博士号を授与されていますが、日本の大学では本学が初めてでございます。

 三つ目は、本日より皆さんは麗澤OB・OG会の仲間であり、これからは母校の看板を背負って社会に貢献し、外から母校を見守る立場になられたということです。そのような皆さんの先輩は現在も世界各国で活躍されていますが、異国の地で同じ麗澤の門をくぐった仲間に出会うことほど郷愁の念を掻き立てられ、心強い思いをすることはありません。昨年、ベトナムのベトナム国家大学ホーチミン市校で日本の道徳と経済についての講演をした際、同窓会を開催しました。その会には、本学中国語学科卒業でYKKベトナム社長の敷田透さん(51期)や、同じく中国語学科卒業の牧之内(旧姓瀬川)友美さん、日本語・日本文化専攻のグェン・ティ・ゴク・マイさん、そしてはるばるハノイ市からは国際経営学科卒業でメガテックベトナム有限会社副社長のリュウ・ヴァン・タインさん(67期)らも駆けつけてくれました。

 日本企業の海外進出と足並みをそろえるように、同窓会組織である麗澤会もグローバル化しています。ベトナムだけでなく、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、台湾、中国、韓国、マレーシア、タイなど、海外でも幾会があるごとに開催されています。今後も海外での同窓会開催を企画しており、海外で活躍されるであろう皆さんにもご案内を出すことがあるかと思いますが、その時は是非参加し、皆さんの武勇伝を聞かせてください。また麗澤キャンパスでも、皆さんをお迎えするホームカミングデーが毎年開催されていますので、是非とも本学を訪ねてください。卒業生の皆さんを心から歓迎いたします。

 最後に本学の校歌で「日々に孜孜、日に新たなり」と詠われているように、今後とも皆さんが、本学でこれまでに修得されたモラル・インテリジェンスにさらに磨きをかけて、世界で活躍されますよう祈念し、また、麗澤大学のさらなる発展のため、麗澤会、同窓会活動などを通じて、今一層、母校をご支援くださいますようお願い申し上げまして、ここに告辞といたします。

 平成26年3月14日  麗澤大学学長 中山 理