【前編】「好き」から始まる実践。正解のない課題に挑む塚田ゼミのプロジェクト
麗澤大学工学部の塚田ゼミでは、学生が主役となり、福祉・教育・農業と様々な現場で課題解決に取り組んでいます。高齢者施設や幼稚園での音声データ収集、梨農園の3Dデータ化など、その活動は多岐にわたります。前編では、それぞれの現場での取り組みや、実践を通じた学びについて伺いました。
※2025年度取材
※取材時、2年次生
※取材時、2年次生
※取材時、2年次生
高齢者や子どもの音声を集め、誰もが使いやすいAIへ
―まずは「いちからTry2025」の優秀賞受賞、おめでとうございます。取り組み内容を教えていただけますか?

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常泉さん:高齢者や子ども向けに、AIの学習に活用する音声データを収集するプロジェクトです。私たちが日常的に利用しているAIは、明確な文章で話しかけないと正確に読み取れない場合があります。一方で、高齢者や子どもは、ゆっくり話したり、単語で応答したりすることが多く、うまく認識されないことがあります。そうした課題を解決するため、実際の現場で音声データを収集し、文字起こしをしてAIに学ばせる活動を行いました。
このテーマを選んだきっかけは、祖父母がスマートフォン操作に苦労している様子を見たことです。「声で入力できればもっと使いやすくなるんじゃないか」と考えました。そんな時、授業で高齢者施設を訪問して現場の課題を探る機会があり、「このアイデアをゼミナールの活動としてやってみよう」と思い立ちました。麗澤大学内の敷地内にある麗しの杜という高齢者介護住宅や、麗澤幼稚園にご協力いただき、インタビューを通じて約30人分の音声データを収集しました。
―実際のデータ収集で苦労した点はありますか?
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常泉さん:現場では、話しやすい環境をつくることに苦労しました。ご高齢の方には回想法※を取り入れ、過去の経験を話していただくことで、自然な会話を引き出しました。
一方で、幼稚園の子どもたちへの対応にはまた別の難しさがありました。たとえば「夏休みにどこ行ったの?」と聞いても、「水族館」の一言で終わってしまいます。AIに学ばせるには文章でのデータが必要なので、「水族館でどんな楽しいことがあった?」など、質問の仕方を意識しました。

データ収集といっても相手は人です。コミュニケーションの取り方や承諾書などの準備を含め、現場での経験そのものが大きな学びになりました。
※昔の写真や音楽、馴染みのある家庭用品などに触れながら、過去の経験や思い出を語ってもらう心理療法
炎天下の調査と技術の壁。梨農園3Dデータ化プロジェクト
―梨農園のデータ化について教えてください

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打越さん:梨農園の地形や果樹のデータを取得し、それを立体的なマップにする取り組みです。ゼミの研究テーマを検討する中で、塚田先生から立体データの活用を提案されたことがきっかけでした。
祖母の畑仕事を手伝った経験もあり、作物によって見え方が異なることに面白さを感じていました。大根やニンジンは地中にあるため平面的ですが、梨は木に実がなり、地形にも高低差があります。そうした「立体的な環境」を丸ごとデータ化できる点に魅力を感じました。
しかし、開始当初から大きな壁に直面しました。集めた膨大なデータをひとつのマップにまとめるには、一般的なパソコンとは異なる特殊な環境が必要だったのです。最初は作業環境が整っておらず進められなかったのですが、前田さんが以前使用していたパソコンならできるとわかり、ようやく作業を進めることができました。環境構築から始まったプロジェクトでしたが、チームで乗り越えた経験は大きな学びとなりました。
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前田さん:調査は真夏に行われ、体力的にも厳しいものでした。レーザー機材に加え、パソコンやモバイルバッテリーを持ちながら、何時間も梨の木の間を歩き回ってスキャンしました。機材を一定の高さに保ち、ブレないように操作する必要があり、想像以上に負荷がかかる作業でした。農家さんから冷たい麦茶の差し入れをいただいた時は、本当にありがたかったです。

技術的に難しかったのは、「生き物」をデータ化することです。建物は動かないため比較的正確に取得できますが、梨の木は風で揺れ、日々成長もします。そうした変化のある対象を、どのように精度高くデータとして扱うかが大きな課題でした。
打越さん:取得した「点群データ」と呼ばれる無数の点の集まりを、細切れの動画のような状態から「ひとつの立体マップ」につなぎ合わせる処理が非常に大変でした。データ量が膨大で、処理に時間がかかるうえ、少しのズレでも全体の精度に影響してしまうため、簡単にはいきませんでした。
また、チームでの進め方にも難しさがありました。こうしたデータ処理は個人で集中して進める場面が多く、作業量やモチベーションに差が出やすいと感じました。それぞれの強みを活かしながら、どのように役割分担し、協力して進めていくか。技術面だけでなく、チームとしての動き方についても多くを学びました。

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