外国語学部
2026.09.17

「ホスピタリティ×英語」を学ぶ。ANAの元客室乗務員が伝える、心を届けるコミュニケーション

「ホスピタリティ×英語」を学ぶ。ANAの元客室乗務員が伝える、心を届けるコミュニケーション

全日本空輸株式会社(以下、ANA)で客室乗務員として長年乗務し、黄綬褒章を受章した村松絵里子先生。現在は株式会社ANA総合研究所(以下、ANA総研)に所属し、大学との連携や人材育成に携わっています。外国語学部とANA総研の連携科目「Hospitality English」で学べるのは、英語のフレーズだけではありません。相手を思いやるホスピタリティ、その思いを届ける言葉の選び方、そして自分を信じて一歩を踏み出す力。授業の様子と村松先生へのインタビューを通して、麗澤大学ならではの実践的な学びに迫ります。

村松 絵里子
株式会社ANA総合研究所 産学連携部 主席研究員
ANAにて客室乗務員として長年乗務したのち、管理職を歴任。航空業界での長年の実績と人材育成への貢献が評価され、黄綬褒章を受章。麗澤大学では、ANA総研との連携科目「Hospitality English」を担当。実務で培った知見をもとに、学生一人ひとりの成長に寄り添う実践的な指導を行っている。
目次

    その一言に、どんな心を込めるか。言葉の背景まで考える授業

    授業は、前回の学習内容を振り返るミニテストから始まります。続いて学生たちは、その週に見つけたホスピタリティに関するニュースの中から、興味を持った話題を発表。身近な出来事や社会の動きに目を向けながら、ホスピタリティについて考えを深めていきます。

    こうした授業に込めた思いについて、村松先生は次のように話します。

    • 私が担当している「Hospitality English」は、エアライン業界を目指す人だけのための授業ではありません。実践的な英語力はもちろん、社会のさまざまな場面で生かせるコミュニケーション力を身につけてほしい。そう願って教壇に立っています。

      授業で大切にしているのは、英語のフレーズをただ暗記するだけで終わらせないことです。一つの表現について、どのような状況で使う言葉なのか、相手にどのような思いを伝えたいのか。その背景にある思いを、日本語の文脈やニュアンスも含めて丁寧にひもとき、学生たちにじっくりと考えてもらいます。

    ホスピタリティとは、自分の内側にある「相手を思いやる心」そのものです。そしてコミュニケーションは、その心を相手に届けるための手段にほかなりません。だからこそ、日本語であっても英語であっても、自分の言葉にどれだけ相手を思う気持ちを込められるかが大切になります。

    まず日本語で深く理解し、自分の言葉で表現できてこそ、心の通った英語が生まれます。言葉を表面的に訳すだけではなく、その奥にある思いを捉え、相手と心を通わせようとする姿勢を、私は何よりも大切にしています。

    「はい」と言わないことも、ホスピタリティ。現場で培った判断力

    • 私は長年、ANAで客室乗務員として乗務し、その後は管理職を務め、人材育成にも携わってきました。そのキャリアを通して一貫して実感してきたのは、エアラインの現場では、ホスピタリティと安全を切り離して考えることはできないということです。

      機内という限られた空間では、お客さまのご要望すべてに「はい」とお応えすることが、必ずしも質の高いサービスとは限りません。何よりも優先しなければならないのは、お客さまの安全だからです。時には、心苦しくてもご要望をお断りしなければならないことがあります。

    そのような時にも笑顔を絶やさず、理由を丁寧にお伝えし、納得していただけるよう努める。一方的にお断りして終わるのではなく、安全を守りながら、お客さまとの間に信頼関係を築くこと。それが、私の考えるホスピタリティです。

    私自身、これまで数々の失敗や試行錯誤を重ね、多くのお客さまや仲間に育てていただきました。チームで成果を上げ、部下がたくましく成長していく姿からも、何度も大きな喜びをもらいました。そうした経験から生まれた「人の成長を支えること」への思いが、今、大学で学生たちと向き合う原動力になっています。

    こうした現場での経験は、現在の授業にも生かされています。この日のテーマは「Passenger Care」。教材には、体調の優れない乗客に水や冷たいタオルを提案したり、「後ほど、もう一度様子を確認します」と伝えたりする表現が並びます。決まった言葉を覚えるだけでなく、目の前の相手の様子から何が必要かを考えることも、ホスピタリティの大切な要素です。

    間違えてもいい。ロールプレイで育む、考えて伝える力

    私の授業では、グループディスカッションやペアでのロールプレイを数多く取り入れています。座学で知識を得るだけでなく、実際に体を動かしてみることで、初めて得られる気づきがあるからです。

    • たとえば、授業で使用する教材では、会話の一部をあえて空欄にしています。「自分なら、この場面でどのように声をかけるか」を、自分の頭で考えてもらうためです。

      取材日の授業でも、学生たちは乗客役と客室乗務員役にわかれ、「Passenger Care」をテーマにした会話に挑戦しました。ペアで練習した後は、クラス全体の前でロールプレイを披露。村松先生は一組ずつ実演を見守り、相手への思いがより伝わる表現や振る舞いについて、丁寧にアドバイスしていました。

    こうした実践を重ねる中で、学生たちの姿勢にも少しずつ変化が生まれるといいます。

    • 最初は「間違えたらどうしよう」と緊張していた学生たちも、次第に「今日は自分が挑戦する番だ」と主体的になり、生き生きとした表情で演じてくれるようになります。人との関わりは、「気づく」「想像する」「検討する」「行動する」というステップの繰り返しです。失敗を恐れず、一歩を踏み出した経験が、学生の確実な成長につながっていきます。

      もうひとつ大切にしているのが、毎回の授業後に書いてもらうリアクションペーパーです。そこには、授業での学びと結びつけながら、自分の身近な体験や経験について考えたことが、びっしりと綴られています。

    授業で学んだことを自分の生活に取り入れて考え、実践し、その手応えを返してくれる。学生たちとのこのやり取りは、私にとって大きな喜びであり、かけがえのない時間です。

    「自分は何にでもなれる」。未来を支える、"自分を信じる力"

    授業の中で、学生たちは何度も自分の言葉で表現し、人前で挑戦する経験を重ねます。そんな学生たちを見守る村松先生は、授業を通して最も伝えたいことを、次のように語ります。

    • 私が学生たちに一番伝えたいのは、「自分は何にでもなれる」と、自分の可能性を信じてほしいということです。

      これから歩んでいく長い人生では、思い通りにいかないことや、壁にぶつかることが必ずあります。課題の締め切りに追われたり、自分の力に不安を感じたりすることもあるでしょう。そのような時、最後に自分を支えてくれるのは、「自分なら絶対に大丈夫」と信じる力です。

    授業で学ぶ「相手を思いやるホスピタリティ」は、単なる接客の技術ではありません。周囲の人と信頼関係を築く力であり、巡り巡って自分自身を支えてくれる一生の財産になります。

    多様な人々が共に生きる社会の中で、周囲と信頼し合える関係を築ける人は、どのような環境でも強く、しなやかに歩んでいくことができます。人との温かなつながりは、自分の世界を広げ、人生に新たな可能性をもたらしてくれるはずです。

    英語を学びながら、相手を思いやる心と、自分を信じて一歩を踏み出す力を育む「Hospitality English」。ここで得た学びは、将来どのような道へ進んでも、学生たちを支える力となるでしょう。

    SNSでこの記事をシェア