教職員
2025.12.11

【前編】"見方"を変えれば、学びはもっと面白くなる! 経済学が導く「新しい自分」との出会い

【前編】

2025年度より経済学部 学部長となった小高新吾教授。小高教授は、日本銀行や外務省で30年以上の実務経験を積んできた「実務家教員」です。理論だけでなく、社会で培った知識と経験を学生に伝えることで、より実践的な学びを促しています。前編では、麗澤大学での学びの特徴や、「生きた経済学」を通じて学生の主体性を育む教育について紹介します。

小高 新吾
経済学部 教授
早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本銀行に入行。約35年にわたり本店・国内支店・海外拠点で勤務し、国内では釧路・静岡の支店長、海外では香港事務所長や北京大使館一等書記官などを歴任し、地域経済や国際金融・経済の政策運営に携わる。本学には2021年10月着任。専門分野は「金融論・通貨制度・金融システム」。
目次

    麗澤大学は、"当たり前"を壊し、"新しい自分"に出会える場所

    私が麗澤大学に着任して最初に驚いたのは、「こんなに面倒見のいい学校があるのか」ということでした。少人数教育だからこそ先生と学生の距離が近く、一人ひとりを大切にする温かな環境があります。

    • ⑥.jpg
    • 学生数が多い大学では、似た価値観の仲間とだけ関わることが多いかもしれません。しかし、麗澤大学のように小規模な大学では、むしろ多様な出会いが生まれます。学部の学生は、ほぼ全員の顔と名前が一致するほど互いをよく知っており、様々な国から来た留学生や多彩な経歴を持つ教員とも自然に交流できます。こうした「顔の見える関係」の中で、多様な文化や価値観に触れられることが大きな魅力です。

    私自身も日本銀行時代に、世界各国の人々と交流する中で「自分の"当たり前"は、海外では当たり前ではない」ことに気づかされてきました。そうした経験が、自らを一回り大きくし、人として成長することにつながりました。皆さんにもぜひ、麗澤大学で自分の"当たり前"を問い直す経験をしてほしいと思います。 

    実務家教員が伝える「生きた経済学」と「未来を生きる力」

    実務家教員として私が大切にしているのは、30年以上にわたる日本銀行での経験という"生きた教材"を通して、学生の知的好奇心に火をつけ「学ぶ喜び」を伝えることです。その上で、麗澤大学の理念「知徳一体」に基づき、社会で信頼される人間性を育むことを重視しています。

    金融・経済の講義では、教科書の理論だけでなく、政策決定の裏側や国際交渉のエピソードなど、現場での実体験も交えて解説します。「日本の金融政策はなぜこう決まったのか」といったテーマを題材に、会議での議論や海外の反応など"現場の空気感"も伝えることで、理論と現実が結びついていきます。

    授業では、「もしあなたが日銀総裁だったら、どう判断する?」というように、あえて正解のない問いも投げかけます。グループディスカッションを通して、自分の頭で考え、仲間と意見を交わすことで、答えのない時代を生きるための思考力が育っていきます。

    同時に、経済の知識を「どう使うか」という視点も欠かせません。知識は社会に役立てることも、傷つけることもできます。国際経験を通じて、多様な価値観を受け入れ、他者に共感する力の大切さを痛感してきました。学生にも、知識とともにそうした人間力を身につけてほしいと願っています。

    対話型の授業だからこそ! 理論と実践の往還で育む「生きた知識」

    • 私の授業では、教室で学んだ理論を「社会で使える知識」として定着させることを目指しています。そのために、双方向型授業やアクティブラーニング、課題解決型学習(PBL)を積極的に導入し、常に実社会とのつながりを意識した授業を展開しています。

      たとえば、毎回の授業で学生が提出するリアクションペーパーには、個別に一つひとつコメントを返すだけでなく、次の授業で質問を起点に対話を深めていきます。また、グループディスカッションやプレゼンテーションを重視するのは、「考え、議論し、伝える」プロセスこそが理解を深めるからです。

    • ③.jpg

    「公共政策演習」では、大学近隣の手賀沼をテーマに、学生が仮想の自治体職員として地域課題の解決策を立案します。現地調査から政策立案までの一連の流れを体験し、公共政策の現実と理論の両面を学びます。

    ゼミナールでは、他大学との交流や、日本銀行・東京証券取引所の見学を通して、社会の現場を体感します。また学内外のコンテストにも応募し、自分の立ち位置を客観的に見つめ、将来のキャリアを考えるきっかけにしてもらいたいと考えています。

    こうした実践を通じて、学生には"教科書の中だけにとどまらない知識"と、それを活用する"実践力"を身につけてほしいと考えています。

    経済学が教えてくれる 複雑な社会を生き抜く「武器」と「羅針盤」

    経済学は、現代という複雑で予測困難な時代を生き抜くための「武器」であり、人生という航路を進むための「羅針盤」です。経済学を学ぶことで、次のような力を養ってほしいと考えています。

    • 前編3.jpg
    • まず、「課題の本質を見抜く力」です。 

      経済学は、物事の因果関係を整理し、問題の核心を見抜くための強力な思考ツールです。なぜ問題が起きているのか、どんな要因が関係しているのか、解決に向けてどんな選択肢があるのか――。この"考える力"が身につけば、経済だけでなく、人生の様々な難問を解くための武器になります。

    次に、「正解のない問い」に挑む知性です。

    地球温暖化や国際紛争、少子高齢化といった現実社会における多くの問題の解決には大きな困難が伴いますし、ただひとつの"正解"はありません。だからこそ、自らの頭で考え、多様な人々と対話し、自分なりの解を導き出す知性を育ててほしいと思います。

    そして最後に、社会で信頼される「人間力」です。

    論理的に考え、わかりやすく伝える力。多様な意見に耳を傾け、チームで協力しながら成果を出す力。こうした社会で必要となる普遍的なスキルは、麗澤大学の少人数・対話型の授業の中で、ごく自然に磨かれていきます。

    ―後編では、学生時代から現在に至るまでの歩みと、教育者・学部長としての使命に迫ります。

    SNSでこの記事をシェア