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2026.01.06

【後編】「なぜ?」を問い続ける探求心、ハワイで育んだ「世界で通じる英語」

【後編】「なぜ?」を問い続ける探求心、ハワイで育んだ「世界で通じる英語」

予備校でのアルバイトを通して生徒の成長を見守る喜びを知り、英語教育の道へ進んだ西澤先生。ハワイ大学マノア校の大学院では、テストが社会に与える影響を考える「言語評価」と、人の心と脳の働きを探る「心理言語学」を専門に研究してきました。単に知識を教えるだけでなく、学生一人ひとりが「なぜ?」を問い、答えを自ら探求する力を育むことを大切にしています。後編では、西澤先生が麗澤大学の教壇に立つまでの経緯と、授業で大切にしていることについてお伺いしました。

西澤 倫
外国語学部 助教
専門は人が言語を学ぶ心のメカニズムを探る「心理言語学」と、テストの適切性を多角的に検証する「言語評価」。横浜市出身。神奈川大学を卒業後、ハワイ大学マノア校大学院で修士号・博士号を取得。2024年4月より麗澤大学に着任。自身の研究分野において世界で最も権威ある学術誌に多数の論文を掲載するなど、世界のトップランナーとして研究活動を行う傍ら、「考える力」を育む教育に情熱を注いでいる。
目次

    世界で戦うからこそ、伝えられることがある

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    • ハワイ大学マノア校で博士号を取得し、次のキャリアを考え始めた時、私は日本に戻ることを決めました。その際に最も重視したのは、自身の専門である「研究」と、塾講師時代から続けてきた「教育」への思いを両立できる環境であることです。大規模な大学には英語を教えるポスト自体は数多くありますが、言語評価という自分の専門を軸に研究と教育の両方に本気で取り組める場となると限られています。自分の研究には、自分だからこそ果たせる役割がある――そう感じた時、麗澤大学の募集が目に留まりました。ここなら、専門分野の研究を深めながら、未来の教員を目指す学生の育成にも関わることができる。研究と教育の両立という、私の理想に最も近い環境だと感じました。

    私の専門である言語評価は、世界的にもニッチな分野です。最も権威のある国際学会でも参加者は300名ほど。その中で私は、言語評価の分野で世界トップの学術誌『Language Testing』への近年の論文掲載数で、世界トップレベルの研究者です。この小さな世界の最先端を走り続けることは困難もありますが、それ以上に刺激に満ちており、研究が楽しくて仕方がありません。「あ、これ面白そうだな」と感じた疑問やアイデアを調べてみると、まだ誰も本格的に研究していない。「よし、これは私がやらなければ」と。そんな発見の連続が、私の原動力になっています。着任して間もないですが、麗澤大学でも研究を行っています。研究ができる環境がとてもありがたいです。

    そして、この"問い続ける研究者"としての視点があるからこそ、教育者として学生に伝えられることがあると信じています。研究活動とは、まさに「答えのない問い」に挑み続ける営みです。その面白さも難しさも知っているからこそ、私は授業で単に知識を教えるだけでなく、学生たちが自ら考える力を育むための「仕掛け」をつくることを大切にしています。研究者であることと教育者であることは、私の中では決して切り離せない、大切な両輪なのです。

    問いから始まる授業が、思考を育てる

    私の授業は、英語そのものの技能を磨く≪語学系の授業と、専門領域を学ぶ講義系の授業に分かれていますが、そのどちらにも共通している方針があります。それは「教えすぎない」こと、そして学生に物事の本質を自ら考える力、中でも「批判的思考力(クリティカル・シンキング)」を身につけてもらうことです。

    日本の英語教育は、単語の日本語訳をひたすら暗記するといった"知識の詰め込み"に偏りがちです。しかし、それだけでは実際に使える英語を身につけることは難しいです。英語系の授業では、私の専門である言語評価の知見を活かし、学習効果を高めることを意識した語彙クイズなどを設計し、「知識の暗記」で終わらない、「使える英語」の育成を追求しています。

    一方、講義系の授業では、より直接的に思考力を鍛えることを目指します。答えを先に提示するのではなく、学生の思考を揺さぶる問いを投げかけるのが私のスタイルです。「なぜ企業はTOEICのスコアを求めるのだろう?」「このリスニングテストは、本当に聞く力を測れているのだろうか?」――こうした問いは、言語評価の視点から生まれるものです。世の中の「当たり前」を疑い、自分なりの答えを導き出すプロセスを通じて、学生は知識を「覚えるもの」から「使いこなすもの」へと変えていきます。

    このような指導方針をとるのには、私の教育哲学が関係しています。知識は、本などを読めば習得できますが、批判的思考とその言語化の育成には指導が必要です。学生には、考えることの楽しさに気づいて欲しいと思っています。学生にはよく、「こんなに頭使ったの久しぶり」と言われますが、私はこれを褒め言葉として受け取っています。生成AIなどの登場で頭を使うことが少なくなってきていますが、こういう時代だからこそ大学で思考力を鍛えることの重要性が増していると考えています。

    • さらに、言語評価が社会という""に目を向ける学問だとすれば、心理言語学は学生自身の"内側"に目を向ける学問です。たとえば、外国語訛りのある英語が聞き取れない時、多くの人は「相手の話し方」に原因があると考えがちです。しかし実際には、聞き手である私たち自身が、多様な英語に慣れる必要があります。授業では「どうすれば、私たちはもっと良い聞き手になれるだろうか?」と問いかけ、人が言語を学ぶ心のメカニズムを紐解きながら、学生が自分の学習を客観的に見つめ、より良い学び方を探求できるよう導いています。

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    麗澤大学には、こうした主体的な学びを支える環境があります。私はその水先案内人として、学生が自ら考えるための視点とヒントを提供していきたいと考えています。

    どこの大学に入るかより、「入ってから何をするか」

    進路を考えている皆さんにとって、今は「どこの大学に入るか」が最も大きな関心事かもしれません。それも大切なことですが、私が本当に伝えたいのは、大学に入ってからどんな経験を積むかが、人生を豊かにしていくということです。

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    • 社会では、大学が偏差値や名前で語られることも少なくありません。しかし本当に大事なのは、大学名という看板ではなく、入学後に自分が何をしたいかを見つけ、その実現に向けて行動し続けることです。私自身、そうして経験を積み重ねてきたからこそ、今こうして世界を舞台に研究を続けることができています。

      私は常に「昨日の自分より成長できているか」を問い続ける"右肩上がりの人生"を意識してきました。大学4年間は、そのスタート地点として最も重要な時期です。この時間でどれだけ自分を伸ばせるかは、ほかの誰でもなく、皆さん自身にかかっています。

    就職活動で悩んでいる学生には、私はいつもこう伝えています。「大丈夫。それも成長のプロセスだから。納得いくまで考えなさい」と。自分の選択に「なぜ?」と問い続け、論理的な根拠をもって決断する。その訓練を、麗澤大学で一緒にしていきましょう。私も社会人になって日が浅い、"挑戦者"の一人です。同じ挑戦者として、皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

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