高校時代、バスケットボールに打ち込み、全力で競技と向き合ってきた木下さん。勉強への苦手意識を抱えながら進学した彼を待っていたのは、TOEIC 300点台からの再スタートでした。しかし、持ち前の行動力で英語力を着実に伸ばし、現在は銀座の外資系ホテルでフロント業務をこなすまでに成長しています。「大学に入ってから何をするか」で人生は変えられる――。後編では、木下さんが学んだ英語をどのように活かしているのか、そして未来への決意をお届けします。
※取材時、2年次生
銀座のホテルの裏側で知った、言葉を超える「コミュニケーション」
英語に少しずつ手ごたえを感じ始めた大学1年次の夏、私は大学のプログラムを通じて、2週間のインターンシップに参加しました。行き先は、銀座にある外資系ホテル「ハイアット セントリック 銀座 東京」です。
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最初に配属されたのは、ホテルの心臓部とも言えるハウスキーピング(客室清掃)の部署でした。日本人の責任者に同行し、清掃後の部屋をチェックする業務を担当しましたが、そこで目にしたのは、想像以上に緻密な仕事ぶりでした。グラスに残るわずかな指紋、アメニティの数ミリのズレ、ベッドシーツの張り具合。お客さまの目に触れない部分にこそ、徹底したこだわりがある。その積み重ねが、ホテルの"当たり前の快適さ"を支えているのだと実感しました。
印象的だったのは、現場のコミュニケーションです。清掃スタッフの多くは外国人で、日本語が堪能なわけではありません。一方、指示を出す日本人の責任者の方も、英語が流暢というわけではありません。それでも、身振り手振りを交え、時には互いに片言の単語を使いながら、阿吽の呼吸で仕事を進めていました。
その光景を見た時、高校時代の記憶がふと蘇りました。学生寮で同部屋だった、セネガル出身の留学生のことです。母国語がフランス語の彼は、日本語も英語もほとんど話せませんでした。それでも私たちは、ジェスチャーや表情、そして「伝えたい」という気持ちだけで、自然と打ち解けていました。
「言葉が完璧に通じなくても、想いは通じる」。机の上で文法書と睨めっこをして、「正しく話さなければ恥ずかしい」と身構えていた私にとって、この現場での気づきは大きなものでした。言葉はあくまでツールであり、大切なのは「相手を理解しようとする姿勢」なのだと、汗をかきながら学んだ時間でした。
「ここで働きたい」――直談判から始まった実践の場

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後半の1週間はフロント業務を体験しました。そこはハウスキーピングとは対照的な、英語が飛び交う華やかな世界でした。宿泊客の9割が外国の方という環境で、スタッフが自然に英語で対応する姿は、まさに私が思い描いていた世界そのものでした。
インターンシップを終えたあと、この環境でもっと学びたいという思いから「ここでアルバイトをさせてくれませんか」と直談判。その熱意が通じたのか、半年後からフロントオフィスアシスタントとして採用していただくことになりました。
実際に働き初めて、英語に対する意識が大きく変わりました。まず気がついたのは、仕事の英語には「型」があるということです。チェックインや館内の案内、よくある質問への対応など、定型表現を身につけることで、業務は驚くほどスムーズになります。
もうひとつは、「完璧でなくていい」という感覚が、確信に変わったことでした。スタッフもお客さまも、ネイティブスピーカーばかりではありません。文法が多少間違っていても、発音が少し違っていても、誰も気にしないのです。以前の私はミスを恐れて萎縮していましたが、いつしか「間違えたらどうしよう」という気持ちは消え去っていました。この現場での実践こそが、私の英語力を生きたものに変えてくれたのです。
次の舞台はオーストラリア。行動が広げた、新たな選択肢
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今、私には次の目標があります。来年からオーストラリアへワーキングホリデーに行くことです。その決心を後押ししてくれたのは、相談に乗ってくれた先生の一言でした。「正規留学がすべてじゃない。日本でしっかり準備して英語力を高めておけば、現地で十分に通用するし、成長できる」。その言葉で迷いが消えました。現地では、ホテルで働いている経験を活かして、現地のホテルで働きたいと考えています。シェアハウスで多国籍の人々と生活し、語学だけでなく価値観や考え方にも触れてみたいです。日本でできる準備はすべてやりきり、自信を持って海を渡るつもりです。
これまでの道のりを振り返って、私が高校生の皆さんや後輩たちに伝えたいことはひとつです。「どこの大学に行くかよりも、入ってから何をするかが大切だ」ということです。
私のスタートは、中学英語の学び直しでした。それでも、行動し続けることで、少しずつ自分を肯定できるようになりました。逆に、どの大学に入ったとしても、行動を起こさなければ何も変わりません。
環境のせいにせず、自分の置かれた場所で何ができるかを考え、行動する。それができれば、道は必ず拓けると今の私は信じています。これからも、自分の足で行動しながら世界を広げ続けていきたいと思います。


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