大学の授業
2026.04.13

【前編】「好き」という気持ちが未来を拓く力へ! 心を通わす韓国語と文化の学び

【前編】「好き」という気持ちが未来を拓く力へ! 心を通わす韓国語と文化の学び

K-POPや韓国ドラマの世界的なヒットを背景に、今、韓国語を学びたいという熱意が学生の間で高まっています。その「好き」という純粋な思いを、確かな語学力と文化理解へと昇華させる場所――それが、今年度※から新設された麗澤大学の「韓国語・韓国文化プログラム」です。語学の習得にとどまらず、歴史や文化、社会背景までを深く掘り下げることで、隣国・韓国と真に心を通わせるための「生きた教養」を育みます。前編では、新設された韓国語・韓国文化プログラムの特徴や授業設計について伺いました。
※2025年取材

李 貞美(イ ジョンミ)
外国語学部 教授
韓国出身。ソウル大学校卒業後に来日し、筑波大学大学院で教育学を修める。専門は韓国の教育・社会・文化および韓国語教育。「学生の成長をそばで応援できることが幸せ」と語り、日韓の教育文化比較などを通じ、言葉の背景にある文化理解を重視した指導を行っている。座右の銘は韓国のことわざ「始まりが半分(始めたら半分終わったようなもの)」。
森 勇俊(モリ ユウシュン)
外国語学部 教授(2026年度より客員教授)
韓国出身。小学校6年生の時に来日し、早稲田大学大学院で文学を修める。専門は韓国語教育と韓国文芸思想。K-POPなどの大衆文化にも関心を寄せ、言葉と文化の両面から韓国を学ぶ授業・ゼミナールを担当する。日本を「第二のふるさと」とし、日韓の若者をつなぐ架け橋となることを目指す。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。
目次

    外国語学部の全学生が挑戦できる! 新設された「韓国語・韓国文化プログラム」とは

    -まずは「韓国語・韓国文化プログラム」について教えてください。

    • 森先生:このプログラムは、韓国語の習得に加え、留学や実践的な学びを通して、確かな語学力と文化理解を身につけることを目的に、今年度(※取材時2025年)からスタートしました。大きな特徴は、外国語学部の全学生が対象である点です。規定の単位を修得すると、大学から正式な「修了認定証」が発行されます。

      英語や中国語を専攻する学生にとっても、「自分の専門言語に加えて、韓国語もしっかりと学んだ」という証明になり、将来の選択肢を広げる大きな強みになると考えています。

    李先生:実際に、中国語・アジアグローバル専攻の学生を中心に、「中国語にプラスして韓国語も極めたい」という意欲的な学生が多く受講しています。専門分野を持ちながら、韓国語と韓国文化という新たな武器を手に入れることができる。このプログラムは、学生の可能性を広げるための授業設計になっています。

    「私にもできる!」を積み重ねる授業づくり

    -授業を設計する際、どのような点を意識されていますか?

    • 李先生:一番大切にしているのは、学生のモチベーションと自信です。語学の習得には、毎日の地道な練習と根気強さが不可欠です。だからこそ、授業の導入では簡単な「ひとこと会話」を取り入れ、私と個別にコミュニケーションをとることで「あ、話せている!」という実感を持ってもらいます。
      また、「ピア・ラーニング(協働学習)」を積極的に取り入れ、学生同士で発音を確認し合う時間を設けています。受け身ではなく、「自分たちでできた」という感覚が、学ぶ意欲を高めてくれます。

    森先生:私は、初めてハングル文字に触れる学生の心理的ハードルを下げる工夫をしています。たとえば、日本語の漢字とハングルの形の類似性を活用します。「加える」という漢字の「力」の部分と、韓国語の「k」の音を表す文字の形が似ていることなどを視覚的に関連付けて教えます。 また、日本語にはない発音を学ぶ際には、K-POPや童謡、早口言葉などを積極的に取り入れています。音楽のリズムやテンポに乗せて体を動かすように発音することで、難しい発音も楽しみながら克服できます。堅苦しい勉強ではなく、「楽しい!」という感覚から入ることが、継続的な学習への一番の近道だと考えています。

    つまずきを自信に変える、反復と「なぜ」の解説

    -学生がつまずきやすいポイントと、それを乗り越えるためにどのようなサポートをされていますか?

    李先生:文字や発音、用言の活用は特につまずきやすいですね。授業中にしっかり定着させるため、反復練習を重ねます。「間違っても大丈夫」と声をかけ、失敗への恐怖心を取り除くことを心がけています。最近の学生さんは少し自信が持てない傾向があるので、「いいですね!」「素晴らしい!」とポジティブなフィードバックをすることで、安心して発話できる空気をつくります。また、ペアでのロールプレイングを繰り返し、相手を変えながら何度も会話練習をします。ネイティブの発音のように完璧になる必要はありません。まずは「通じた」という経験を積み重ねることが、壁を乗り越える力になります。

    • 森先生:文法では「なぜそうなるのか」を論理的に説明します。また、日韓の文化的な違いによる誤用も丁寧に指導します。たとえば「八方美人」という言葉。日本ではあまり良い意味で使われませんが、韓国語では「多才で優れた人」という最高のほめ言葉になります。こうした文化背景の違いによる「言葉のズレ」を比較・解説することで、単なるミスの訂正ではなく、文化理解という学びへと転換させています。

    言葉の先にある文化と出会い、世界を広げる

    ―言語を学ぶことは、単なる知識習得以上にどんな力を育てるとお考えですか?

    • 李先生:言葉を学ぶことは、自分の世界を広げ、他者への想像力を育むことだと思います。授業で「韓国の地下鉄やバスには番号が振られている」という話をしたのも、現地に行った時に「これなら私にも乗れる!」と行動へのハードルを下げるためです。 言葉を学ぶことで、その国の人々や社会に対する関心が芽生えます。隣国である韓国を通して、自分とは違う文化や考え方に触れることは、ひいては世界全体への興味へとつながっていきます。語学力だけでなく、「違い」を受け入れ、現地の人々と心を通わせるマインドセットを育てたい。それが、自分の人生の可能性を広げ、将来どのような道に進んでも必ず生きる力になると信じています。

    森先生: 言葉は単なる伝達ツールではなく、その国の歴史、思想、習慣が溶け込んだ「文化そのもの」です。だからこそ、真の交流をするためには、言葉の背景にある文化を深く理解する必要があります。 日韓はよく「近くて遠い国」といわれてきましたが、私はこれを「近くて、より近い国」にしたいと願っています。学生の皆さんには、教室で学んだ言葉と文化を携えて、実際に韓国へ行き、現地の人々と触れ合ってほしい。その経験を通じて、互いを尊重し合える真の国際人へと成長してくれることを期待しています。韓国語教育には、そんな未来をつくる面白さと責任があると感じています。


    ―後編では、実際に授業に参加し、その様子をレポートします!

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