入学からわずか数ヵ月。経営学部の1年次生たちが、地域活性化を掲げるウム・ヴェルト株式会社との共同プロジェクトに挑戦しました。舞台は、同社が運営を担う埼玉県加須市の「道の駅かぞわたらせ」と、お蕎麦処「妙月庵」です。現地調査や試作を重ね、企業の経営陣へプレゼンテーションを行う。そこには、座学だけでは決して得られない「実学」の最前線がありました。後編では、プロの厳しい基準をクリアするために繰り返された試作、そして実際にお客さまの手に商品が渡った瞬間など、学生たちが掴み取った『成功』の行方をお届けします。
※2025年度取材。
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
キッチンでの試行錯誤。気が付けば試作は何十回も
―プレゼンテーションに向けて、学生たちは全4グループに分かれて商品開発を行ったそうですね。
小林さん:はい。そのうち、私と加川さん、岩田さんの3人は同じ第1グループのメンバーでした。私たちは地元の特産品を活かした「加須ねぎ餃子」や「梨のしずくジュレ」などを提案したのですが、特にメインの餃子には苦労しました。当初は「揚げ餃子」として考えていたのですが、現場の方から「ランチのピーク時に揚げ物を増やすのは、オペレーション的に厳しい」とアドバイスをいただき、急遽「焼き餃子」に方針転換しました。
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加川さん:そこからの検証が本当に大変でした。焼き餃子にする場合、冷めても皮が硬くならず、ネギの甘みを最大限に引き出すにはどうすればいいか。実際にキッチンを借りて、何度も試作を繰り返しました。
岩田さん:ただレシピを調べるだけではいけません。誰が調理しても同じ品質で、かつ「道の駅」という場所で安全に提供し続けられるか。商品の品質を追求していくプロセスは、想像以上に地道な作業でした。
―一方、速水さんは別のグループ(第4グループ)だったとか。
速水さん:はい、私のグループでは、ウム・ヴェルトさんの豚肉を主役にした「ポークバターカレー」や「日本そばのそばめしおにぎり」を提案しました。既存のメニューにはない「がっつり食べられる新定番」を目指し、ターゲット層や価格帯を徹底的に議論して臨みました。
味わったことのない緊張。社長への最終プレゼンテーションと「プロに選ばれる」ということ
―いよいよウム・ヴェルト社の経営陣を前に行われた最終プレゼンテーション。当日の雰囲気はどうでしたか?

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小林さん:これまでの人生で一番緊張したと言っても過言ではありません(笑)。会場に入ると、社長をはじめ役員の方々がずらっと並んでいて、その場の空気が一気に「本気のビジネス」に変わるのを感じました。私はグループを代表して登壇したのですが、あまりのプレッシャーに手が震えてしまって...。でも、隣にいた仲間を見て、「みんなでここまで試作を繰り返してきたんだから、大丈夫」と自分に言い聞かせました。
加川さん:小林さんがプレゼンテーションしている間、私は祈るような気持ちで見ていました。自分たちの「加須ねぎ餃子」が、単においしいだけでなく、いかに現場のオペレーションや原価の課題をクリアしているか。必死に伝えている姿を見て、チーム全員の想いがひとつになっていくのを感じました。
―速水さんのグループは、戦略的な視点でプレゼンテーションに臨まれたそうですね。
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速水さん:私たちは「ポークバターカレー」の優位性をデータで示そうと、他店との比較やターゲット層の分析を徹底してプレゼンテーションしました。自信はありましたが、結果として私たちの案は選ばれませんでした。正直、悔しかったです。でも、社長からいただいたフィードバックを通じて、「自分のやりたい戦略」と「企業が今、本当に求めているもの」のわずかなズレに気づかされました。選ばれなかったことも含めて、本気で挑んだからこそ得られた貴重な学びでした。

―商品化が決まった瞬間について教えてください。
近藤先生:全4グループから多角的な案が出されましたが、企業の厳しい審査の結果、実際に商品化に向けて動き出したのは、小林さん・加川さん・岩田さんたち第1グループの「加須ねぎ餃子」、そして他グループが提案した「そば粉のグリーンスムージー」と「しゅわしゅわサイダー」の3商品でした。

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小林さん:私たちの「加須ねぎ餃子」が商品化候補として名前を呼ばれた瞬間、驚きと嬉しさで頭がいっぱいになりました。それと同時に、プロの厳しい視点をクリアできたのだという大きな自信になりました。
加川さん:私たちが何度もキッチンで検証した「冷めてもおいしい工夫」や「現場での再現性の高さ」が、プロの方々に認めてもらえた。そのことが何よりも嬉しかったです。自分たちのアイデアが単なる空想ではなく、本物の「商品」として認められた瞬間でした。
現場に出て初めて理解できた、ビジネスの本当の喜び
―最終プレゼンテーションを経て、実際にお客さまへ商品を届ける「試験販売」も経験されたそうですね。
速水さん:はい。11月に開催された「板倉町商工フェスタ」で、私たちが企画に関わった商品の試験販売を行いました。自分のグループの案は選外でしたが、当日はプロジェクトメンバー全員で、選ばれた「加須ねぎ餃子」などの販売を全力でサポートしました。そこで目にした光景は、教室の中では絶対に体験できないものでした。
―どのような光景だったのでしょうか?
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速水さん:自分たちが名前をつけ、工夫を凝らした商品をお客さまが手に取り、その場でおいしそうに食べてくださるのです。「これ、学生さんが考えたの? すごいね」と声をかけていただいた時は、心から嬉しかったです。それまでの準備期間は、正直に言って苦労の連続でした。でも、目の前のお客さまの笑顔を見た瞬間、すべての努力が報われた気がしました。これまでの学びでは見えなかった、地道な「プロセス」こそが本当の学びだと実感しました。

岩田さん:私は販売の現場で、商品の「ストーリー」を伝える大切さを学びました。ただ「おいしいですよ」と言うのではなく、自分たちが実際に養豚場へ行き、どんな想いでこの豚肉やネギを選んだのかを説明すると、お客さまがより興味を持ってくださるのです。スポーツでレギュラーを争っていた時とはまた違う、自分の言葉が誰かの心を動かし、価値として認められる喜びを知ることができました。
―近藤先生は、現場での学生たちの姿をどうご覧になっていましたか?
近藤先生:3ヵ月前、まだ大学生活に慣れていなかった彼らがお客さまと対等に渡り合っている姿を見て、胸が熱くなりました。マニュアル通りに動くのではなく、どうすれば売れるか、どうすれば喜んでもらえるかを自分たちで考えて動く。その主体性こそが「実学」の到達点です。彼らが手にしたのは、売上という数字以上に、自分たちの力で社会に影響を与えたという確かな自信だったはずです。
「学生」から「ビジネスパーソン」へ。1年次で見つけた、未来を切り拓く自信
―3ヵ月間のプロジェクトを終えて、近藤先生から見て学生たちの変化はいかがでしたか?

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近藤先生:4月の入学当初は、まだ高校生気分が抜けきらない様子もありました。しかし、このプロジェクトを終えた今の彼らの顔つきは、もう立派な「ビジネスパーソン」です。正解のない問いに挑み、プロの壁に跳ね返されながらも、自分たちの足で答えを見つけ出した。この「自信」こそが、大学4年間の学びの土台になります。2年次以降、彼らがどんな専門性を身につけ、どう飛躍していくのか、今から楽しみでなりません。
―最後に、これから大学選びをする高校生へメッセージをお願いします。
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小林さん:私は、大学を選ぶ時は「オープンキャンパス」に何度も足を運ぶことをお勧めします。パンフレットやネットの情報だけでは分からない、先輩や先生の雰囲気、そして「ここで自分が何に挑戦できるのか」というリアリティを肌で感じてほしいです。
速水さん:高校までの勉強は「答えを覚えること」がゴールでしたが、大学での学びは「答えのない問いに挑むこと」がスタートです。もし、今の勉強に目的が見出せなくてモヤモヤしている人がいたら、ぜひ一度、こうしたプロジェクトに触れてみてください。「学ぶことって、こんなに面白いんだ」と思える瞬間が必ずあるはずです。


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岩田さん:大学は、自分から動けば動くほど面白くなる場所です。私はスポーツ以外の世界に飛び込んでみて、視野が一気に広がりました。「新しい自分に出会いたい」「何かに本気で打ち込みたい」と思っている人には、麗澤大学は最高の環境だと思います。
加川さん:私も最初は不安だらけでしたが、勇気を出して一歩踏み出したことで、かけがえのない仲間と経験を得ることができました。「私には無理かも」と思わずに、まずは飛び込んでみてください。その一歩が、きっと未来を大きく変えてくれるはずです。

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