経済学部
2026.03.23|最終更新日:2026.04.03|

【前編】北海道で見つけた「幸福」の答え。人とのつながりが拓く、地域創生の新しい可能性

【前編】北海道で見つけた「幸福」の答え。人とのつながりが拓く、地域創生の新しい可能性

北海道枝幸町でのフィールドワークを通して見えてきたのは、物質的な豊かさでは測れない「幸福」のかたちでした。2025年9月、実習でこの町を訪れた内澤さんは、地域で暮らす人々との対話を重ねる中で、人と人とのつながりが生み出す豊かさに触れ、便利さにあふれた都会の日常とは異なる価値観を実感しました。前編では、高校時代から大学進学を経て北海道での実習に至るまでの歩みと、枝幸町での経験を通して広がった内澤さんの価値観について伺いました。

内澤 理予
経済学部 経済学科 経済専攻 2023年入学
茨城県出身。高校時代は美術部で絵を描くことに没頭。大学進学後も、絵を描く時間を大切にしている。入学当初は一歩引いて周囲を見守るタイプだったが、「廃校再生イベント ひろせフル」では後輩をまとめるリーダーとして活躍。仲間と協力し「頼り合うこと」の大切さを実感。
※取材時、3年次生
目次

    自分を整えるボールペン画。静かな美術部時代

    高校時代は美術部に所属していました。皆で何かをするというより、一人で黙々と絵を描く時間が好きでした。当時部員は多くありませんでしたが、静かな環境が自分には心地よく感じられました。

    • 特に熱中していたのは、ボールペンで花の絵を描くことです。15分から20分ほどで描き上げます。複雑な花びらのラインをペン先で一心不乱に追いかけていると、余計なことを考えずに済んで、ざわざわした心が整っていく感覚があります。私にとって絵を描くことは、自分をリセットするための大切な時間だったのだと思います。

    メディアか地域貢献か。オープンキャンパスで決めた進路

    進路を考える中で心にあったのは、ニュースで見たシャッター通りの風景や少子高齢化といった社会課題でした。漠然と「いつか地域に関わる仕事がしたい」という思いを抱く中で出会ったのが、麗澤大学の観光・地域創生専攻です。

    当初はマスコミの仕事にも惹かれ、メディア系の学校のオープンキャンパスにも足を運びましたが、話を聞くうちに「将来の選択肢が限られてしまうのではないか」と感じるようになりました。より広い視野で社会を学び、自分自身の選択肢を増やしたい。そう考えたことが、麗澤大学への進学を決めるきっかけになりました。

    • 入学後、私の視野を大きく広げてくれたのは、2年次の「基礎専門演習」という授業です。自治体や企業から提示されるリアルな課題にチームで取り組みました。千葉県北部の手賀沼や習志野市の谷津干潟を訪れて、知名度向上のための提案を行いました。当初は華やかなイベント案が中心でしたが、「資金はどうするのか」「継続性はあるのか」といったフィードバックをいただく中で、現実的に考えることの難しさを実感しました。多角的な視点や、客観的なデータに基づいて考える重要性を学んだ経験は、現在の学びにもつながっています。

    移住者に学ぶ、枝幸町で見えた「幸福」

    • 2年次の秋、「地域連携資源活用実習」という1週間のプログラムに参加し、北海道枝幸町を訪れました。旭川空港から車で約5時間。9月の枝幸町は、これまで過ごしてきた日常とは異なる、凛とした空気に満ちていました。実習のテーマは「幸福」です。映画館や全国展開のカフェに行くにも1時間以上かかるこの町で、人はどのように幸せを感じているのか。地元のカフェ店主や酪農家など、多様な背景を持つ移住者7名へのインタビューを通して、その答えを探りました。なかでも、都会や海外での生活を経てこの町に移り住んだ女性の言葉が、強く印象に残っています。

    「あなたにとっての幸せとは?」という問いに、彼女は「数字や便利さでは測れない喜びがある」と語ってくれました。仕事帰りに誰の目も気にせず、潮風を浴びながら波の音を聞いて歩く時間が、何よりの贅沢なのだと言います。都会では、分単位の時刻表や注文した翌日に届くネット通販、フードデリバリーなど、便利さにあふれた生活が当たり前になっています。一方で枝幸町には、それらがない代わりに、自分の五感を研ぎ澄まし、「今、ここにある幸せ」を深く実感できる余白があります。効率を重視してきた自分の価値観が揺さぶられる、そんな体験でした。

    高校生との対話。地域を支える人のつながり

    • さらに町を深く知るため、地元の高校生約30名とのグループワークにも参加しました。地元で育った彼らの多くは「早く都会へ出たい」と話し、身近な自然を幸せとは捉えていませんでした。一方で移住者の方は、「不便なら自分たちで変えればいい」と、課題さえも前向きに受け止めていました。この対比から、地域に対する向き合い方によって、その魅力の捉え方や関わり方が大きく変わることを実感しました。地域を動かすのは立派な施設ではなく、そこに暮らす人々の熱量なのだと感じました。

    2軒先のお隣さんからホタテが届くような、都会ではあまり見られない助け合いの関係。一見するとお節介に見えるそのつながりが、幸福の土台になっていることに気がつきました。枝幸町の人の温かさに触れ、これまで一歩引いて人と関わることが多かった私も、対話の輪に入っていくことの大切さを知りました。地域の活性化とは、新しいものを生み出すことだけではなく、今ある魅力を「人とのつながり」の中で受け継いでいくことなのだと思います。

    ―後編では、北海道での経験を起点に広がった学びと実践、そして内澤さんが描く「その町らしい幸せ」を支える将来の目標について伺います。

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