【前編】プロスポーツの舞台裏へ! 自主企画ゼミナール×柏レイソルが挑んだファンイベントとは

麗澤大学とJリーグ・柏レイソルの運営会社である株式会社日立柏レイソル(以下、柏レイソル)の間で2017年から続く教育連携。その取り組みの一環として、2024年11月30日に行われた柏レイソルのホームゲーム最終戦で、麗澤大学の学生たちが企画・運営したファンイベントが実現しました。授業で学んだことを形にし、プロの現場で実践するという貴重な機会に挑戦した学生たちの想いと学びを追いました。前編では、産学連携の背景や、学生たちがアイデアを形にするまでのプロセスを伺います。

※取材時、2年次生



麗澤大学×柏レイソル 産学連携の歩み
―麗澤大学と柏レイソルとの教育連携はいつから行っているのでしょうか。
-
江島先生:柏レイソル様との連携は2017年から行っており、インターンシップやPBL学習を中心とした教育連携をしていました。その1つが「スポーツPBL」という授業でした。PBL(Project Based Learning)とは課題解決型学習のことで、企業や組織が抱える課題を学生目線で改善案・解決案を提案する、あるいは新しいビジネスプランを提案するという授業になっています。
―柏レイソル様はどのような想いで連携を始めたのでしょうか。
河原さん:柏レイソルとしても、大学生の新鮮な考えやアイデアが、私たちのイベントや企画のヒントになればという想いがありました。オープンカンパニーやインターンシップといった現場での対応のみならず、「スポーツPBL」という授業を通じてより教育的な側面を強化した内容で連携するようになったことは、クラブとして大きな変化だったと感じています。学生の皆さんが考えたものを実際のスポーツビジネスとして形にしていく過程で、さまざまな学びを得ていただきたいという想いで、ともに取り組んでいます。
スポーツビジネスの学びを行動に変える連携活動
―これまで、具体的にどのような活動をされてきましたか。
寺本先生:連携の柱は「授業」「インターンシップ」「イベント参加」の3つです。授業では「スポーツPBL」を通じて理論を学び、ビジネスプランを提案します。これまでのインターンシップでは、1DAY形式ではなく、年間を通じて試合運営に携わる実践的なプログラムを実施しています。
-
河原さん:インターンシップは特に重要な連携活動です。昨年は4名ほどの学生に参加していただき、年間19回あるホームゲームの運営に携わってもらいました。試合日にはイベント運営、受付業務、一般のお客様やVIPの対応など、さまざまな業務を経験してもらっています。学校の授業期間中は参加が難しい場合もありますが、できる限り現場に携われるようにスケジュールを調整しています。
江島先生:そして「イベント参加」では、ホームゲームでの各種イベントやファン感謝デーの運営などに参加しています。ただ見学するだけでなく、実際に運営側として関わることで、スポーツビジネスの現場を肌で感じることができます。
―風間さんがこのプロジェクトに参加することになったきっかけを教えてください。
-
風間さん:私はもともと野球をやっていて、スポーツへの興味から麗澤大学の経営学部スポーツビジネス専攻に進みました。実は、サッカーについては全く詳しくなかったのですが、江島先生から自主企画ゼミナールとして柏レイソル様とのプロジェクトをやってみないかというお話をいただき、2つの理由で参加を決めました。1つは、プロスポーツチームと一緒に活動できる、現場での生の体験を通じて学習できることに魅力を感じたこと。もう1つは、自分が全く知らないサッカーという分野で何ができるか挑戦してみたいと思ったことです。
※自主企画ゼミナールとは...学生が学びたいテーマを見つけ、指導を受ける教員を選び、学習計画を立案・決定し、その計画に従って進めていくゼミナール制度。
授業を通じて生まれたファンイベント
―今回のホームゲームでのイベントはどのように決まったのですか。
-
江島先生:今回のプロジェクトは、2024年度春学期の「スポーツPBL-A」という授業がきっかけです。柏レイソル様から、来場者の方に喜んでいただけるような新しいファンイベントの企画の提案を依頼されました。学生たちはグループに分かれてアイデアを出し合い、その中からクイズ大会が採用されました。そして、秋学期の「自主企画ゼミナール」でイベント実現に向けて動き出したのです。クイズ大会を提案した学生を中心に、クイズの内容や配布用ステッカーのデザイン制作に取り組みました。
風間さん:春学期の授業では、3つのグループをつくってアイデアを出しました。たとえば、柏市の特産野菜を活かした「スタジアムグルメ」など、さまざまな意見が挙がり、その中の1つがクイズ大会でした。実際にオンラインでプレゼンを行い、クイズ大会が採用されたことからメンバーを集めて準備を始めました。
-
寺本先生:提案に際しては、柏レイソルファンが集うSNSで情報収集をしたりアンケートを取ったりと、学生たちが自ら情報を収集し、ファン目線で何が喜ばれるのかを真剣に考える姿が印象的でした。その結果、実際のファンの声を反映した提案が数多く生まれました。
河原さん:これまでも学生の皆さんから素晴らしいアイデアをたくさんいただいていましたが、なかなか形にするところまで至らないことが多かったのです。今回は「消化不良にしたくない」という想いもあったことから、クイズ大会とステッカー配布の企画は学生の皆さんが自ら運営できる内容だったため11月の最終戦で実施できると判断し、採用しました。
ファン視点のアイデアと熱意で不可能が可能に
―イベントの準備はどのように進めていったのですか。
風間さん:イベントの準備期間は、約2ヵ月間と短期だったので、急ピッチで準備を進めていきました。私はプロジェクトのリーダーとしてみんなをまとめる役割だったのですが、柏レイソルファンのメンバーもいて、ファン目線の意見から議論は白熱し、チームをまとめ上げる難しさも感じました。
-
「景品が出るクイズ大会」というコンセプトは早々に固まったのですが、クイズの難易度設定に悩みました。簡単だと正解者が多くなりすぎますし、難しすぎると子どもたちが答えられません。結局、10問のうち半分は比較的難しい質問にして、残り半分は簡単な問題にすることにしました。
また、ステッカーのデザインにもこだわりました。最初は丸い形を想定していましたが、「スマホケースに入れて持ち歩けるサイズにしたい」という意見を受け、色々な機種でサイズ感を試しながら形を変更しました。デザインも「マフラータオルのようなデザインがいいな」と自分たちで考えて作成しました。
寺本先生:学生たちは本当に真剣でした。通常の授業でも活発に意見は出ますが、今回は特に"目に見える形"で熱い議論が交わされていました。「これは絶対に喜ばれる」「いやこっちの方が良い」と熱くなりながらも、最終的には自分たちでまとめていく姿が印象的でした。河原さんをはじめとした柏レイソルの方々も、学生のために時間と力を割いて育ててくださったことに大変感謝しています。
河原さん:学生の皆さんとはメールやオンラインで何度も打ち合わせを重ね、多角的な視点から本当にたくさんのアイデアや質問をいただきました。なかには環境が整わず叶えられないものもありましたが、基本的には学生たちの自主性を重んじることを意識しました。「サッカークラブのイベントとはこういうものだ」と言うことは簡単なのですが、私たちが意見をすることで、学生の皆さんの気づきや学びが少なくなると思ったのです。企画の1つとして、クイズと連動させた選手のインタビュー動画撮影もあったのですが、学生たちの熱意に応えるべくクラブをあげて調整させていただきました。
-
風間さん:実際に初めてスタジアムを訪れた際、フィールドと観客席の近さに驚き、その距離感が大きな魅力であることを実感しました。その魅力を伝える手段としても、選手へのインタビューは本当に大きな挑戦でした。実現へのハードルが高いと感じていたため、一度は諦めかけたのですが、どうしても実現したくて打ち合わせの際に思い切ってお願いしたところ、河原さんをはじめクラブの皆さんのサポートにより、実現することができました。
動画は自分たちで撮影し、字幕をつけて編集したうえで、SNS投稿用に準備しました。投稿には大学の広報課の方々の協力もあり、スムーズに情報発信を行うことができました。選手の方々もお忙しい合間を縫って、私たちの質問に真摯に答えてくださり、本当に感謝しています。