「デザイン思考A」は、2024年4月に新設された麗澤大学工学部が掲げる、社会で真に役立つ実践力とチームワークを育む必修科目です。根底にあるのは、学生の未来への強い思いと、既成概念にとらわれない教育への情熱です。前編では、授業を牽引する柴崎亮介先生と笹尾知世先生に、その理念と工夫、学生を社会へ送り出す熱い思いと独自のビジョンを伺いました。
「デザイン思考A」とは、どんな授業か?
柴崎先生:高校までは学びが個人で完結していましたが、社会に出るとそうはいきません。「明日までにこれをまとめてほしい」と言われた時、一人で徹夜して作成した資料が評価されるとは限りません。社会で求められるのは「結果」です。誰に聞いても構わないから、とにかく期限までに成果を出すこと。それが当たり前にできる力を育てたいのです。

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本学の工学部が目指すのは、まさにその「社会で生き抜く力」を身につけることです。他大学が個別専門技術の深掘りに注力する一方、私たちは「デザイン思考」を課題解決の本質として位置づけています。エンジニアとして社会に出る学生には、5年後や10年後に気づくのを待つのではなく、在学中からチームで成果を出す経験を積んでもらいたいと考えています。
もちろん専門技術も大切ですが、それだけでは不十分です。いくらAIに詳しくても、人と対話できなければ意味がありません。「デザイン思考A」では、チームで協力し、お互いのスキルを活かし合うことを重視しています。大切なのは、相手の強みを理解し、人間関係を良くして助け合えること。社会は漫画のように一人の天才が全てを解決する場ではなく、チームで成果を出す場なのです。
また、本学の工学部は、既存の枠にとらわれず、自由にカリキュラムを組める強みがあります。だからこそ学生には、卒業後「あの授業が役に立った」と思えるような、本質的な課題解決能力を身につけてもらいたいと考えています。
講義3割、実践7割! 体験で学びが"生きる"
笹尾先生:授業で心がけているのは、座学をできるだけ短くし、体験型のワークを多く取り入れることです。講義は全体の3分の1程度に抑え、残りの時間は学生がアイデアを考え、実際に手を動かす時間に充てています。身近な課題解決に使える力にするためには、そのプロセスを体験することが何よりも重要だと考えています。
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また、学生の成長には質の高いフィードバックが不可欠です。以前はテキストでのフィードバックも試みましたが、今は授業中に直接コメントを返すことを徹底しています 。学生は150名ほどいますが、これにより私たちの意図がより明確に伝わり、学生の主体性も高まっています。さらに、進捗をシールで可視化するなど、ゲーム感覚の仕掛けを導入し、チーム間に健全なライバル意識を生み出しています。

失敗も衝突も宝物。チームで挑むから見える力

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笹尾先生:この授業を通して学んでほしいのは、誰でも身につけられる普遍的なスキルです。プロセスを踏むことで、誰もが自分のアイデアを形に変えていけるようになります。工学部の1、2年次生が必修として学ぶことで、社会課題に対してユーザー目線でプロジェクトを構築できる力を養ってほしいと考えています。
授業では異なる専攻の学生が混じり合い、それぞれの技能をチームで活かしながらプロジェクトを進めます。毎回提出されるレポートには、新しい気づきを得た学生たちの姿が見られ、その成長が実感できます。この経験が未来を切り開く力になると信じています。
柴崎先生:社会は高校までの「通知表の世界」とは異なり、努力が必ずしも報われるわけではありません。だからこそ、外部からの率直な反応を受け止める「衝突体験」が重要です。そうした経験を通じて、なぜアイデアが受け入れられるのか、あるいはそうでないのかを考え、修正していく力を養ってほしいです。そして、チームで成し遂げた時の「皆で頑張って良かった」という、かけがえのない喜びを知ってほしいです。それが、社会でしなやかに活躍するための大切な礎となるでしょう。



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