大学の授業
2025.11.25

【後編】「テクノロジーに、愛を。」麗澤大学工学部が育む「社会で生き抜く力」の真髄

【後編】「テクノロジーに、愛を。」麗澤大学工学部が育む「社会で生き抜く力」の真髄

「デザイン思考A」は、2024年4月に新設された麗澤大学工学部が掲げる、社会で真に役立つ実践力とチームワークを育む必修科目です。根底にあるのは、学生の未来への強い思いと、既成概念にとらわれない教育への情熱です。後編では、実際に発表会に参加して目の当たりにした授業の様子をレポートしていきます!

柴崎 亮介
工学部 教授 副学長
東京大学で土木工学を専攻後、社会貢献を志し国家公務員として建設分野に進む。研究所では地理空間情報の処理や解析を担当。まちづくり、交通や国土計画、建設プロジェクトなどにおける情報化やデータ解析で実績を重ねる。その後、東京大学を経て麗澤大学に着任。2024年4月に新設された工学部設立に深く携わり、「社会で役立つ力」を養う教育に注力する。
笹尾 知世
工学部 准教授
東京大学大学院で博士号(環境学)を取得し、建築学を修める。住民参加型設計への関心から、情報技術を用いた空間デザイン支援の研究へ進む。現在はスマートシティの計画運営手法や、生活者共創の場づくりを探求。専門は参加型デザイン・センシング。実践的な学びを通じて、未来を創造する人材育成に貢献する。
目次

    130人の熱気!  iArenaを埋め尽くす最終発表会

    2024年4月に新設された麗澤大学工学部。その必修科目である「デザイン思考A」の最終発表会を、今回特別に密着取材しました。

    今年の発表テーマは「学生がiStudioを使いたくなるには」、「遅刻を減らすには」、「車椅子の学生がスムーズにエレベーターを使うには」、「節電を促すには」の4つです。当日は約130名の学生がテーマごとに分かれ、チーム単位でプレゼンテーションに挑みました。

    • 車いすチーム.jpg
    • 発表のスタイルは実にさまざまです。身振り手振りを交えて熱心に訴えかけるチームもあれば、ユーモアを取り入れて会場を沸かせるチームもあります。モニターに投影する資料の色遣いに気を配ったチームも見られ、個性あふれる表現が会場を盛り上げていました。

      来場者は投票に参加でき、後日表彰が行われます。学生のアイデアは荒削りな部分もありますが、ユーザー目線で率直な意見を交わすことが奨励されており、自由な議論が展開されていました。

    アイデアは十人十色。デジタルもアナログも武器に

    • iStudioの利用促進をめぐっては、多くのチームがデジタルツールを提案する中、あえて模造紙を活用したアナログな工夫を打ち出すチームもありました。シンプルで直感的な方法だからこそ伝わりやすいという発想が、一味違う存在感を放っていました。

      遅刻防止の工夫では、1時限目を出席すると学食が50円割引になるアプリや、通学が楽しくなるためのアプリの開発など、ユニークなアイデアが次々に披露されました。ちょっとしたご褒美や楽しみを用意することで、行動を前向きに変えていこうという工夫が見られました。

    • 模造紙.jpg

    車いすの移動支援に関しては、利用者の視点を理解するため360度カメラによる体験を提案するチームも登場し、工学部らしい視点が光っていました。感覚的な理解を促すアプローチが、議論を一歩前に進めていました。

    また節電の意識づけに取り組むチームでは、なぜ学生は節電に興味関心が薄いのかという根本原因に迫るチームもありました。行動のハードルや動機を見直す視点が提案の実行可能性を高めていました。

    解決策はひとつとして同じものはなく、多様で創造的なアイデアの数々が披露されていました。

    率直な対話が、アイデアを磨く

    • 柴崎先生FB.jpg
    • 発表後には先生や参加者から多角的かつ活発なフィードバックが寄せられました。

      たとえば学生の遅刻防止で出された学食割引のアイデアには、「もし遅刻者がゼロになり全員が50円引きになったら学食の経営状況はどうなる?」と、現実的な視点から問いが投げかけられました。また車椅子の移動支援には、「別のチームのアイデアとコラボレーションすると面白くなるかもね!」と提案され、アイデアを新たな方向へと発展していく場面もありました。

    共通しているのは、学生のアイデアを頭ごなしに否定しないことです。むしろ、より良くするための視野を広げる「衝突体験」として機能していました。具体的な問いかけや発展的な対話を通じて、学生は社会実装を見据えた新たな課題を発見していきました。

    「学生の成長には直接的なフィードバックが不可欠です。対面で率直なコメントを返すことで、アイデアの意図が深く伝わり、次につながります。また、学生自身が質問に来る窓口を設けたことで主体性が向上。自らの困り事を整理し、建設的な議論ができるようになったと感じています。」(笹尾先生)

    "社会で生き抜く力"の核心

    • 今回の最終発表会に密着し、改めて見えてきたのは、工学部が目指す教育の熱量と、それに応える学生たちの計り知れない可能性です。

      単に知識を詰め込むだけでなく、自ら課題を発見し、チームで粘り強く解決策を探求する姿は、まさに社会で活躍する人材そのものです。

      先生と学生、さらに参加者が一体となって繰り広げる対話は、時に厳しくも常に建設的で、学生の視野を大きく広げ、アイデアを磨き上げていく貴重な機会となっています。

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    座学では得られない実践と「衝突体験」を通じて、彼らは社会で本当に必要とされる「生き抜く力」を着実に身につけています。麗澤大学工学部では、すでに活気に満ちた学びの場が広がり、学生が未来を創造する力を育んでいます。この環境から、次世代を担う人材が社会へと羽ばたいていくことでしょう。

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