入学からわずか数ヵ月。経営学部の1年次生たちが、地域活性化を掲げるウム・ヴェルト株式会社との共同プロジェクトに挑戦しました。舞台は、同社が運営を担う埼玉県加須市の「道の駅かぞわたらせ」と、お蕎麦処「妙月庵」です。現地調査や試作を重ね、企業の経営陣へプレゼンテーションを行う。そこには、座学だけでは決して得られない「実学」の最前線がありました。前編では、プロジェクト発足の狙いや学生たちの参加動機、そして現地調査を通じて学生たちが得た驚きと発見のプロセスを追います。
※2025年度取材。
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
※取材時、1年次生
1年次生から「社会のリアル」に触れる。実学を重んじる麗澤大学の新たな挑戦
―今回のプロジェクトが発足したきっかけを教えてください。

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近藤先生:きっかけは、私がウム・ヴェルト株式会社様の社長と知り合ったことでした。同社は埼玉県加須市を拠点に、食品廃棄物のリサイクルから養豚、そして飲食事業までを手掛ける「循環型ビジネス」を自社グループ内で完結させており、全国でも類を見ない先進的な企業です。回収した食品廃棄物を自社で飼育する豚の飼料として活用し、その豚を自社が運営する「道の駅かぞわたらせ」やお蕎麦処「妙月庵」で食材として提供する。このサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方をビジネスとして成立させている点に、非常に大きな教育的価値を感じ、1年次生を対象としたプロジェクトを打診しました。
―なぜ「商品開発」という形を取り、どのようなプロセスで進めたのでしょうか。
近藤先生:経営学部において、商品開発はマーケティングやサプライチェーン、原価計算といった学びを統合して実践できる「究極の実学」だからです。プロセスとしては、まず7月にオンラインで企業理念や地域資源を学ぶキックオフから始め、8月にはグループに分かれて地域に関する基本情報や課題を調査し、商品企画案の検討とプロトタイプの製作を行いました。その上で、9月に3日間の現地調査を行い、養豚場での原材料理解や店舗での試食・分析を実施。そこから一気にアイデアを具体化し、最終日に企業の経営陣へ直接プレゼンテーションを行うという、非常に濃密かつハードな工程を組みました。
―学生たちには何を学んでほしいと考えたのでしょうか。
近藤先生:単なるアイデア出しで終わるのではなく、プロの厳しい制約の中で正解のない問いに向き合う経験をしてほしかったのです。原材料を育てる現場の苦労、原価やオペレーションといったビジネスの制約、そして自分たちの提案が形になるまでの責任感。これらを肌で感じることで、2年次以降の専門的な学びが自分事としてつながるはずだと確信していました。
1年次生が直面した企業連携のリアルと期待
―プロジェクトに参加しようと思った理由を教えてください。
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速水さん:正直に言うと、私は高校時代まで「なぜこれを勉強しているんだろう」という目的が自分の中で見えにくくて、勉強に対して、どこか身が入らない時期がありました。だからこそ、大学では将来に直結するような「生きた知識」を学びたいという強い思いがありました。入学して間もない頃、近藤先生からこのプロジェクトの話を聞いた時、実際に企業の方と一緒に商品を開発するプロセスに携われることに、ものすごく大きな魅力を感じました。自分が参加することで「学びのゴール」が明確に見えるのではないか。そう考えて、迷わず参加を決めました。

―参加する前と後で、印象は変わりましたか?
速水さん:はい、大きく変わりました。参加する前は、商品開発とは、もっと自分たちの感性やアイデアを形にしていく、クリエイティブで楽しい作業だというイメージを持っていました。ですが、実際にプロの視点に触れたことで、商品開発とは「自由なアイデア」だけでなく、原価やオペレーションといった「シビアな現実」をすべてクリアして初めて成立するものなのだと理解しました。商品に対する見方が180度変わりました。
命が「商品」に変わる現場。現地調査で知ったビジネスの責任と重み
―現地調査で、特に印象に残っている体験を教えてください。

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岩田さん:一番衝撃を受けたのは、ウム・ヴェルトさんのグループ会社が運営する養豚場を訪れた時です。そこで生まれたばかりの、本当に小さくて可愛い子豚を抱かせてもらったのですが、その直後に「この子たちは半年後には出荷されて、食べ物になるんだよ」と言われて...。正直、最初はすごく悲しい気持ちになりました。でも、その後、実際に「妙月庵」で自分たちが企画に関わる豚肉を使った角煮定食をいただいた時、あまりのおいしさに「あぁ、ありがたいな」と心から思いました。
動物がかわいそうという感情だけで終わるのではなく、命が食べ物として流通することで自分たちの生活が成り立っているという「循環」と「感謝」を、身をもって知ることができました。ビジネスの根底にある責任の重さを、肌で感じた瞬間でした。
―具体的に企画を考える中で、どのような「壁」にぶつかりましたか?
小林さん:私は高校時代のコンビニエンスストアでのバイト経験から、消費者目線で商品を考えることには自信がありました。しかし、いざ商品を形にするとなると、想像以上にシビアな条件がありました。たとえば、どんなに良いアイデアでも、お店のスタッフさんが少人数で、かつ短時間で誰でも同じ品質で再現できるレシピでなければ、現場では受け入れてもらえません。
加川さん:私たちは当初、見た目の華やかさを重視して、トッピングをたくさん乗せるアイデアを考えていました。しかし、現場の方からは「忙しいランチタイムでは、その工程に対応するのが難しい」といった意見をいただき、素材の保存方法や衛生面についても多くの指摘を受けました。
―素材の保存や衛生面、そこまで考えなければならないのですね。
小林さん:冷凍保存ができるのか、解凍した時に味や食感が落ちないか。さらに、食中毒などのリスクを避けるためにどのような調理工程にすべきか...。単においしいだけでなく、「安全に、安定して提供し続けられるか」というプロの基準を突きつけられました。
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加川さん:自分の「やりたいこと」と、お店側の「できること」、そして安全性の確保。このバランスをどう取るか、チームのみんなと何度も話し合いを重ねました。正解がない中で、自分たちのアイデアを「売れる商品」として研ぎ澄ませていくプロセスは本当に大変でしたが、大学の授業では決して味わえない「社会のリアリティ」がそこにはありました。


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