【前編】見慣れた街が"研究対象"に変わる―現地で学ぶ経済学の面白さ
麗澤大学経済学部の欧阳先生は、インフラ維持管理や都市空間を専門とし、2025年度に着任しました。授業では柏市や流山市を舞台に、学生自身が街を歩き、地域の課題解決に向けた提案を行っています。前編では、欧阳先生が大切にする「現地に足を運ぶこと」の意義や、見慣れた景色から社会の仕組みを読み解く面白さに焦点を当て、研究テーマや教育への思いについてお伺いしました。
現地へ足を運び、リアルな課題を肌で感じる
―日本で学ぶことになったきっかけ、大切にしている姿勢を教えてください。
2017年に留学で来日しました。日本は中国と食文化など共通点が多く、親和性もあるため生活環境にも比較的早く慣れることができると考え、留学先として選びました。

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学生時代で印象に残っているのは、北海道天塩町でのフィールドワークです。一番近い総合病院がある稚内市までは約70km離れており、牛は1万頭以上いるのに人口は3000人ほど。人よりも牛の方がはるかに多い地域でした。当時は東京のような都市部のイメージしかなかったため、日本にもこのような地域があることに驚きました。冬には吹雪の中で現地のリアルな状況を目の当たりにして、過疎地域や自然条件の厳しい地域がどのように生き残っていくのかを真剣に考えるようになりました。
その経験が、私が学ぶ上で一番大切にしている「現地に足を運ぶこと」の大きなきっかけになりました。都市部の近代的な景観や便利さだけを見ていては、存続することすら困難な地域の問題は知る由もありません。インターネットや書籍で色々と調べるだけでなく、現地に足を運んで自分の目で確かめることが社会の課題を理解する第一歩だと、日本に来て一番学んだことですね。
電柱の分布データから読み解く、都市課題
―研究分野である「都市地域空間分析」について教えてください。
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今の研究の大きなキーワードは「インフラの維持管理」です。なかでも街中では当たり前のように立っている「電柱」に着目しています。実は、電柱の分布データを見るだけでその都市の特徴がしっかりと見えてくるのです。電力会社から公開されている電柱の分布データを分析してみると、地域によって違いや特徴がわかります。
たとえば、山奥にぽつんとある一軒家に電力を供給するためだけに、何十本も電柱が建てられていたりします。居住者がいなくなった空き家にも電力供給が続いているケースもあり、人口減少が進む地方において、こうした非効率な維持管理をどのように解決していくかが課題です。

さらに、災害対策の観点からも電柱の分布に注目しています。近年では、景観のために無電柱化を進める動きも盛んです。緊急輸送道路という災害時にいち早く復旧させないといけない道路の周りは、電柱の密度が高くなっています。防災という視点で考えると、優先して無電柱化していくべきなのは緊急輸送道路の周辺ではないかと考えています。日本は地震が多いので、もちろん地中に埋めると断線したときの復旧に莫大な時間とコストがかかる難しさもありますが、こうした日常の風景から都市や地域のリアルな特徴を掴めるのが、この研究の面白いところですね。
見慣れた景色が研究対象になる都市計画の魅力
―都市や地域を対象に研究するやりがいは、どのような点ですか?
インフラの維持管理にも密接に関わってきますが、都市計画の面白さは、毎日のように見慣れていた電柱や、街角のゴミ箱でさえも、立派な研究課題になることです。都市計画を学んで、私は街並みの見方がガラッと変わってしまいました。
たとえば、中国では街中にゴミ箱がないと皆が困ってしまいます。でも日本では保安・防犯の観点から撤去が進み、自分でゴミを持ち帰る文化が定着していますよね。そうなると「必ずしも必要ではない」という考え方もできます。
スポーツスタジアムに設置されているトイレの数も、ピーク時を基準に設計されています。ですが、それ以外の時間はほとんど稼働していません。長い目で見たとき「それは本当に効率的」でしょうか。
私たちの行動や生活様式が都市のインフラとどう関わっているのか、身近な施設が人間の行動にどう影響を与えているのかを見つめ直すことができるのが、最大の魅力だと感じています。
学生自らが街を歩き、課題解決のプロセスを学ぶ
―都市計画・地域課題の観点から、授業で大切にされている点を教えてください。

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現在は、「観光と地域」をテーマにした経済学の基礎演習を担当しています。本講義では、地域を単なる「観光地」として見るのではなく、地域資源や地域課題、関係主体、さらにはデータまでを総合的に捉えながら学ぶことを重視しています。
授業前半では、まず大学キャンパスという身近な場所を題材に、観察を通じて地域資源を発見する視点や、現象から課題を見つける方法、原因仮説の立て方、観光データの読み方などを学びます。
後半では、学生たちがグループごとに対象地域を選定し、実際に現地へ足を運びながらフィールドワークを行います。柏市や流山市など近隣地域を調査し、地域の魅力や課題を自分たちの視点で分析していきます。その中で、ステークホルダー分析やブランド仮説、ペルソナ設定なども行い、最終的には地域に対する具体的な提案へとまとめて発表します。
特徴的なのは、最初から解決策を考えるのではなく、「何が起きているのか」「なぜ起きているのか」「誰に関係するのか」を丁寧に整理する点です。前半の観察やデータ分析、後半のフィールドワークや提案づくりまで、一貫して"現象から課題と仮説を導き出す"プロセスを重視しています。実際の行政や地域づくりの現場でも、まず現状を把握し、課題を整理したうえで施策を検討していきます。この授業でも、そうした実社会に近い流れを意識しています。
学生たちには、課題発見から仮説構築、調査、提案までの一連のプロセスを経験し、社会に出てからも活かせる実践力を身につけてほしいですね。

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