卒業生の活躍
2025.10.31

【後編】言葉で描く未来 ―― 麗澤大学での学びから、日本語教師としての挑戦へ

【後編】言葉で描く未来 ―― 麗澤大学での学びから、日本語教師としての挑戦へ

高校時代にアメリカへ留学した時、友人に「"私は"と"私が"ってどう違うの?」と聞かれ、言葉に詰まった――その経験から「日本語をきちんと学びたい」と強く思うようになった麗澤大学卒業生の渡部梨沙さん。学生時代には異文化交流や学園祭、ゼミナール活動などで多彩な経験を重ね、現在は日本語教師として活躍しています。 大学での学びがどのように現在につながり、そしてどのような未来を描いているのか。後編では、日本語教師としての想いややりがい、今後の目標について伺いました。

渡部 梨沙
麗澤大学 外国語学部 外国語学科 日本語・国際コミュニケーション専攻
(現 国際学部 国際学科 日本学・国際コミュニケーション専攻 2018年3月卒業)
カナン東京日本語学校にて日本語教師として勤務。進学・就職を目指している外国人学習者の指導に携わる。
目次

    就活の迷いから始まった教師への道

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    • 日本語教師になりたい気持ちはありましたが、就職活動では一般企業を中心に受けていました。まずは社会に出て経験を積むことで、伝えられることが増えると考えていたからです。

      しかし、思うように結果が出ず悩んでいた時、キャリアセンターの方から「日本語教師の求人があるよ」と紹介していただきました。普段から「日本語教師になりたい」と伝えていたからこそ、声をかけてもらえたのだと思います。こうして私は卒業と同時に日本語教師の道を歩み始めました。

    最初に教壇に立ったのは23歳の時です。学生と年齢が近すぎたため、「先生」として見てもらえないことがよくありました。態度や言葉に少し距離を感じることもあり、「私は皆さんのお姉さんです」と言って距離を縮めようとしたこともあります。内心では「早く30代になりたい」と思うこともありましたが、この経験を通して、先生という立場は肩書きや年齢で決まるのではなく、人との関係性の中で築かれる信頼が土台になるのだと実感しました。

    日本語教師に必要なのは、日本語や言語教育に関する知識だけではありません。学生との会話では社会学や歴史、経済など幅広いテーマが自然に出てきます。高校で学んだ公民の知識や時事問題も役立つことがあります。だからこそ、日本語教育一本に偏らず、広い視野で物事をとらえることが大切です。そして何より、学生との信頼関係を築くコミュニケーション能力が不可欠です。

    私自身、日本語だけでなく幅広い知識や経験を生かして学生と向き合えることに、この仕事の魅力を感じています。

    身近な例で学べる日本語の授業

    現在勤務している日本語学校には、ベトナムや中国、台湾、ミャンマー、ネパール、スリランカ、ロシア、韓国など様々な国の学生が、進学や就職を目指して通っています。

    • 授業は基本的に日本語だけで行います。学生の多くは入学時には日本語がほとんど分からない状態なので、どうすれば理解してもらえるか常に工夫が必要です。

      私はできるだけ身近な例を出すようにしています。たとえば「明日テストがあるけどゲームをしたい。勉強とゲーム、どっちが大事?」と問いかけると、自然と「勉強しなければなりません」と答えが返ってきます。生活に結びついた例の方が、言葉の意味を実感しやすいのです。

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    また、SNSや流行の話題もできるだけ把握するようにしています。「先生、それ知らないの?」と言われてしまうと、会話が続かなくなるからです。TikTokやInstagramの流行を知ることも、授業準備の一部になっています。

    指導で大変さを感じるのは進学指導の時です。書類の書き方や面接の受け方、電話のかけ方まで一から教える必要があります。日本では1分の遅刻も許されないことが多いですが、その感覚を異なる文化で育ってきた学生に伝えるのは容易ではありません。ときには「ほら、遅れたら困るでしょ」と、実際の失敗から学んでもらうこともあります。

    一方で、やりがいを強く感じる瞬間もあります。最初は日本語でのあいさつすら言えなかった学生が、「先生のおかげで進学できました」「こんなに日本語が上手になりました」と笑顔で伝えてくれる。その瞬間、「この仕事をしていてよかった」と心から思います。

    この先生に教わりたい!と言われる存在をめざして

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    • 学生時代の経験はすべて今の仕事につながっています。ゼミナールで学んだ「否定しない姿勢」、学園祭で培った企画力やリーダー経験、寮で身につけた異文化を受け入れる柔軟さ――どれも教育の現場で役立っています。

      私が目指すのは「選ばれる先生」です。高校時代にアメリカで見た「生徒が先生を選ぶ仕組み」は、今でも鮮明に心に残っています。その時から、自分も「この先生に教わりたい」と思ってもらえる存在になりたいと強く意識するようになりました。

    そして次の挑戦として描いているのが、日本で暮らす外国人の子どもたちへの日本語教育です。小中学校に通いながらも日本語がわからず授業についていけない子どもたちは少なくありません。私の理想は、ピアノや英会話のように「日本語教室」が地域に根付いていくこと。外国人が多く暮らす地域には日本語を必要とする子どもがたくさんいますが、彼らに合ったカリキュラムはまだ十分に整っていません。だからこそ、一人ひとりに合わせた教育を展開できる場をつくりたいと考え、学びを続けています。

    挑戦は必ず未来の力になる

    • 大学進学を目指している皆さんに伝えたいのは、大学生活は自分のやりたいことを見つけて挑戦できる時間だということです。麗澤大学にはその挑戦を応援してくれる環境があります。自分から声をあげれば先生が人を紹介してくれたり、仲間が集まったりして形になっていきます。

      日本語教師という仕事も、国家資格化によって新卒から挑戦しやすくなりました。麗澤大学も登録日本語教員養成機関として認定されており、在学中から日本語教師を目指せる制度が整っています。私の時代にはなかった制度ですが、今はより多くの学生がチャンスを得られるようになりました。

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    私自身、大学での経験すべてが今の自分を支えています。皆さんにもぜひ、自分の「好き」や「興味」を大切にしながら大学を選び、積極的に挑戦してほしいと思います。必ず将来の自分を支える力になります。

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