編集部
2022.10.06|最終更新日:2023.10.04|

ファミリービジネス(家族経営・同族経営)を学ぶ!メリット・デメリットや成功のコツを知り起業家精神をもった後継者になろう

ファミリービジネス(家族経営・同族経営)を学ぶ!メリット・デメリットや成功のコツを知り起業家精神をもった後継者になろう

【麗澤大学経済学部経営学科 近藤明人教授監修】創業者一族が企業を経営したり株式を保有したりしているファミリービジネス(家族経営・同族経営)。現在、日本の老舗企業の約97%がこのファミリービジネスと言われています。今回は、ファミリービジネスのメリット・デメリット、これからの課題や成功するためにやるべきことを、ファミリービジネスに詳しい麗澤大学経済学部の近藤教授に解説していただきます。

目次

    ファミリービジネス(家族経営・同族経営)と聞くと、皆さんはどんなイメージがありますか?
    クローズドな経営により起きてしまった不祥事や問題、一族が持つ強い影響力によって同じ働きをしても一族の社員が昇進しやすく従業員からの不満が上がるなど日本ではネガティブなイメージを持つ人が多いのが現状です。

    果たしてファミリービジネスとはそういうネガティブな企業ばかりなのでしょうか?

    家族経営は欧米ではファミリービジネスと呼ばれており、実は日本では上場企業の53%、全企業の約97%がファミリービジネスで構成されています。
    経営者の意思や理念で会社を統一できるファミリービジネスは、長期的かつ永続的な長寿企業につながるビジネスモデルとして世界中から注目を集め、研究されています。

    今回は、ご実家の家業を継ぎたい、将来起業するためにファミリービジネスの強みを学びたいという人のために、麗澤大学経済学部の近藤明人教授がファミリービジネスのメリット・デメリットやファミリービジネスの問題や課題、成功に導くコツを分かりやすく解説します。

    【麗澤大学 近藤明人 教授のプロフィール】
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    大学卒業後に実家のファミリービジネスで経営に携わるとともにISOマネジメントシステムの審査員や経営コンサルティングを行っていました。2016年から麗澤大学で実務の経験を活かして教育と研究に取り組んでいます。

    職名:教授
    学部/学科:経済学部/経営学科
    専門分野:経営管理論・ファミリービジネス論・環境経営論・行政経営論
    現在の研究テーマ:経営目的達成のための経営管理システムに関する研究、SDGs経営(ESGマネジメント)及び情報開示、ファミリービジネスの事業継続・戦略マネジメント、事業承継プロセスの阻害要因の分析、地域環境マネジメントシステム、環境経営におけるサプライチェーンマネジメント
    主な著書:1.『環境経営入門(第2版)』共著 日科技連出版社(2013.05)、『事例に学ぶ 自治体環境行政の最前線ー持続可能な地域社会の実現をめざしてー』共著 ぎょうせい(2008.03)

    麗澤大学公式サイト:近藤 明人 教授

    ファミリービジネス(家族経営・同族経営)とは?世界中から注目されているワケ

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    ファミリービジネスとは特定の一族が経営を行うことで、「家族経営」「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」などと呼ばれることもあります。
    法律では、「上位3株主の持ち株率の合計が50%を超える会社のこと」と定義されています。

    つまり、会社が主に特定の家族や親族(※)で構成されていたりして大きな影響力を持ちながら会社を経営している企業のことを指します。
    (※親族以外の場合もあります)

    ファミリービジネスは世界どこでも溢れいていますし、日本の中小企業の大半がこのファミリービジネスの形態です。

    アメリカのウォルマート、イタリアのグッチ、韓国のサムスン、日本ではトヨタ、サントリー、星野リゾート、ユニクロで有名なファーストリテイリングなどがファミリービジネスの企業の例として挙げられます。
    こうした皆さんが知っている大企業やブランドもファミリービジネスであり、日々至る所で目にしているんです。

    特に日本のファミリービジネスは、100年以上続く老舗企業の数や割合が世界的に見てトップであることなどから、世界中でその経営手法に注目が集まっています。


    そのため経営学においてもファミリービジネスは重要視されているんです。

    ファミリービジネス(家族経営・同族経営)のメリット

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    ファミリービジネスが世界から注目される最大の特徴は「長寿性」ですが、その特徴を支えるファミリービジネスならではのメリットがたくさんあります。
    これからファミリービジネスのメリットについていくつか紹介していきます。

    情熱的でモチベーションが上がりやすい

    ファミリービジネスでは、経営者の仕事に対するモチベーションが高い傾向があります。

    これまで家族で受け継がれてきた会社を守り、さらに繁栄させ、将来の世代へ存続させたいという情熱的な意識が高いからです。
    社員も家族や親戚などの身内が多く、一致団結して事業に取り組むので仕事に対して全体的にモチベーションが上がりやすい環境があるといえるでしょう。

    所有と経営が一致している

    会社の株を所有している株主と事業を行う経営陣が同じであるため、株主の要求や意見に左右されて短期的な目標達成を目指すのではなく、最終的に大きな利益を出すための最善の経営決定を行うことができます。
    そのため、大胆な経営改革を行いやすくなったり、現場の声を反映した決定を行うことができたりします。

    株主と経営陣が一致していることは、経営者自身が自分の資産を守ることにつながるため、その決定に責任をもち、事業の成果をあげる可能性が高まります。

    一貫した戦略、長期経営が可能

    ファミリービジネスでは企業の存続が1つの大きな目標となり、経営者の任期も長いことから経営理念、経営戦略の一貫性を持ちやすいです。

    自分の子の代、孫の代というように世代を超えて経営を行うことが前提にあるため、目先の利益に惑わされることなく、10年、20年先の将来を見据えた長期的な視点に立って経営計画を立てることができます。

    また、取引先とも長くお付き合いをしているので築いてきた信頼関係をもとに安定した取引をすることができます。

    意思決定がしやすく、経営がスピーディーに行える

    経営について家族や親族同士で話し合いをするため、反対意見や提案、率直な意見交換をして意思決定がスムーズに行われます。

    人事においても、世襲的に一族の間で交代が行われることがほとんどなので時間がかかりません。スピーディーに経営が行われることは、時代の変化に対応しながらチャンスを掴むための大切なポイントだと言えます。

    ファミリーの個性が企業の特徴となり、競争優位につながる

    成功しているファミリービジネスの企業では、そのファミリーの個性がとても大切になってきます。

    これまでのメリットの中でも説明したように、何世代にも渡って会社を存続させ伝統を守りたいという強い思いがあるため、一貫した理念と経営方針で、取引先や顧客に信頼されるこだわりや絶対的なブランド力を持っています。
    そのため、実際にそれぞれの業界で個性の強いファミリービジネスの企業が競争優位に立っているのです。

    人を大切にする経営を実践して、強い組織(組織文化)に

    会社と家族がつながっているため、お互いの信頼関係が強い組織といえます。
    また一族ではない一般社員も家族のように大切に考えるアットホームな社風の会社が多く、そのような会社では働きやすい環境が整っており、それに応えるように従業員全員が会社に貢献し、良い成果をあげようとします。

    また、ファミリービジネスでは後継者が幼いうちから決まっていて、経営者としての人材育成教育を早い段階から行うことができ、より強い組織を作り上げることができます。

    ファミリービジネス(家族経営・同族経営)のデメリット

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    ニュースでも取り上げられるように不祥事や、経営の不透明さからファミリービジネスに対してマイナスイメージをもつ人も少なくないでしょう。

    ここからはファミリービジネスのデメリットを紹介していきます。

    保守的になりやすく、イノベーションを起こしにくい

    一族の経営理念にこだわったり、長期間経営陣が交代しなかったりすると外部からの指摘がないまま、これまでの方針を変えようとしない保守的な経営をしてしまう可能性があります。

    こうした状況では、経営のイノベーションを起こしにくく、時代の変化に対応できなくなってしまいます。

    公私混同が起きやすい、会社を私物化してしまいやすい

    会社の所有と経営が一致しているファミリービジネスの企業では、第三者の監視が行き届かず、公私混同が起きやすくなってしまいます。

    社長のミスが正されなかったり、プライベートな食事や私用の車を会社の経費で購入したりするなどの問題があります。
    また、経営陣である一族の意向がそのまま反映されるので、会社を私物化してワンマン経営になり、社内の風通しを悪くしてしまうこともあります。

    後継者、相続問題

    親族の中で後継ぎがなかなか見つからなかったり、複数いる場合は争いが起きたり、ただ血縁があるからと言ってトップに相応しくない人物を指名してしまう可能性があります。

    世代交代に時間がかかると経営が不安定な状況になってしてしまい、業績の悪化など会社に損害を与えてしまいます。
    また、相続問題も長引けば会社の評判を落とし、大きな損害になります。

    閉鎖的でお家騒動に弱い

    ファミリービジネスを行う企業では、外部からの監査や指摘を受けることがほとんどないため閉鎖的です。
    また、何でも率直に意見しやすい親族間だからこそ、意見の対立が起きた場合は問題が根深く残ってしまう可能性があります。
    そのような場合、派閥争いなど一般社員も巻き込む形で経営がやりづらくなってしまいます。

    一族社員と、一般社員の待遇の差による不満

    一族で構成されるファミリービジネスの企業では、血縁関係にある身内とそうでない一般社員との間で待遇に差が出ることがあり、それにより一般社員のモチベーションが下がってしまうということがあります。

    同じ仕事をしていても報酬が違ったり、反対意見を言えないなど理不尽なことが起きれば経営者に対しての不満となり、信頼を失ってしまいます。

    日本のファミリービジネス(家族経営・同族経営)が抱える問題や課題

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    ファミリービジネス の場合、こういったメリットとデメリットは、メリットがうまく機能していない場合にデメリットが生じているような表裏一体の関係が多いです。

    ファミリービジネスの代表的な問題や課題として、後継者問題、不透明な経営や家族関係の悪さなどが挙げられますが、これらは経営陣のビジネスセンスや一族の意識の高さによって改善できることでもあると言えます。

    また公私混同が起きやすい家族経営の企業では、不祥事を防ぐための仕組み、「コーポレートガバナンス」の弱化も問題ですが、社外取締役や社外監査役など、家族以外の管理者を配置させ、経営を監視することで不祥事を未然に防ぐことも可能になってきます。

    デメリットをしっかりと理解し、問題解決や環境改善に繋げていくことが大切です。

    ファミリービジネス(家族経営・同族経営)を成功させるためのコツ

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    ①開かれた環境づくり(ガバナンスの強化)

    会社が私物化しやすく、公私混同しやすいファミリービジネスでは、会社のガバナンス(統治体制)を整え、開かれた環境づくりを行うことが大切です。
    例えば、外部の専門家を招いて公平で不正のない経営ができているかチェックしてもらうなどして、一族だけでなく会社が関わる全ての人が働きやすいクリーンな職場環境、経営を目指しましょう。

    ②親族間の信頼関係の構築

    家族でもその関係性に甘えることなく真剣な話し合いや後継者候補の人材教育を長期間に渡って行うことで後継者問題の緩和につながります。
    また、役割分担を行い責任の所在を明確にしておくことで対立を最小限に防ぐことができます。
    先代も後継者も「リスペクト」の心を忘れないことが大切です。

    ③最新のテクノロジーの活用

    長期間にわたって同じ経営者がトップに立つファミリービジネスでは、経営変革が起こりづらいです。
    しかし、急激に変化し続ける現代に合わせて、時には思い切った施策も必要となります。

    DX(デジタルトランスフォーメーション)を行い業務内容の改善や経営変革などを行ったり、時には外部に管理を発注したり、アプリや機械化など最新のテクノロジーを積極的に導入していくことで仕事を効率化させ、時代にあった経営を行うことが必要です。

    日本初!麗澤大学の経営学部ファミリービジネス専攻

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    麗澤大学では、2024年4月に日本初の経営学部ファミリービジネス専攻※を設置構想中です。

    「ファミリービジネスの永続のためにファミリービジネスを担う人材が、ファミリービジネスの諸問題を捉えて、その解決策や予防策などを考え実行する力を養うこと」と教育目標に掲げ、家業を継ぎたい人や起業したい人におすすめの専攻です。

    仕事の課題をデザインし、新しい価値を作っていくことができ、創造性を持つクリエイティブ力を磨き、経営戦略を作り実行管理できる人の育成を目指します。

    ■2年次

    ・経営者・人づくり論
    ・ファミリービジネス論
    ・ファミリービジネスワークショップ
    ・戦略デザイン
    ・経営学の基礎専門科目

    ■3~4年次
    ・道徳経営論
    ・事業承継論
    ・ファミリーガバナンス
    ・ファミリービジネス・マネジメント
    ・ファミリービジネス・イノベーション
    ・ファミリー・エコノミクス
    ・ビジネス税務実習
    ・ファミリービジネス実務演習
    ・戦略マネジメント
    ・経営学の上級専門科目
    ・ゼミナール

    【麗澤大学経営学部ファミリービジネス専攻の特色的なカリキュラム】

    ・経営者論、人づくり論などがある!
    ・日本で初のファミリービジネス専攻(学び)である!
    ・ビジネスモデルを作る授業はファミリービジネスだけでなく、業態分析、新しいビジネスモデルを考えるような形に!

    ※設置構想中のため、学部・学科・専攻名は仮称です。

    ファミリービジネス専攻の教育は「人づくり」

    【近藤教授より高校生の皆さんへメッセージ】
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    昨今、日本では黒字経営にも拘わらずに廃業するファミリービジネスが増えています。
    それは、VUCA(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)の時代のなかで、事業継続が困難であったり、企業の成長戦略が描けない現実があったりするからです。
    しかし、日本は世界で長寿企業が最も多い国であり、ファミリービジネスの永続を目指す考え方や方法論が蓄積されています。

    そこで、麗澤大学経営学部のファミリービジネス専攻では、若い後継者の皆さんが実学の観点から経営学を学ぶことは、もとよりファミリービジネスの諸理論や実践の方法を学び、事業承継だけでなく永続が目指せる力が身につくこと。
    そして、麗澤大学ならではの学びの機会を提供し、ファミリービジネスの後継者の皆さんが自信をもって活躍できるような人材に育てます。

    まとめ:ファミリービジネスを承継し事業を支える人材になろう

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    日本企業の約97%がファミリービジネス。
    つまり、ファミリービジネスを理解することは日本の企業を理解することにつながります。

    経営陣のビジネスセンスや意識の高さによって問題を劇的に改善することができるのです。

    これからの時代にあった経営方法を学び、魅力的なファミリービジネスに成長させて永続を
    目指す人材になりましょう!

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